2011年2月28日月曜日

乳がん手術

早期の乳がん患者の外科手術で、転移を防ぐために脇の下のリンパ節全体を切除する「郭清」をしても、リンパ節の一部しか切除しなかった場合と生存率に変わりはないとする米国の多施設臨床試験の結果が発表された。
「郭清」はがんの再発を防ぐために広く行われているが、むくみが出るリンパ浮腫などの合併症が起きやすいとされる。研究グループは「(郭清をやめる)新手法を取り入れることによって、術後の生活を改善できる」と指摘している。
研究には、100カ所以上の医療機関が参加。1999~2004年に、手術前に脇の下の「センチネルリンパ節」を検査して転移が見つかった早期がんの患者を対象に、リンパ節全体の郭清をした場合と、転移が見つかった一部だけを取り除いた場合の生存率を比較した。
転移を防ぐための抗がん剤や放射線治療なども続けた結果、5年後の生存率は全切除した445人は91・8%、一部切除の446人は92・5%と、ほぼ同じだった。
一方、リンパ浮腫などの合併症は全切除では70%で起きたが、一部切除では25%で、大きな差が出た。
乳がん細胞は早い段階で全身に広がることが分かっており、研究グループはリンパ節切除よりも、抗がん剤や放射線による全身的な治療が再発を防いでいるのではないかとみている。

2011年2月27日日曜日

糖尿病入院

米ミシガン大学の調査によると、若年成人、特に若年女性で糖尿病による入院患者数が急増しているようだ。
米国では推定2,400万人が糖尿病に罹患している。完治は望めないが、糖尿病患者は投薬、健康的な食事と身体活動によって疾患を管理することができる。
調査では今回、糖尿病による入院の過去14年の傾向を把握するため、1993~2006年の全米入院患者データベースを使用、そのうち糖尿病と診断された退院患者データを検討した。
その結果、全年齢層で糖尿病による入院は65%増加。さらに、30歳代の若年成人の入院数は1993~2006年に2倍超となった。
研究によると、この入院の傾向は過去30年間の米国全土における肥満率の急増を反映しているようだ。
また今回の研究では、20歳代と30歳代のデータについて調べた結果、妊娠による入院を除外した後でも、男性と比べ女性では糖尿病による入院リスクが1.3倍高いことが分かった。この原因として(1)若年者では、男性よりも女性で肥満率が高い(2)男性よりも女性の方が糖尿病の症状が重い傾向にある—点を挙げ、このような状況は、若年女性で糖尿病の予防治療を受ける機会が少ないことの表れだとしている。
過去の研究では、糖尿病女性は予防的ケアの利用が少なく、積極的な内科的治療をあまり受けていないため、入院後の心血管障害による転帰が悪化することがわかっている。
今後、糖尿病患者の増加を防ぐためには、若年成人、その中でも特に女性をターゲットにした糖尿病予防策が必要である。また、糖尿病に罹患した若年成人の健康全般を改善するための医療介入が求められる。

2011年2月26日土曜日

受動喫煙

受動喫煙は世界各国で問題となっているが、世界レベルでどの程度の健康被害をもたらしているかについては明確にされていない。世界保健機関(WHO)「タバコのない世界構想」が、2004年時の192カ国のデータを解析したところ、受動喫煙が原因で年間に推定60万人超が死亡していたことが分かった。これは、世界中の全死亡の約1%に相当するという。
今回の研究は、全世界で受動喫煙がもたらす疾病負担を評価した初めてのもの。2004年の各国の疫学データやWHOのデータを用いて受動喫煙による死亡数と障害調整生存年数を算出し、受動喫煙による疾病負担を評価した。
その結果、全世界で小児の40%、非喫煙女性の35%、非喫煙男性の33%が受動喫煙にさらされていることが分かった。また、2004年の受動喫煙に関連した全死亡数は60万3,000人と推定された。これは、全世界の死亡数の約1%に相当する。これらの死亡の47%が女性、28%が小児、26%が男性で発生していた。
同年の受動喫煙に関連した死亡で多かったのは、成人における虚血性心疾患(IHD)による死亡で、37万9,000件であった。次いで、5歳未満の乳幼児における下気道感染症による死亡16万5,000件、成人および小児における喘息による死亡3万6,900件、成人における肺がんによる死亡2万1,400件が続いた。
受動喫煙によるDALY損失は1,090万年で、同年の全世界における疾患負担の約0.7%に相当した。また、全DALY損失の61%を小児が占めていた。
受動喫煙がもたらした疾患負担で最大であったのは、5歳未満の小児における下気道感染症による負担で、次いで成人のIHD、成人と小児の喘息と続いた。
受動喫煙による小児の死亡数は特に低・中所得国で多かったが、成人の死亡数についてはすべての所得国で同等であった。
受動喫煙に起因した小児の死亡の3分の2は、アフリカや東南アジア諸国で発生している。小児の受動喫煙のほとんどは家庭内での曝露である。これらの国や地域では、感染症とたばこが小児の死亡の複合的な原因となっていると考えられる。
世界全体で見ても、受動喫煙にさらされている割合が最も高いのは小児である。小児の場合、主要な曝露源である家庭内の喫煙者から逃れるすべがない。家庭内で受動喫煙にさらされている小児は、ほとんどの国や地域で見られたが、特にアジアや中東諸国で多かった。小児は受動喫煙の害に関する強いエビデンスが得られている人口集団である。したがって、これらの事実は公衆衛生上の提言の根幹となるべきものであり、政策立案者が勘案すべき事項であるといえる。
また、受動喫煙に関連する全死亡数の約3分の2,DALY損失の約4分の1を成人非喫煙者におけるIHDによる死亡が占めていたが、職場での喫煙を禁止する禁煙法の施行により急性冠動脈イベントの数は急減している。完全禁煙法が施行されれば、施行後1年以内に受動喫煙による死亡が大幅に減少し、それに伴って社会・医療システムにおける疾病負担も減少すると見込まれる。
一方、受動喫煙による死亡数を男女別に見ると、男性に比べて女性で多かった。この原因について、(1)非喫煙者数が男性に比べて女性で多い(2)アフリカ、南北アメリカの一部地域、東地中海沿岸諸国、東南アジアでは、女性の受動喫煙リスクが男性に比べて50%以上高いことが挙げられる。
2004年の能動喫煙による死亡数は全世界で510万人と推定されており、今回明らかになった受動喫煙による死亡数を合計すると570万人超に上る。今回の研究では、喫煙者は受動喫煙によるさらなる影響は受けないとの想定の下で解析が行われた。しかし、受動喫煙の影響が喫煙者と非喫煙者で同等であるとすれば、受動喫煙による死亡数は30%多く推定される。
完全禁煙法が施行されている国の住民は世界人口の7.4%にすぎず、完全禁煙法が確実に施行されている国は数カ国にとどまる。しかし、完全禁煙法の施行により受動喫煙リスクは飲食店などで90%、一般の場所では60%低下することが、これまでの研究で示されている。また、完全禁煙法の施行は非喫煙者を受動喫煙から守るだけでなく、喫煙者の禁煙成功率も高めるようだ。
受動喫煙を削減するために、政策立案者は以下の2領域で行動を起こすべきである。まず、多くの地域で女性や小児を受動喫煙から守るには、家庭での受動喫煙曝露を減らすための補足的な教育戦略が必要になる。自発的な家庭内禁煙を促す政策は、小児や成人非喫煙者の受動喫煙の機会、さらに成人の喫煙を減らし、若年者の喫煙を減らす上でも有効と考えられる。また、低所得国では受動喫煙が多くの5歳未満児の死亡原因となっている。発展途上国では、たばこ関連疾患対策よりも感染症対策が先決であるという誤解を早急に正す必要がある。
禁煙法の施行に伴う社会的規範の変化は家庭内にも波及すると考えられるが、家庭内における受動喫煙を減らすには、その家庭独自の方法で減らせるように動機付けるイニシアチブが必要だ。たばこの煙のない家庭が普通になりつつあるとはいえ、世界的にはまだ多い。世界中の喫煙者12億人が、何十億人もの非喫煙者を疾患の原因となる大気汚染物質にさらしている。完全に取り除ける大気汚染物質源は少ないが、屋内の喫煙をなくすことは可能である。そのことにより多大な便益が得られる。

2011年2月25日金曜日

がん死亡率減少(EU)

欧州連合(EU)加盟27カ国で今年中にがんで死亡するとみられる人数は10万人当たりの死者数でみると、男性が2007年の153・8人から142・8人、女性が90・7人から85・3人へそれぞれ減少する見通し。
調査によると、死亡率の低下は女性の場合は主として乳がん、男性は肺がんおよび結腸がんによる死亡率の減少が主因だという。ただ全体の死者数は、人口増加や高齢化の影響で2007年の125万6001人から2011年は128万1460人へ微増が予想されている。
調査はイタリアのミラノ大学研究グループが中心となって数学モデルを使って予測、来年も調査する予定。
報告によると、西欧における死亡率は中欧および東欧に比べて相対的に低く、調査グループは、この傾向は予測可能な将来も続く見通しだと述べた。がんの種類による死亡率をみると、肺がんの10万人当たり死亡率は2007年12・55人から2011年には13・12人に上昇する見通しで、特にポーランドと英国では女性のがん死亡原因の首位は乳がんから肺がんに代わった。

2011年2月24日木曜日

妊婦の体重増加と肥満児

ボストン小児病院(ボストン)とコロンビア大学(ニューヨーク)の研究で、妊娠中の母親の体重増加と生まれてくる児の出生時体重は相関し、大幅な体重増加が認められた妊婦では、4,000gを超える児を出産する確率が高いということがわかった。これまでの研究から出生時体重が成人後の体重に影響を及ぼすことがわかっているため、妊婦に対して肥満予防策を講じることは出生児にも有益となると考えられる。
これまでの研究から、妊娠中に体重が増加し過ぎた母親から生まれてくる児の出生時体重が増加し、その子が将来、肥満になるリスクも高まることがわかっている。しかし、遺伝などの共通因子もこれらに関与している可能性は否定できなかった。今回の研究では、遺伝的要因を除外するため、同一の母親による複数回の単胎妊娠が検討された。
研究では、米国の州別出生登録データから、1989年1月1日~12月31日におけるミシガン州とニュージャージー州の出生記録が用いられた。データを抽出するに当たって(1)妊娠週齢が37週以前あるいは41週以降(2)母親が糖尿病を有する(3)出生時体重が500g未満か7,000gを超える(4)妊娠中の体重増加に関するデータが残っていない―場合は除外した。最終的に分析対象となったのは,母親51万3,501人と出生児116万4,750人であった。
分析の結果、妊娠中の体重増加と出生時体重には一貫した相関性が見られ、母体の体重が1kg増えるごとに子供の出生時体重は7.35g増えた。
また、妊娠中に体重が8~10kg増えた母親から生まれた児と比べ、24kg超増えた母親から生まれた児は約150g重かった。さらに、24kg超増加した母親では4,000g以上の児を出産する確率が2倍超高かった。
このような関連の機序について、妊娠中に体重が増加することによって、インスリン抵抗性や胎盤への栄養伝達をつかさどるホルモンなどによる影響が考えられた。
出生時体重は将来のBMIリスクの予測因子でもあることから、妊娠中の過剰な体重増加は、長期的に児の肥満関連疾患発症リスクを高める可能性がある。出生時体重が高過ぎると将来、喘息、アトピー性疾患、がんなどの疾患を発症するリスクも高まる。
妊娠中の体重増加が胎児の成長や出生児の代謝系に及ぼす影響について理解を深めることは重要なようだ。一方で、生殖年齢に当たる女性が、妊娠中だけでなく妊娠前においても適正体重を維持するには、どのような支援策が有効かを緊急に検討しなければならないだろう。現在、妊娠前の女性に対する健康対策が注目されていることから、女性が適正体重で妊娠することに焦点を合わせた介入法を考える上では絶好の機会といえる。さらに、生涯にわたる体重軌跡を是正し、世代にまたがる過体重の悪循環を断ち切るためには、より効果的な集団ベースの戦略が必要であろう。

2011年2月23日水曜日

画面前着座時間と心血管イベント

テレビ視聴など画面の前に座っている時間が長い程、心血管イベントおよび死亡リスクが増加することが、英国のグループの研究でわかった。
同グループは、2003年のスコットランド健康調査の参加者4,512例を2007年まで追跡。心血管イベントおよび死亡と1日の画面前に座っている時間(2時間未満、2〜4時間未満、4時間以上)との関係を調べた。
1万9,364人年の追跡で215例が心血管イベントを発症、325例がなんらかの原因で死亡した。年齢、性、肥満、喫煙、長期罹患疾患、糖尿病、高血圧などを調整した結果、画面前に座っている時間が2時間未満の群と比べ、4時間以上の群の心血管イベントおよび全死亡ハザード比(HR)はそれぞれ2.30、1.52と高かった。
画面前に座っている時間と心血管イベントの関係のおよそ25%はBMIやC反応性蛋白、HDLコレステロールと関係していた。

2011年2月22日火曜日

腸内細菌と脳の発達

腸内細菌がマウスの行動に影響を与えることをスウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究チームが発見した。
腸内細菌が肥満や免疫に関わっていることは知られていたが、脳の発達や行動にまで影響をおよぼすことが示されたのは初めて。
研究チームは、通常の腸内細菌を持つマウスと、無菌で育てたマウスの行動を比較した。箱の中で陰の区画に隠れ、警戒している時間が多い普通のマウスに比べ、無菌マウスは明るく広い場所をうろつくなど行動が大胆だった。
脳の変化を調べたところ、無菌マウスでは、不安や感情に関わる脳内物質の量が少なかった。研究チームは、進化の過程で、腸内細菌の作用が、新生児の脳の発達過程に組み込まれたのではないかと考えているようだ。