2011年1月31日月曜日

都市構造とBMI

ニューヨーク大学バッファロー校都市・地域計画学の研究で、自宅がコンビニエンスストアよりもスーパーマーケットに近い女性ではBMIが低く、家から徒歩5分圏内にレストランが多い女性ほどBMIが高くなることがわかった。
2006年の米国の報告によると、成人の3分の1超が肥満で、その割合は男性より女性でわずかに高かった。
肥満はさまざまな疾患につながることから、公衆衛生上大きな問題となっている。また、肥満に影響する環境因子への注目は高まりつつある。
そこで今回、食品環境や都市構造が女性のBMIに影響を及ぼすか否かを調べるため、特定の地区に居住している女性(172例)を対象に研究が行われた。
 その結果、以下の3つのことがわかった。
 (1)自宅から徒歩5分圏内にレストランが多いほどBMIが高い
 (2)コンビニエンスストアと比較して、自宅の近くにスーパーマーケットや食料品店がある女性では、BMIは平均的に低い
 (3)居住地域での食品環境と都市構造の相互作用が肥満を招いている。例えば、住宅、商業施設、産業施設、オフィスなど多様な形態の建物を同一地域に配置することは身体活動を促すとされているが、その地域にレストランが多い場合は逆にBMIの増加につながる。つまり、本来なら歩くのに適しているはずの地域に住んでいる女性でBMIが高いという矛盾した結果が示された
研究の結果から、今後、都市構造と健康に関して研究を行う際には、食品環境が女性の健康に及ぼす影響を加味しなければならない。また、戦略計画によって、食品環境がどのように改善されるかがわかった。
さらにこの研究で、都市構造を見直し、地域の食品環境を整えることで健康的な食習慣を促す計画・戦略も見いだすことができた。

2011年1月26日水曜日

チョコ募金

バレンタインデーに贈るチョコレートの収益で、がんや白血病に苦しむイラクの子どもたちを支援する「チョコ募金」に、「日本イラク医療支援ネットワーク」が取り組んでいるという。
同ネットは、イラク戦争などの影響で保健行政が停滞し、適切な医療を受けられないイラクの子どもたちを支援するために2004年に発足。気軽に支援の輪に加わってもらえる方法はないかと考え、05年末からバレンタインに贈られる義理チョコを利用した募金を始めた。
インターネットと電話による募金は1口2000円。「六花亭製菓」(北海道帯広市)のチョコ10枚入りの缶4個と、イラクの子どもが絵を描いたカードが送られる。昨年は約3800万円分の薬や医療機器をイラクに贈ったそうだ。

2011年1月24日月曜日

飲酒後仮眠

飲酒後に睡眠を取ると、アルコールの吸収や分解が大幅に遅れることが、国立病院機構久里浜アルコール症センターと札幌医科大の共同研究でわかった。
飲酒後に仮眠して車を運転することの危険性を裏付けるものとして注目される。
同大で昨年3月、20歳代の男女計24人を対象に実験を実施。体重1キロ当たり0・75グラムのアルコール(体重60キロで45グラム=ビール約1リットルに相当)を摂取し、直後に4時間眠った場合と4時間眠らずにいた場合の呼気中のアルコール濃度を比べたところ、眠った場合は眠らない場合の約2倍だった。睡眠により、アルコールを吸収する腸の働きと分解する肝臓の活動が弱まった可能性が高いと分析されている。
また、海外の研究を調べたところ、アルコール分解後、少なくとも3時間は運転技能が低下することもわかった。飲酒後に「仮眠を取ったから大丈夫」と考えるのは危険なようだ。

2011年1月23日日曜日

アルコールの課税効果

たばこ規制においては、価格コントロールが健康被害の軽減に有効であることが示されているが、同じく嗜好品であるアルコール規制の有効性については研究途上にあるようだ。フロリダ大学医療評価・政策学の研究によると、アルコールへの課税率を2倍にすると死亡率が35%減少するそうだ。
2010年5月に採択された世界保健機関(WHO)のアルコール規制に関する指針では、アルコール乱用による健康被害や社会的悪影響を予防する政策介入の1つとして、アルコール課税システムの適正化が盛り込まれた。研究では、アルコールの価格や課税と疾病率および死亡率の関係をシステマチックレビューやメタアナリシスで検討した。
解析の結果、アルコールへの課税や価格規制を強化することにより、健康被害や社会的悪影響が低減される可能性が示された。
暴力、交通事故、性感染症、薬物使用、犯罪などの不正行為についてもアルコールへの課税や価格規制と負の相関関係にあり、統計学的有意差が示された。また、有意差は示されなかったが、自殺についても負の相関傾向が示された。
さらに、アルコールに対する課税率を2倍にすると、アルコールに関連する死亡率が35%低下し、交通事故死は11%、性感染症は6%、暴力は2%、犯罪についても1.4%低下することが示唆された。以上の研究結果より、アルコール価格に影響を与える政策介入は、アルコールに関連する死亡率に重大な影響を及ぼすことがわかった。

2011年1月22日土曜日

乳房再生

乳がんで乳房を切除した患者のため、九州大や大阪大などは今春に複数の国立大や医療機関などによる研究組織を設立し、来年3月までに本人の幹細胞を使って乳房を再生させる治験に乗り出す方針を決めた。
国の承認を受けるためのデータを集め、健康保険が適用される医療を目指すようだ。
乳房修復は現在、シリコーンや本人の脂肪移植が主流。しかしシリコーンには感染症の危険性、脂肪は体内に吸収され効果が持続しないなどの欠点がある。また健康保険も適用されない。
一方、幹細胞は体を作る大もとの細胞で特定の細胞に変化したり自分をコピーしたりできる。九州大などの再建法は、本人の腹部から200~400ミリ・リットル前後の脂肪を採取。専用の分離器で幹細胞を多く含む細胞群を取り出し、乳房を失った部分の筋肉と皮膚の間に2~3ccずつ30~40回注入、生着すると修復される。拒絶反応が起きにくく、より自然な形になるという。

2011年1月21日金曜日

インフルエンザワクチン

高濃度のインフルエンザワクチンを鼻の内側の粘膜に噴霧すると、従来の注射型ワクチンでは難しかった感染防止効果が出ることが、国立感染症研究所の臨床研究でわかった。
粘膜特有の免疫反応が誘導できたためと見られる。遺伝子が毎年変化するインフルエンザウイルスにも対応し、新たなワクチン開発につながる成果だ。
研究チームは20~60歳代の健康な男性5人の鼻に、季節性のA香港型インフルエンザに対するワクチンを、通常の3倍の濃度で吹き付けた。3週間の間隔をあけて2回接種すると、全員で鼻汁に含まれる、粘膜特有の免疫物質(抗体)が感染予防に十分とされる量まで増えた。
この抗体は、10年前のA香港型など過去のウイルスに対しても、感染予防効果が確認できた。接種による副作用も見られなかったという。

2011年1月19日水曜日

子宮頸がんワクチン

子宮頸がんワクチンの副作用として、気を失う例の多いことが、厚生労働省の調査でわかった。
接種者の大半が思春期の女子で、他のワクチンが皮下注射なのに比べ、このワクチンは筋肉注射。筋肉注射特有の強い痛みにショックを受け、自律神経のバランスが崩れるのが原因とみられる。転倒して負傷した例もあるという。同省は「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」と呼びかけている。
子宮頸がんワクチンは、肩近くの筋肉に注射するため、皮下注射をする他の感染症の予防接種より痛みが強い。昨年12月以降、推計40万人が接種を受けたが、10月末現在の副作用の報告は81人。最も多いのが失神・意識消失の21件で、失神寸前の状態になった例も2件あった。その他は発熱(11件)、注射した部分の痛み(9件)、頭痛(7件)などだった。