2010年8月31日火曜日

うつ病と認知症

高齢者のうつ病が認知症とアルツハイマー病(AD)の発症リスク上昇と関係することを示すデータが、米マサチューセッツ大学などの研究グループにより発表された。
同グループは、うつ病の有無を評価した949例を対象に、うつ病と認知症およびAD発症との関係を検討した。うつ病の有病率は13.2%であった。
17年間の追跡で164例が認知症を発症した(うち136例がAD)。認知症の発症率はうつ病があった群が21.6%、なかった群が16.6%であった。年齢、性、学歴などを補正した結果、うつ病があった群は認知症とADのリスクが50%以上高かった。

2010年8月30日月曜日

腹囲とメタボ(2)

日本のメタボ診断基準が腹囲を必須とするのは、腹部に蓄積する内臓脂肪が心筋梗塞などの循環器疾患を引き起こす主因との考え方に基づいてきたからだ。ところが、日本人の循環器疾患発症の傾向を調べた解析によると、内臓脂肪の蓄積だけではなく、血糖値など一部の血液検査値の悪化や食生活によっても危険性が高まる。このため、腹囲を必須とする現在の特定健診は、やせていて循環器疾患の危険性のある人を見落とす恐れがあると指摘されてきた。
男性は40~50歳代の比較的若い世代で腹部肥満が増えており、現在の健診に意味があるとみられていた。だが、最近の研究成果では、50歳前後の男性も腹部肥満の有無と検査値悪化の明確な関係を見いだせていない。
これらの調査結果は、内臓脂肪の蓄積が循環器疾患の原因の一つにすぎないことを示しており、それ以外の要因についても等しくチェックする健診体制の検討が求められることになりそうだ。

2010年8月29日日曜日

腹囲とメタボ(1)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準となる血圧などの検査値の多くは、日本人男性の場合、腹囲に関係なく体重が増えれば悪化する傾向が強いことが、立川メディカルセンター(新潟県長岡市)の調査で分かった。3月には厚生労働省研究班の大規模調査で、女性の腹囲と循環器疾患発症の関連性が低いとの傾向も明らかになり、腹囲を必須とする現在の特定健診のあり方も問われそうだ。
調査の結果、血圧と血糖値は、腹部肥満の有無に関係なく、体重が増加すれば悪化した。また、HDLコレステロールは、腹部肥満がない群だけが体重増加によって悪化し、いずれも腹部肥満との関係は見いだせなかった。一方、中性脂肪は、腹部肥満がある群で体重増加との関係があった。
世界では、メタボ診断基準作りの中心になってきた国際糖尿病連合などが昨年、腹囲を必須とせず、他の血液検査値などと同列に扱う統一基準を発表した。一方、日本の診断基準は、腹囲が必須条件になっている。

2010年8月28日土曜日

パッチ・ワクチン

微小な針が多数ついたパッチを皮膚にはるだけで接種できるインフルエンザワクチンを、米ジョージア工科大などの研究チームが開発し、動物実験で効果を確認した。針は皮膚に刺さると溶け、ワクチンと共に吸収される。実用化すれば、自分でも接種でき、輸送や保存も簡便になり、接種費用が抑えられる。
開発したパッチは、生体に吸収されやすい物質でできた高さ0.7ミリの針が100本ついている。針の中に、液体ワクチンを凍結乾燥させた粉末が入っている。
人の皮膚に似た豚の皮膚を使った実験で、親指でパッチを皮膚に押しつけただけで表皮に刺さり、数分以内に溶け、ワクチンと針が皮膚に吸収されることを確認した。深く刺さらないため、痛みもないようだ。
通常のワクチンと同等の効果があり、製造費用も同程度だが、接種に医師や看護師が必要なく、注射針の処理もいらず、費用は安くなるようだ。
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2010年8月27日金曜日

野兎(やと)病

夏は野兎(やと)病と呼ばれるネコの細菌性疾患の最盛期であるらしい。この疾患は、感染したネコに噛まれたり、感染したネコの体液に暴露したりすることによって、ヒトにも伝播する可能性があるという。
ネコの野兎病リスクが高いのは夏場だが、春に生じることもある。ネコの野兎病の感染経路として特に多いのは、感染したウサギを食べるか、ウサギを噛んだダニに噛まれることによるもので、徴候としては無気力、食欲不振、発熱などがみられる。
ワクチンはなく、最善の予防法はネコを屋外に出さないことだという。ネコを室内に閉じ込めたくない場合、ダニの管理を行うのが次善の策のようだ。残念ながら、ネコがウサギを狩るのは習性であるため制御することはできず、ネコを屋外に出す場合はそのリスクを負わなければならないと言う。特に屋外で飼われているネコの疾患や死亡がみられた場合、野兎病を疑う必要がある。
稀に芝刈りによってヒトが野兎病に感染することもあるという。芝刈り機が感染したウサギの死骸に接触すると、細菌のエアロゾル化が起こるのではないかという仮説があるらしい。

2010年8月26日木曜日

腸管延長

生まれつき腸の動きを制御する神経節細胞が欠落し、重い便秘症や腸閉塞を起こす難病「ヒルシュスプルング病」で、石川県立中央病院は7月15日、2歳男児のわずかに残る正常な腸管に切り込みを入れて延長して機能を確保する手術に世界で初めて成功したと発表した。
5000人に1人が発症するとされ、この男児はこの病気の中でも重度の小腸と大腸の大半が機能しない「全腸管型」。死に至る危険も大きく、従来は小腸移植しか助かる方法がないとされていた。
男児は生まれた直後から激しい嘔吐を繰り返した。診断の結果、正常に機能するのは小腸の一部分の約20センチのみだった。正常な20センチの腸管に左右交互に切り込みを入れて蛇腹状に伸ばし、切り込んだ部分を縫い合わせて1メートルまで延長し、人工肛門につなげることに成功。男児は感染症にもかからず無事退院。体重も増えているという。
切り込みを入れるには腸管の太さも必要で、全患者に有効かは不明のようだが、自らの臓器を生かす新たな治療の道が開けたようだ。

2010年8月25日水曜日

ネットいじめ

ネットいじめ(サイバーブリー)の加害者および被害者は、ともに身体的にも精神的にも問題を抱える可能性の高いことが、フィンランドの研究で明らかになった。この調査では、ネットいじめの加害経験のあったティーンエイジャーは7%超、被害経験は5%、両方の経験があったのは5.4%で、米ミシガン大学によると、米国でも状況は類似しているという。
ネットいじめは、携帯電話、パソコンなどの電子メディアを通じて、相手に対して攻撃的な行為を意図的に繰り返すもの。
今回の研究では、13~16歳のフィンランドのティーンエイジャー2,215人を対象にデータを収集。ネットいじめの加害および被害経験のほか、全般的な健康状態についてたずねた結果、被害経験のあるティーンは、家庭崩壊、情緒、集中力および行動に問題のある比率が高く、他人との付き合いが困難、頭痛、腹痛、睡眠障害になりやすい、学校で安心感を得られないという傾向があった。
一方、加害者自身にも情緒、集中力および行動の障害、他人との付き合いの困難、多動や素行問題が多くみられ、喫煙や飲酒、頭痛、学校で安心感を得られないという傾向も強かった。加害および被害の両方の経験のあるティーンエイジャーには、上記のあらゆる問題が認められた。
従来のいじめは主に学校で起こるため、少なくとも家にいるときは安心できるが、ネットいじめでは被害者は24時間休みなくリスクにさらされており、不安感がさらに強まる可能性が高いと研究チームは指摘している。
ネットいじめには学校、親および子どものいずれにも原因がある。学校が積極的にいじめ対策を行う必要があるほか、いじめに気付いた第三者が学校に報告することも有効である。ネットいじめの元となるのは主に学校での友人関係であり、ネットではデータが残ることが対策上、1つの利点となる。

2010年8月24日火曜日

改正臓器移植法

生前の本人の意思が不明でも、家族が承諾すれば脳死での臓器提供ができる改正臓器移植法が7月17日より本格施行されている。提供数の増加を目的に提供の要件を緩和し、昨年7月に成立した。現行法では、15歳以上が書面で提供意思を示すのが条件だが、改正法では、そうした場合に加えて、提供や脳死判定を本人が拒否していなければ、家族の承諾で0歳から提供可能。拒否の意思表示は書面でなくても有効だが、提供したくない人は意思表示カードなどで意思を示す必要がある。
脳死判定は、6歳以上はこれまでと同じ基準で2回の検査間隔は6時間以上だが、6歳未満は間隔を24時間以上にする。
15歳以上が書面で意思表示した場合に、親や子ども、配偶者に優先提供を認めた改正部分は1月に施行。5月に初の適用例として、夫から提供された角膜が妻に移植された。
現行の臓器移植法は1997年施行。現在まで脳死での臓器提供は86例。日本臓器移植ネットワークによると、心臓や肺などの移植を希望し登録している患者は、6月末時点で計約1万2千人。

2010年8月23日月曜日

日本脳炎注意報

熊本県は8月18日、県内全域に今年初の日本脳炎注意報を発令した。県が16日に豚20頭に行った日本脳炎ウイルスの抗体検査で、2週間以内に感染したとみられる豚7頭が確認されたためだそうだ。

日本脳炎は、蚊(コガタアカイエカ)が媒介するウイルスで起こる感染症。夏から秋にかけて患者が発生し、発病すると5~15日の潜伏期間を経て40度以上の高熱やけいれん発作、昏睡状態などの症状が1週間ほど続くことがある。熊本県内では2009年、2007年に各1人が感染したという。

熊本県は
〈1〉 蚊の多い場所では長袖や長ズボンを着用し、虫よけ剤を使用する
〈2〉 家の周りの小さな水たまりをなくし、蚊の発生源を減らす
〈3〉 休養や栄養、睡眠を十分に取り、過労を避ける
ことなどを呼びかけている。

2010年8月22日日曜日

睡眠時間とコレステロール

思春期女子の短い睡眠時間が若年成人期の高コレステロール血症の危険因子となる可能性があると、米コロンビア大学などのグループが発表した。同グループは、1994~95年に13~18歳の男女1万4,257例を登録。18~26歳の若年成人となる2001~02年まで追跡し、睡眠時間と高コレステロール血症との関係を調べた。調査の結果、女性では睡眠時間が1時間増すごとに若年成人期に高コレステロール血症と診断される確率が有意に低下した。一方、男性では有意ではないものの、睡眠時間の増加は高コレステロール血症の診断減少と関係していた。

2010年8月21日土曜日

小児肥満(2)

非薬物治療がすべての肥満治療,特に小児肥満治療の基礎であるべきで,常に第一選択治療とされるべきだ。ある論評は,家庭に根差した行動療法プログラムにより,食習慣,身体活動習慣,思考パターンの変更を目的としたライフスタイル介入を行うことで,短期的・長期的に有意かつ臨床的に意義のあるレベルで小児と青年期の肥満を減少させることができると結論付けている。
英国などのガイドラインは,具体的なカロリー摂取量を明示せずに行動療法を強調している。
エネルギー消費による減量の奨励は,食事習慣への介入ほど注目されていなかったが,今回の報告ではテレビ視聴を制限するなど,身体を動かさない習慣を減らすことへの介入が検討され,有望であることがわかった。
食習慣の変更に関する戦略として,ニューヨーク州立大学バッファロー校が開発した食品に関する交通信号システム(摂取を控えるべき有害な食品に赤,適量を摂取すべき食品に黄色,常に摂取すべき食品に緑のマークを表示)などがある。
米国心臓協会が提唱する動機付け面接は,習慣の変更に対する準備ができていないと感じている親にとって有用だ。居住地域で肥満青少年を対象とした夏期合宿を行うことについては,短期の有効性が確認されているが,長期の影響に関してはまだ不明である。

2010年8月20日金曜日

小児肥満(1)

ニューメキシコ大学保健科学センターやブリストル大学、米国立衛生研究所の研究によると、小児肥満の原因の約90%は過食か運動不足か、またはその両者で、残り10%は内分泌疾患や先天性・後天性の視床下部障害、遺伝的症候群、食欲に影響を与える薬物の使用によると推測されている。
小児肥満はほとんどすべての臓器系に有害な影響を与える可能性があり、しばしば高血圧、脂質異常症、インスリン抵抗性や糖尿病、脂肪肝疾患、心理社会的合併症などの重大な結果につながる。ある研究によると、14~19歳の過体重と肥満は、30歳以降のさまざまな全身性疾患による死亡率の上昇と相関していた。また、小児肥満による整形外科分野の重大な合併症に内反脛骨があるが、一方で肥満は骨密度に関しても大きな影響を与えるようである。
肥満予防では、特に小児期からの予防が世界的な肥満の増加を逆転させるのに最も有効だという。予防策は、個人、家庭、施設、地域社会、医療の各レベルで講じることができる。小児では本人よりも保護者を標的とすべきで、(1)世帯や家族レベルで適切な食事量を与える(2)運動を奨励する(3)日常生活動作を高め、身体を動かさない生活を最小限にとどめる―ことを親に指導するのが、基本的な予防法と見られている。

2010年8月19日木曜日

食種とタイミング

アラバマ大学バーミングハム校公衆衛生学部疫学科の新たな研究によると、“王様のような朝食、王子のような昼食、貧民のような夕食を取れ”という昔の格言は、実際のところ、メタボリックシンドロームを予防するうえで最も優れたアドバイスのようだ。研究では、朝目覚めた後に高脂肪食を与えたマウスの代謝が正常であることを明らかにした。反対に、朝に高炭水化物食をより多く摂取したマウスでは、メタボリックシンドロームの指標である体重増加、肥満、耐糖能障害などの異常が生じるという。
今回のマウスの実験では、食物の種類や摂取のタイミングがメタボリックシンドロームの発症に影響しうるか否かが検討された。そしてその結果、目覚め時の脂肪摂取がきわめて効果的に脂肪代謝を刺激し、その日1日の摂取において、さまざまな種類の食物に対する反応スイッチが“オン”になることを見出した。
一方、目覚めたときに炭水化物を与えると、1日中炭水化物代謝のスイッチが入った状態となり、別の食物を摂取させても炭水化物代謝が優位に働くという。
1日の最初の食事が、その日の代謝系を左右するようだ。今回の実験から、炭水化物の豊富な朝食を取ると、その日の炭水化物利用が促進されるが、脂肪の豊富な朝食を取ると、炭水化物から脂肪へとエネルギー利用が移行するような代謝系へと変化することがわかった。
さらに、この研究から得られた重要な知見として、就寝前のマウスに低カロリー食を摂取させたことが、健康増進につながった点を挙げている。逆に、就寝前に高脂肪食を与えたマウスでは、体重増加、肥満、耐糖能異常、高インスリン血症、高トリグリセライド血症、高レプチン血症などを来した。

2010年8月18日水曜日

唾液(だえき)

唾液に含まれる成分を調べ、がんを発見する技術を、慶応義塾大先端生命科学研究所と米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)が共同で開発した。唾液の検査は、X線や血液の検査より患者の負担が小さく、実用化されれば症状が出にくいがんの早期発見につながる可能性がある。
UCLAが、膵臓がん、乳がん、口腔がん患者や健常者ら215人の唾液を集め、慶応大がそれぞれのがんに特徴的な物質を探した。検出された約500種類の糖やアミノ酸などのうち、膵臓がん患者はグルタミン酸の濃度が高いなど、健常者に比べ濃度が高かったり低かったりした54物質を特定した。
これらの物質の特徴を組みあわせた解析で、がん患者を対象に、がんが判別できる精度を調べた。この結果、膵臓がんの99%、乳がんの95%、口腔がんの80%を見分けられた。年齢や性別、人種の差は、あまりなかった。
膵臓がんは、早期段階では特徴的な症状がない上、他の臓器に囲まれているため見つけにくく、進行して見つかる場合が多い。実用化のためには、がんと診断されていない人を対象にした試験や、唾液の状態による影響、早期がんの患者にも有効なのかの確認など、さらにデータの蓄積と検証が必要になるという。

2010年8月16日月曜日

睡眠計

体脂肪計や尿糖計などユニークな商品の開発で知られるタニタが、今度は、人の眠りの状態をはかる「睡眠計」を開発した。「睡眠計」は、布団の下に敷き、組み込んだ圧力センサーで、寝ている間に、脈拍や呼吸の数、体の動きを測定するそうだ。専門機関の検査データをもとに眠りの深さを判定し、時系列データや点数化した総合評価を示す。日々の記録をグラフで表示し、眠りの傾向を把握することもできるという。一般家庭のほか、医療・介護施設、運転手の健康管理に使いたいという運輸業界向けに、販売を見込んでいるそうだ。

2010年8月7日土曜日

スポーツ遺伝子

東京都健康長寿医療センター研究所などのチームが、日本人の元五輪選手約140人と一般の人を比べたところ、スポーツ選手に特徴的な遺伝子型が見つかった。母親から子どもに受け継がれるDNAの個人差が、瞬発力や持久力に関係するらしい。 
運動能力は父親より母親の影響を受けるとの疫学的な研究があるため、チームは、母から子に引き継がれる細胞内のミトコンドリアDNAに注目して、調べた。
本人の了解を得て日本人の陸上長距離、短距離選手やサッカー、バレーボールなど元五輪選手139人と、DNAデータベースに登録された一般の日本人672人の遺伝子型を比べた。
日本人のミトコンドリアDNAの型は個人差によって約10種のグループに分けられるが、この中で、ある特定のグループは、瞬発力の必要な種目の選手の割合が一般の人に比べて、約2.8倍だった。別のグループでも、持久力の必要な種目の選手の割合が、約2.5倍だった。
遺伝子による選手の選抜はすべきでないが、今回の成果は個人のトレーニング方法への応用につながるかもしれない。運動能力は練習や食事など環境に大きく左右されるが、遺伝子との関係も注目されているようだ。

2010年8月6日金曜日

子宮頸がんワクチン

若い女性に急増中の子宮頸がんを大幅に減らすと期待され、昨年末から自費での接種が始まった子宮頸がんワクチンの普及が進まない。半年間に3回接種が必要で費用は5万円前後という負担の重さがネック。厚生労働省は公費助成の検討に着手したが、いつ結論が出るかは見通しにくい。性体験前の若い年齢での接種が最も有効なため、思春期の娘を持つ母親は「すぐ打つか、助成を待つか」で悩んでいる。がんの原因のヒトパピローマウイルスは性交渉で感染する。このウイルスの感染を防ぐワクチンの登場を受けて日本産科婦人科学会などは昨年10月、11~14歳の女子には公費で接種すべきだとの声明を発表した。だが、どこも財政難の行政の動きは鈍い。国の助成の検討には時間がかかる可能性があるし、娘の性体験の時期を親が予測するのも難しい。なるべく早く受ける方がいいだろう。ただ、ワクチンで防げるがんは最大でも70%とされ、検診による早期発見が制圧には不可欠。自治体検診が20歳から受けられ、早く見つければ子宮温存も可能。なのに検診への理解は進んでいない。日本の子宮頸がんの検診受診率は20%台で、欧米の70~80%に大きく劣る。このままではワクチン接種が進んでも、がんを完全にはなくせない。両方を推進する政策が期待される。

2010年8月5日木曜日

子宮頸がん

子宮の入り口付近にできるがん。国内で年に推定約1万5千人が発症し約3500人が死亡する。20~30代の発症率が過去20年で2倍以上に増え、この年代で最多のがんになった。性体験の低年齢化などが理由とみられる。

2010年8月4日水曜日

高コレステロール血症合併糖尿病

糖尿病患者における心疾患発現率は著明に高く、糖尿病患者の死因としても心疾患が多くの割合を占める。糖尿病患者の心疾患発現抑制のためには血糖のコントロールがもちろん重要であるが、しばしば困難なことが多く、血圧、LDLコレステロールのコントロールがとりわけ有用といえる。糖尿病患者の脂質管理目標は、動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは120mg/dL未満を推奨しているが、コントロール不良な症例でも最低限、到達しなければならないLDLコレステロール値はどの程度か。治療薬投与例を対象とした研究では180mg/dL以上の患者群で有意な心疾患発現率を認めた。糖尿病症例では120mg/dL未満を管理目標とし、うまくコントロールできない患者においても少なくとも180mg/dLを超えないように、治療薬を増量する、あるいは他剤を併用することも考慮に入れるべきのようだ。

2010年8月3日火曜日

乳がん検診

20~30歳代の女性を対象とした乳がん検診に対し、専門家らが異議を表明している。乳がん検診は何歳から必要なのだろうか。
乳がんのため24歳の若さでこの世を去った女性のドキュメンタリー「余命1ヶ月の花嫁」。2007年にTBSで放映されるや大反響を呼んだ。08年からは、番組にちなみ、20~30歳代に限定した乳がん検診キャンペーンが展開されているが、これに対し、患者や医療関係者らが、TBS側に内容の見直しを求める要望書を出した。要望書は「20~30代の女性を対象とした検診は科学的根拠がなく、正しい情報を発信する責務があるテレビ局が行うのは問題」などと指摘。
厚生労働省の指針では、乳がん検診の対象は40歳以上。40~50歳代に患者が多いためとしている。
乳がん検診に詳しい国立病院機構名古屋医療センター放射線科は「若い世代に関心を持ってもらうための啓発は重要ですが、すべての若年者に広く検診を勧めるのは間違い」と指摘する。本来必要のない精密検査を受けることになったり、苦痛が伴ったり、といった不利益のほうが大きいためだ。
米国では40歳代を対象に含めるかどうかでも論議が起きている。09年11月、政府の作業部会が「不必要な検査や治療につながる可能性が高い」としてマンモグラフィ検診の対象を50歳以上に引き上げるよう勧告。これに対し、米国対がん協会などは40歳代でも利益の方が上回ると反論している。
TBS広報部は「詳しく説明した上で、自己責任で受けてもらっている。様々なリスクを考慮した上でも、受診機会を提供したことは一定の成果があったのではないかと考えている」などとしている。
ドキュメンタリーが感動的なだけに若い人への影響は大きい。感情に流されることなく、正しい情報を知ることが大切。まずは40歳代の検診率を上げ、早期発見、早期治療につなげることが先決かもしれない。

2010年8月2日月曜日

食事と小児喘息

週に3回以上ハンバーガーを食べる子供は喘息および喘鳴のリスクが高く、果物、野菜および魚の豊富な食事を摂っている子供はリスクが低いことが新しい研究でわかった。研究では、富裕国および貧困国を含めた20カ国の小児5万人のデータを収集。子どもの主な食生活および喘息の有無を親に尋ねるとともに、約3万人の小児のアレルギー検査を実施した。その結果、富裕国、貧困国ともに果物を多く摂取している小児は喘鳴が少なかったほか、富裕国では魚の摂取、貧困国では加熱した青野菜の摂取が喘鳴の予防になるようであった。これは、果物と野菜に豊富な抗酸化ビタミン類および生理活性物質、魚に含まれるオメガ-3脂肪酸によるものと考えられるという。一方、ハンバーガーを多く食べる小児は生涯の喘息、喘鳴の罹病率が高かった。なお、肉類全般による喘鳴リスクの増大は認められなかったという。今回の研究で、喘息の原因の1つが食事に関連している可能性が示唆され、抗酸化物質および不飽和脂肪酸が何らかの役割を演じているということが推測された。オーストラリアの研究グループが、高脂肪食または低脂肪食を摂取した後の喘息患者の検査を実施した結果、高脂肪食により炎症が悪化し、肺機能が低下することが明らかにされた。この研究の結果から、脂肪の摂取を減らすことが喘息管理に有用であることもわかった。

2010年8月1日日曜日

虫刺され(治療と予防)

虫刺されは市販の外用薬で対処することも多い。地域の薬局の強みは、虫刺され被害が多発している場所や虫の種類などの情報が入ること。自覚症状や刺されたと思われる状況などを薬剤師に伝えることで原因を絞り込み、適切な対処につながることもある。市販薬は抗ヒスタミン、かゆみ止め、消炎、殺菌などの成分の組み合わせ、薬の形状(液体、軟こう、クリーム)の違いによってさまざまな種類がある。薬局では薬剤師などが、かゆみなどの症状の強さ、過去に刺されたときに症状の悪化が長く続いた経験があるかなどをたずねた上で、適切な薬を勧める。かゆみなどの症状が強い場合はステロイドの入った薬を勧めることもあるが、市販薬には医療用に比べ穏やかなステロイドが使用されている。市販薬を1、2日使って症状が変わらなかったり悪化した場合は、医療機関の受診を勧められる。予防策としては市販の虫よけ剤が有効。主成分の「ディート」は皮膚に対する安全性は確認されているが、鼻や口からの吸入を避けるため、スプレー型の場合、小さな子どもに対しては大人が手に吹き付けた液体を首などに塗ってあげるとよい。