2010年12月18日土曜日

障害者自立支援

自宅で家族の介護を受けている障害者の9割が親に頼っていることが、障害者団体の調査で明らかになった。介護者の過半数は60歳以上で、障害者を支える側の高齢化が深刻になっている。こうした実態を全国規模で調べるのは初めて。
調査は、障害者が働く小規模作業所などが加盟する「きょうされん」が今年7月、3万2573人の障害者を対象に実施。親やきょうだいなどの介護者にも記入を求め、3277人の障害者と4123人の介護者から回答を得た。
主な介護者のうち、母親が64.2%と3分の2近くを占め、次いで父親が25.4%だった。年齢別では60代が33.6%と最も多い。60歳以上は過半数の53.1%に上った。
93歳の母親が、身体・知的障害がある72歳の息子と2人暮らしをしている事例や、94歳の父親が58歳の精神障害のある娘を介護している事例もあったという。介護者の半数近くは居宅支援サービスを利用せず、70代の介護者の利用率は13.7%、80代は3.1%と低い。
こうしたなか、介護者の84.5%は負担感を感じている。とくに精神的負担が68.7%と最も多く、身体的負担の52.0%、経済的負担の40.8%と続く。
障害者自立支援法はサービス選択の保障や自立支援を掲げたが、家族介護への依存と負担感を助長した。障害者とその家族の状況に応じた支援ができる制度改革が急務だ。

2010年12月17日金曜日

ヒ素で成長できる細菌

通常の生物にとっては有毒なヒ素を、生命活動の根幹となるDNAに取り込んで成長できる細菌を発見したと、米航空宇宙局(NASA)などの研究グループが発表した。
地球上の生物は、主に炭素、酸素、水素、窒素、リン、硫黄の6元素でつくられており、これらは生命活動に不可欠と考えられている。だが、この細菌はリンをヒ素に換えても生きることができるという。
現在知られているものとは異なる基本要素で生命が存在する可能性を示すもので、生命の誕生、進化の謎に迫る発見といえそうだ。
専門家らは生命を構成するのが6元素であることを前提に地球外の生命探しを進めているが、研究グループは、どのような物質を追跡の対象にするか、より真剣に考えなければならないと指摘している。
研究グループは、米カリフォルニア州にあるヒ素濃度の高い塩水湖「モノ湖」に生息する「GFAJ1」という細菌に着目。
ヒ素が多く、リンが少ない培養液で培養すると、リンが多い培養液よりは成長は遅くなるものの、細胞数が6日間で20倍以上に増え、GFAJ1はヒ素を取り込んで成長することを確認した。
細胞内の変化を詳しく調べると、DNAやタンパク質、脂質に含まれていたリンが、培養によってヒ素に置き換わっていた。リンとヒ素は化学的性質が似ているため、このような現象が起きたと考えられるが、どのように置き換わるかや、置き換わった分子が細胞の中でどのように働くかは分からないとしている。

2010年12月16日木曜日

認知症回避には・・・

仏国立衛生医学研究所は、認知症減少のために最も有効と考えられるのは、糖尿病とうつの予防、果物と野菜の摂取、そして教育レベルの改善であるとの研究結果を発表した。
認知症の正確な原因は分かっていないが、修正可能な危険因子はいくつか同定されている。それは、血管系の危険因子(心疾患、脳卒中、高血圧、肥満、糖尿病、高コレステロール)、うつの既往、食事内容、飲酒、学歴などである。
研究では、これらの危険因子のいずれの修正が将来の認知症の減少に最も効果があるかについて推計を試みた。1999~2001年に、南仏在住の65歳超の健康な男女1,433人を登録。被験者は認知機能テストを調査開始時および2、4、7年後に受けた。生涯の知性の指数として読解テストのスコアを用いた。既往症、身長、体重、学歴、月収、食事習慣、飲酒、喫煙などに関する情報を入手し、認知症の遺伝的リスクも測定した。
検討の結果、糖尿病やうつの予防、果物と野菜の摂取により、認知症の新規発症を全体で21%減少できると推定された。中でも、うつの予防がもたらす効果が10%強で最大であった。ただし、うつと認知症の間に直接的な因果関係があるかどうかについては不明のようだ。また教育レベルを高めることで、一般人口における7年以内の認知症発症が18%減少すると推定された。一方、既知の主要な遺伝的危険因子の除去によって見込める一般人口における7年以内の認知症発症の減少は7%にすぎなかった。
研究の結果から、公衆衛生上の施策としては、読み書き能力の向上、うつの迅速な治療、耐糖能低下とインスリン抵抗性の早期スクリーニングに重点を置くべきだとしている。
英国の研究では、認知症の診断後1年間の死亡率は認知症でない人の3倍超であることが明らかにされ、プライマリケアにおいて、より早期かつより的確に認知症を発見することが重要だとされている。

2010年12月15日水曜日

ビタミンE

ビタミンEの補充は脳梗塞のリスクを低下させる一方、脳出血のリスクを高めると、米ハーバード大学などのグループが発表した。
同グループは、2010年1月までに報告された論文を医学電子データベースから検索。ビタミンE補充の脳卒中への影響を1年以上の追跡で検討した試験を抽出し、解析により脳卒中全体および脳梗塞、脳出血発症への影響を評価した。
解析対象は、参加者計11万8,765例(ビタミンE群5万9,357例、プラセボ群5万9,408例)を含む9試験。うち7試験で脳卒中全体、5試験で脳梗塞と脳出血のデータが報告されていた。
解析の結果、ビタミンE補充による脳卒中全体の発症への有意な影響は認められなかった。しかし、タイプ別に分けると、ビタミンEの補充によって脳梗塞の発症が10%減少。その一方で、脳出血の発症が22%増えていた。
絶対リスクに関しては、476例がビタミンEを服用するごとに脳梗塞が1例減少。1,250例がビタミンEを服用するごとに脳出血が1例増える計算になった。
同グループは、ビタミンEの補充には十分な注意が必要であると指摘している。

2010年12月14日火曜日

掃除機内のノロウイルス

今冬、流行が本格化しはじめたノロウイルスに、掃除機内のゴミから感染する危険性が高いことが分かった。患者の便や吐物から広がる「第三の感染経路」だ。掃除機がウイルスがついた室内のほこりを吸い集めて濃縮するためとみられる。ゴミを0.1ミリグラム程度吸い込むだけで感染・発症する可能性がある。研究者は、掃除機のゴミ処理後は、必ず手洗いとうがいをと呼びかけている。
ノロウイルスは、患者の便や吐物から空気中のちりやほこりにくっついて感染を広げる性質がある。
長野県環境保全研究所感染症部の研究員らは、掃除機がほこりを集めて濃縮する機能があることに注目し、47の一般家庭で掃除機内のゴミを調べた。すると2家庭からゴミ1グラムあたり最大約50万個のウイルスが見つかった。ウイルスは18~30日間にわたって出続けた。どちらの家庭もその2~4週間前に家族が発症していた。この患者の便などから家庭内のほこりにウイルスが拡散し、掃除機で濃縮されたと見られる。
ノロウイルスは10~100個で発症する。今回の結果によると、掃除機内のゴミ約0.1ミリグラムで発症する危険があることになる。
研究によると、掃除機のゴミを不適切に処理すると感染源になる危険性が高いという。感染を防ぐポイントとして、ゴミを処理する時に(1)屋外で取り出す。できればマスクや使い捨て手袋を使う(2)すぐポリ袋などに入れて封をする(3)処理後は手を洗い、うがいをする、などを挙げている。

2010年12月13日月曜日

インフルエンザ今年の傾向

インフルエンザが流行の兆しを見せている。国立感染症研究所が全国約5000医療機関を対象にした調査では、5週連続で患者数が増加。
北海道と宮崎県は流行入りの目安となる1医療機関当たりの患者数1人を超えた。今シーズン、流行はどうなるのか。
新型インフルエンザが流行した昨シーズンは、2000万人以上出た患者のほとんどが新型によるものだった。今シーズンは今のところ、季節性のA香港型が目立っている。最近5週間では検出ウイルスの約7割を占め、南半球でもA香港型の流行が見られた。
A香港型は乳幼児に脳症や脳炎を、高齢者には肺炎を起こすなど、季節性の中でも大きな被害が出やすいため、季節性だからと言ってあなどってはいけない。
11月には秋田県北秋田市の病院で集団感染があり、入院患者8人が死亡した。A香港型が流行した1999年には、高齢者を中心に3万2000人が国内で死亡したと推定された。過去3シーズンは大きな流行がなかったので国民の免疫が低下している可能性もある。
では、新型はどうなるのだろうか。昨シーズン、新型に感染して亡くなったのは約200人。季節性では毎シーズン、数千人~数万人が死ぬのに比べて格段に少なかった。だが、日本で新型の死者が少なかったのは早期診断・治療が徹底されたためだ。海外では青壮年層の死亡も目立っており、油断すると、昨シーズン以上の被害が出る恐れがある。
今年は流行の立ち上がりが例年より早め。ワクチンの効果が出るのは接種して3~4週間後なので、今すぐにでもワクチンを接種してほしい。
ワクチンは昨シーズン、新型用と季節性用をそれぞれ接種する必要があった。今シーズンは新型と、季節性のA香港型、B型用の3種を混合したワクチンが用意され、接種は1回(13歳未満は2回)で済む。
治療薬もタミフル、リレンザに、1回投与で効果が出る点滴薬「ラピアクタ」や吸入薬「イナビル」が加わった。日本感染症学会は、できるだけ早く治療を受けることを勧める。予防には手洗いの励行なども有効だ。

2010年12月12日日曜日

新型インフルエンザ

新型インフルエンザで肺炎に至る小児患者は、発熱よりせきが先に出る場合が多いとの調査結果を、大阪医科大小児科が発表した。肺炎の兆候の早期発見につながる可能性がある。
調査は、昨年秋ごろに同大病院を受診した小児患者が対象。「38度以上の発熱より12時間以上前にせきが出始めた」という人が、肺炎を起こして入院した小児患者では13人中10人(77%)に上った。軽症患者では112人中10人(9%)にとどまった。
季節性インフルエンザは通常、発熱後にせき症状が出る。新型の場合は、ウイルスが感染初期から肺の奥に侵入しやすいため、せきが先行すると考えられるという。

2010年12月11日土曜日

肥満患者でビタミンD欠乏

スウェーデンのウプサラ大学外科の研究で、肥満患者では重度のビタミンD欠乏を来しており、カルシウム(Ca)の代謝が不良であることがわかった。
今回の研究では、肥満患者のビタミンD欠乏だけでなく、全身のCa調節系まで検討された。このような広範囲にわたる検討の結果、肥満患者がCa代謝不良であるという仮説や、同代謝不良が副甲状腺機能になんらかの影響を及ぼしているというこれまでの推論を支持する知見が得られた。
ビタミンD欠乏に至る特異的な機序はいまだ解明されていないが、おそらく肥満がビタミンD欠乏を惹起し、その逆はないと考えられるとしている。
これまでにも肥満がビタミンD欠乏につながる機序については、(1)ビタミンDは脂溶性であるため、脂肪組織に取り込まれて、身体で不足する、(2)肥満の人は屋外で過ごす時間が少ない傾向にあるため、日光に当たる時間が不十分である、など多くの仮説が提唱されている。
研究結果から、肥満患者の治療では特に骨粗鬆症リスクを視野に入れた適切なフォローアップが重要であると言える。さらに、同大学肥満症ユニットでは現在、肥満患者に多量のビタミンDを処方しているが、プライマリケアの段階で、肥満とビタミンD欠乏症に関して意識を高める必要があるだろう。

2010年12月10日金曜日

感染性胃腸炎

下痢や嘔吐を繰り返す感染性胃腸炎の患者が急増し、流行期を迎えたことが、国立感染症研究所の調査でわかった。ノロウイルスが主な原因とみて、手洗いなどの徹底を呼びかけている。
全国約3000の小児科から報告された感染性胃腸炎の患者数(11月8~14日)は、1医療機関当たり7・7人。前週の5・31人から約1・5倍に増え、4週連続の増加となった。昨年同時期の3倍以上で、過去10年では大流行した2006年に次いで多い。患者は、7歳以下が7割以上を占めている。都道府県別では、大分、山形、新潟の順に多く、佐賀を除く46都道府県で前週より増えた。
ノロウイルスは例年12月に感染のピークを迎える。同研究所感染症情報センターによると、感染予防で最も重要なのは、せっけんによる手洗いだという。吐いた物や下痢便には大量のウイルスが含まれ、子どもの間で簡単に感染が広がる。症状が出たら保育園や学校を休んでほしい。

2010年12月9日木曜日

バイリンガルで認知機能維持

2カ国語を話すバイリンガルであることが認知機能の維持と関係すると、カナダの研究グループが発表した。
社会的、精神的、身体的に活動性の高い高齢者は認知症の発症に対してある程度、保護されていることを示唆する疫学的エビデンスがある。同グループは、認知機能維持におけるバイリンガルの影響を検討した。
対象は、ほぼ確実にアルツハイマー病と診断された211例。認知機能障害の発症年齢の記録と、職歴および学歴、言語歴に関する情報を集めた。102例がバイリンガル、109例がモノリンガルであった。
その結果、モノリンガルの患者と比べバイリンガルの患者はADの診断が4.3年遅く、症状の発症が5.1年遅かった。この関係に学歴、職歴、移民などの影響はなく、男女差もなかった。

2010年12月8日水曜日

高血圧症への早期介入

米国のボストンにある病院で、正常血圧(140/90mmHg未満)の男女ティーンエージャーを対象とした研究を行った結果、正常血圧のティーンエージャーが、その後42歳までに高血圧を発症するリスクは、少女に比べて少年で3〜4倍であることが分かった。
今回の研究では、参加者2万6,980人(男性2万3,191人,女性3,789人)を対象に、青年期から壮年期までの血圧の自然経過について検討した。参加者の登録時の平均年齢は17.4歳で、42歳(平均)までの血圧値とBMIが追跡された。
その結果、追跡調査期間中に3,810例(14%)が高血圧を発症した。成人前の血圧値が正常範囲内であっても、その値が上限に近づくほど高血圧となる可能性が高まり、特に20歳代から30歳代にかけて高血圧を発症するリスクが高くなることが明らかになった。例えば、ティーンエージャー時に収縮期血圧が110mmHgであった群では、100mmHgであった群に比べて成人後の高血圧リスクが高かった。
この結果から、ティーンエージャー時の血圧値が、高血圧として定義されている値に比べてかなり低くても、将来の高血圧発症の予測因子となりうることが示唆された。
さらに、高血圧リスクには性差が認められ、17〜42歳の累積リスクは女性に比べて男性で3〜4倍であった。
また研究では、BMIと血圧との相互作用が検討された。その結果、男性では適正値と見なされるBMI(18.5〜25)も含め、BMIがどの範囲にあっても、成人後の高血圧リスクが増大していた。一方、女性では肥満のサブグループでのみ高血圧リスクが増大していた。この点については、女性ホルモンのエストロゲンは高血圧を予防する可能性が示唆されており、このことが影響したと考えられた。
さらに研究の結果、青年期に既に正常体重の上限に達し、収縮期血圧が110mmHg以上であった群では、高血圧リスクは1年当たり約1%の割合で増大する。つまり、この群の約10%は30歳になるまでに高血圧を発症することになる。高血圧、心疾患、糖尿病の予防に向けたライフスタイルの改善と介入を開始するのに早過ぎるということはない。高血圧や心疾患の予防は高齢者だけの問題ではない。血圧と体重の変化を小児科医が警告としてとらえ、できるだけ早期から予防措置を講じるべきであろう。「予防に勝る治療なし」である。

2010年12月7日火曜日

地中海料理で皮膚がん予防

テルアビブ大学は「抗酸化物質とω3脂肪酸の豊富な食事を取る東部地中海諸国では、黒色腫の発症率は極めて低く、このような食生活には皮膚がんの予防効果がある」と発表した。同大学は、帽子や日よけの上着、スポーツウエアを着て日光を遮るとともに、「ギリシャ流」の食生活、つまりオリーブオイル、魚介類、ヨーグルト、カラフルな果物と野菜をしっかり取るよう勧めている。
太陽光線は皮膚を通過し、光酸化を起こすことで皮膚と免疫系に損傷を与え、直接細胞に影響を及ぼすだけでなく生体に備わる修復機能も低下させる。
以前の研究によると、太陽の紫外線は皮膚組織の分子を励起して酸化させることで皮膚の損傷をもたらす。同大学は「十分量の抗酸化物質を摂取しておけば、紫外線による損傷を低減させることができる」としている。
またその後の研究で、食品中の抗酸化物質、特にカロチノイド(果物や野菜に含まれる色素で、トマトやスイカの赤色や、ニンジンやカボチャのオレンジ色をつくる)は皮膚に蓄積されて防衛の第一線で働き、紅斑の発現を遅らせることが分かった。紅斑は皮膚がんにつながる恐れもある組織やDNAの初期損傷の徴候である。
同大学は「今回の研究結果は、気候変動が問題視される昨今の状況では特に重要だ」と強調。気温と湿度が上昇するほど太陽の紫外線による影響は大きくなり、日焼け止めだけでは完全に予防できなくなるとしている。つまり、肌の健康促進には、日よけや日焼け止めを十分に用い、日差しが最も強くなる時間帯の外出を避けるとともに、食生活の改善も考慮する必要がある。
食生活を改善する代わりにサプリメントを多量に摂取すればよいと考えがちだが、同大学は、サプリメントは簡便だがさほど効果がないと説明。「食品に含まれる栄養成分は相乗作用を示す。食品にはさまざまなビタミン、抗酸化物質が含まれ、これらの成分は相互に作用し合って生体に備わる防御機能を支援する。このような成分の相乗作用は健康に大きく役立ち、特定の成分しか含まないビタミンのサプリメントより優れた効果を示す」と述べている。
地中海料理を求めて、わざわざギリシャやイスラエル、トルコなどに行く必要はない。これらの食材は各国の食料品店でも手に入る。同大学は「オリーブオイル、新鮮な魚介類、果物や野菜、適量の赤ワイン、全粒穀類、豆類と十分な水を買えばよい」と助言している。
また同大学は、避けるべき食品も挙げている。牛肉などの赤身肉、加工食品、アルコールは控え(飲むなら赤ワインが良い)、紫外線に対する皮膚の感受性を高めるソラレンを含む食品(パセリ、セロリ、ディル、香草、イチジクなど)は取り過ぎないよう気を付けるべきだという。