2011年2月28日月曜日

乳がん手術

早期の乳がん患者の外科手術で、転移を防ぐために脇の下のリンパ節全体を切除する「郭清」をしても、リンパ節の一部しか切除しなかった場合と生存率に変わりはないとする米国の多施設臨床試験の結果が発表された。
「郭清」はがんの再発を防ぐために広く行われているが、むくみが出るリンパ浮腫などの合併症が起きやすいとされる。研究グループは「(郭清をやめる)新手法を取り入れることによって、術後の生活を改善できる」と指摘している。
研究には、100カ所以上の医療機関が参加。1999~2004年に、手術前に脇の下の「センチネルリンパ節」を検査して転移が見つかった早期がんの患者を対象に、リンパ節全体の郭清をした場合と、転移が見つかった一部だけを取り除いた場合の生存率を比較した。
転移を防ぐための抗がん剤や放射線治療なども続けた結果、5年後の生存率は全切除した445人は91・8%、一部切除の446人は92・5%と、ほぼ同じだった。
一方、リンパ浮腫などの合併症は全切除では70%で起きたが、一部切除では25%で、大きな差が出た。
乳がん細胞は早い段階で全身に広がることが分かっており、研究グループはリンパ節切除よりも、抗がん剤や放射線による全身的な治療が再発を防いでいるのではないかとみている。

2011年2月27日日曜日

糖尿病入院

米ミシガン大学の調査によると、若年成人、特に若年女性で糖尿病による入院患者数が急増しているようだ。
米国では推定2,400万人が糖尿病に罹患している。完治は望めないが、糖尿病患者は投薬、健康的な食事と身体活動によって疾患を管理することができる。
調査では今回、糖尿病による入院の過去14年の傾向を把握するため、1993~2006年の全米入院患者データベースを使用、そのうち糖尿病と診断された退院患者データを検討した。
その結果、全年齢層で糖尿病による入院は65%増加。さらに、30歳代の若年成人の入院数は1993~2006年に2倍超となった。
研究によると、この入院の傾向は過去30年間の米国全土における肥満率の急増を反映しているようだ。
また今回の研究では、20歳代と30歳代のデータについて調べた結果、妊娠による入院を除外した後でも、男性と比べ女性では糖尿病による入院リスクが1.3倍高いことが分かった。この原因として(1)若年者では、男性よりも女性で肥満率が高い(2)男性よりも女性の方が糖尿病の症状が重い傾向にある—点を挙げ、このような状況は、若年女性で糖尿病の予防治療を受ける機会が少ないことの表れだとしている。
過去の研究では、糖尿病女性は予防的ケアの利用が少なく、積極的な内科的治療をあまり受けていないため、入院後の心血管障害による転帰が悪化することがわかっている。
今後、糖尿病患者の増加を防ぐためには、若年成人、その中でも特に女性をターゲットにした糖尿病予防策が必要である。また、糖尿病に罹患した若年成人の健康全般を改善するための医療介入が求められる。

2011年2月26日土曜日

受動喫煙

受動喫煙は世界各国で問題となっているが、世界レベルでどの程度の健康被害をもたらしているかについては明確にされていない。世界保健機関(WHO)「タバコのない世界構想」が、2004年時の192カ国のデータを解析したところ、受動喫煙が原因で年間に推定60万人超が死亡していたことが分かった。これは、世界中の全死亡の約1%に相当するという。
今回の研究は、全世界で受動喫煙がもたらす疾病負担を評価した初めてのもの。2004年の各国の疫学データやWHOのデータを用いて受動喫煙による死亡数と障害調整生存年数を算出し、受動喫煙による疾病負担を評価した。
その結果、全世界で小児の40%、非喫煙女性の35%、非喫煙男性の33%が受動喫煙にさらされていることが分かった。また、2004年の受動喫煙に関連した全死亡数は60万3,000人と推定された。これは、全世界の死亡数の約1%に相当する。これらの死亡の47%が女性、28%が小児、26%が男性で発生していた。
同年の受動喫煙に関連した死亡で多かったのは、成人における虚血性心疾患(IHD)による死亡で、37万9,000件であった。次いで、5歳未満の乳幼児における下気道感染症による死亡16万5,000件、成人および小児における喘息による死亡3万6,900件、成人における肺がんによる死亡2万1,400件が続いた。
受動喫煙によるDALY損失は1,090万年で、同年の全世界における疾患負担の約0.7%に相当した。また、全DALY損失の61%を小児が占めていた。
受動喫煙がもたらした疾患負担で最大であったのは、5歳未満の小児における下気道感染症による負担で、次いで成人のIHD、成人と小児の喘息と続いた。
受動喫煙による小児の死亡数は特に低・中所得国で多かったが、成人の死亡数についてはすべての所得国で同等であった。
受動喫煙に起因した小児の死亡の3分の2は、アフリカや東南アジア諸国で発生している。小児の受動喫煙のほとんどは家庭内での曝露である。これらの国や地域では、感染症とたばこが小児の死亡の複合的な原因となっていると考えられる。
世界全体で見ても、受動喫煙にさらされている割合が最も高いのは小児である。小児の場合、主要な曝露源である家庭内の喫煙者から逃れるすべがない。家庭内で受動喫煙にさらされている小児は、ほとんどの国や地域で見られたが、特にアジアや中東諸国で多かった。小児は受動喫煙の害に関する強いエビデンスが得られている人口集団である。したがって、これらの事実は公衆衛生上の提言の根幹となるべきものであり、政策立案者が勘案すべき事項であるといえる。
また、受動喫煙に関連する全死亡数の約3分の2,DALY損失の約4分の1を成人非喫煙者におけるIHDによる死亡が占めていたが、職場での喫煙を禁止する禁煙法の施行により急性冠動脈イベントの数は急減している。完全禁煙法が施行されれば、施行後1年以内に受動喫煙による死亡が大幅に減少し、それに伴って社会・医療システムにおける疾病負担も減少すると見込まれる。
一方、受動喫煙による死亡数を男女別に見ると、男性に比べて女性で多かった。この原因について、(1)非喫煙者数が男性に比べて女性で多い(2)アフリカ、南北アメリカの一部地域、東地中海沿岸諸国、東南アジアでは、女性の受動喫煙リスクが男性に比べて50%以上高いことが挙げられる。
2004年の能動喫煙による死亡数は全世界で510万人と推定されており、今回明らかになった受動喫煙による死亡数を合計すると570万人超に上る。今回の研究では、喫煙者は受動喫煙によるさらなる影響は受けないとの想定の下で解析が行われた。しかし、受動喫煙の影響が喫煙者と非喫煙者で同等であるとすれば、受動喫煙による死亡数は30%多く推定される。
完全禁煙法が施行されている国の住民は世界人口の7.4%にすぎず、完全禁煙法が確実に施行されている国は数カ国にとどまる。しかし、完全禁煙法の施行により受動喫煙リスクは飲食店などで90%、一般の場所では60%低下することが、これまでの研究で示されている。また、完全禁煙法の施行は非喫煙者を受動喫煙から守るだけでなく、喫煙者の禁煙成功率も高めるようだ。
受動喫煙を削減するために、政策立案者は以下の2領域で行動を起こすべきである。まず、多くの地域で女性や小児を受動喫煙から守るには、家庭での受動喫煙曝露を減らすための補足的な教育戦略が必要になる。自発的な家庭内禁煙を促す政策は、小児や成人非喫煙者の受動喫煙の機会、さらに成人の喫煙を減らし、若年者の喫煙を減らす上でも有効と考えられる。また、低所得国では受動喫煙が多くの5歳未満児の死亡原因となっている。発展途上国では、たばこ関連疾患対策よりも感染症対策が先決であるという誤解を早急に正す必要がある。
禁煙法の施行に伴う社会的規範の変化は家庭内にも波及すると考えられるが、家庭内における受動喫煙を減らすには、その家庭独自の方法で減らせるように動機付けるイニシアチブが必要だ。たばこの煙のない家庭が普通になりつつあるとはいえ、世界的にはまだ多い。世界中の喫煙者12億人が、何十億人もの非喫煙者を疾患の原因となる大気汚染物質にさらしている。完全に取り除ける大気汚染物質源は少ないが、屋内の喫煙をなくすことは可能である。そのことにより多大な便益が得られる。

2011年2月25日金曜日

がん死亡率減少(EU)

欧州連合(EU)加盟27カ国で今年中にがんで死亡するとみられる人数は10万人当たりの死者数でみると、男性が2007年の153・8人から142・8人、女性が90・7人から85・3人へそれぞれ減少する見通し。
調査によると、死亡率の低下は女性の場合は主として乳がん、男性は肺がんおよび結腸がんによる死亡率の減少が主因だという。ただ全体の死者数は、人口増加や高齢化の影響で2007年の125万6001人から2011年は128万1460人へ微増が予想されている。
調査はイタリアのミラノ大学研究グループが中心となって数学モデルを使って予測、来年も調査する予定。
報告によると、西欧における死亡率は中欧および東欧に比べて相対的に低く、調査グループは、この傾向は予測可能な将来も続く見通しだと述べた。がんの種類による死亡率をみると、肺がんの10万人当たり死亡率は2007年12・55人から2011年には13・12人に上昇する見通しで、特にポーランドと英国では女性のがん死亡原因の首位は乳がんから肺がんに代わった。

2011年2月24日木曜日

妊婦の体重増加と肥満児

ボストン小児病院(ボストン)とコロンビア大学(ニューヨーク)の研究で、妊娠中の母親の体重増加と生まれてくる児の出生時体重は相関し、大幅な体重増加が認められた妊婦では、4,000gを超える児を出産する確率が高いということがわかった。これまでの研究から出生時体重が成人後の体重に影響を及ぼすことがわかっているため、妊婦に対して肥満予防策を講じることは出生児にも有益となると考えられる。
これまでの研究から、妊娠中に体重が増加し過ぎた母親から生まれてくる児の出生時体重が増加し、その子が将来、肥満になるリスクも高まることがわかっている。しかし、遺伝などの共通因子もこれらに関与している可能性は否定できなかった。今回の研究では、遺伝的要因を除外するため、同一の母親による複数回の単胎妊娠が検討された。
研究では、米国の州別出生登録データから、1989年1月1日~12月31日におけるミシガン州とニュージャージー州の出生記録が用いられた。データを抽出するに当たって(1)妊娠週齢が37週以前あるいは41週以降(2)母親が糖尿病を有する(3)出生時体重が500g未満か7,000gを超える(4)妊娠中の体重増加に関するデータが残っていない―場合は除外した。最終的に分析対象となったのは,母親51万3,501人と出生児116万4,750人であった。
分析の結果、妊娠中の体重増加と出生時体重には一貫した相関性が見られ、母体の体重が1kg増えるごとに子供の出生時体重は7.35g増えた。
また、妊娠中に体重が8~10kg増えた母親から生まれた児と比べ、24kg超増えた母親から生まれた児は約150g重かった。さらに、24kg超増加した母親では4,000g以上の児を出産する確率が2倍超高かった。
このような関連の機序について、妊娠中に体重が増加することによって、インスリン抵抗性や胎盤への栄養伝達をつかさどるホルモンなどによる影響が考えられた。
出生時体重は将来のBMIリスクの予測因子でもあることから、妊娠中の過剰な体重増加は、長期的に児の肥満関連疾患発症リスクを高める可能性がある。出生時体重が高過ぎると将来、喘息、アトピー性疾患、がんなどの疾患を発症するリスクも高まる。
妊娠中の体重増加が胎児の成長や出生児の代謝系に及ぼす影響について理解を深めることは重要なようだ。一方で、生殖年齢に当たる女性が、妊娠中だけでなく妊娠前においても適正体重を維持するには、どのような支援策が有効かを緊急に検討しなければならないだろう。現在、妊娠前の女性に対する健康対策が注目されていることから、女性が適正体重で妊娠することに焦点を合わせた介入法を考える上では絶好の機会といえる。さらに、生涯にわたる体重軌跡を是正し、世代にまたがる過体重の悪循環を断ち切るためには、より効果的な集団ベースの戦略が必要であろう。

2011年2月23日水曜日

画面前着座時間と心血管イベント

テレビ視聴など画面の前に座っている時間が長い程、心血管イベントおよび死亡リスクが増加することが、英国のグループの研究でわかった。
同グループは、2003年のスコットランド健康調査の参加者4,512例を2007年まで追跡。心血管イベントおよび死亡と1日の画面前に座っている時間(2時間未満、2〜4時間未満、4時間以上)との関係を調べた。
1万9,364人年の追跡で215例が心血管イベントを発症、325例がなんらかの原因で死亡した。年齢、性、肥満、喫煙、長期罹患疾患、糖尿病、高血圧などを調整した結果、画面前に座っている時間が2時間未満の群と比べ、4時間以上の群の心血管イベントおよび全死亡ハザード比(HR)はそれぞれ2.30、1.52と高かった。
画面前に座っている時間と心血管イベントの関係のおよそ25%はBMIやC反応性蛋白、HDLコレステロールと関係していた。

2011年2月22日火曜日

腸内細菌と脳の発達

腸内細菌がマウスの行動に影響を与えることをスウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究チームが発見した。
腸内細菌が肥満や免疫に関わっていることは知られていたが、脳の発達や行動にまで影響をおよぼすことが示されたのは初めて。
研究チームは、通常の腸内細菌を持つマウスと、無菌で育てたマウスの行動を比較した。箱の中で陰の区画に隠れ、警戒している時間が多い普通のマウスに比べ、無菌マウスは明るく広い場所をうろつくなど行動が大胆だった。
脳の変化を調べたところ、無菌マウスでは、不安や感情に関わる脳内物質の量が少なかった。研究チームは、進化の過程で、腸内細菌の作用が、新生児の脳の発達過程に組み込まれたのではないかと考えているようだ。

2011年2月21日月曜日

痛風(2)

痛風になりやすい人
▽30代以上の男性
▽過去に部活などで激しい運動をしていた
▽大食いで肥満
▽酒を大量に飲む
▽仕事などのストレスが多い
▽腎臓に障害がある
▽血縁者に痛風の人がいる

2011年2月20日日曜日

痛風

働き盛りの男性に多い痛風に悩む人が増えているようだ。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、07年の国内の患者数は約85万人で、98年(約59万人)の約1・4倍。食生活の変化やストレスの増加などにより、以前に比べ若い人も発症しやすくなったことが原因とされる。
痛風は、急に足の親指の付け根などが赤く腫れて激痛が走る生活習慣病。痛みで動けないこともある。原因はプリン体の老廃物である尿酸が血液中に過剰に増え、関節にたまって結晶化すること。体が結晶を異物と見なして排除しようとするため、激痛を伴う発作が起こる。足の甲やかかと、くるぶし、アキレスけん、ひざなどが痛む場合もある。
発作は片足の親指に表れる場合が多い。むずむずするような違和感が寝る前から始まり、朝には激痛になっているなど、1日以内に痛みがピークに達する。
痛風は欧州などでは紀元前から報告があり、フランスのルイ14世やレオナルド・ダビンチら多くの著名人もかかったとされる。日本では明治時代まではほとんど知られておらず、食生活の欧米化が進んだ1960年代以降に患者が増えたという。
患者の98~99%は男性。女性ホルモンに尿酸の排せつを促す働きがあり、血液中の尿酸濃度(血清尿酸値)は男性の方が高いため。特に、よく食べよく酒を飲む30~60代の肥満男性が痛風になりやすい。メタボリックシンドロームの人はリスクが高く、足に原因不明の痛みが出たら痛風を疑い、内科や整形外科を受診した方がいい。

2011年2月19日土曜日

子供の風邪

野菜を食べる子供は風邪の治りが早く、ひきにくい。有機・低農薬野菜などの食品宅配事業を展開するらでぃっしゅぼーやが実施した調査でわかった。母親がひきにくいと、子供もひきにくく、体質が受け継がれる傾向がみられた。とくに小学生時代に野菜をよく食べた母親では、それが現在も食習慣となっていると、ひきにくい体質になるようだ。また、ひきにくさは東高西低と地域差がみられることも明らかになった。
調査は、全国の30~40代の小学生をもつ母親対象(有効サンプル約1300人)にアンケート形式で実施。
風邪の罹患率は、過半数の小学生が年に2~3回とする回答を得た。ただひきやすい体質か、否かを尋ねると、50・1%は「ひきにくい」と答えている。
風邪をひきにくい体質について、母親と子供に相関関係があるかを分析すると、「ひきにくい」(どちらかといえばも含む)とする母親は46・1%で、「ひきやすい」(同)体質27%を上回っている。「ひきにくい」母親の66・6%が子供も「ひきにくい」体質と回答しており、同じ体質が引き継がれていることが示唆された。
子供に対する野菜の摂食状況によれば、70・5%の小学生が「よく食べる」(まあまあ食べる含む)と答え、風邪との相関性を分析してみると、野菜摂食する小学生の51・1%が「ひきにくい」体質であり、野菜ぎらいの非摂食系小学性に比べ高く、有意差のあることがわかった。
風邪にかかった子供の治るのが早いか、遅い方かを尋ねると、61・4%が「早い」と回答している。野菜摂取する小学性の64・2%で、治るのが「早い」ことが判明した。これは非摂食系小学生51・3%と比べ、12・9ポイントも高かった。
次に母親自身に回答してもらうと、63%が小学生時代に野菜をよく食べ、現在、「食べている」(まあまあ食べる含む)ヒトは86・8%だった。この食習慣が子供にも伝わり、「ひきにくい」体質づくりに役立っているようだ。

2011年2月18日金曜日

ビフィズス菌

理化学研究所、東京大学、横浜市立大学の研究チームは、ヒトの腸内にいるビフィズス菌の作り出す酢酸が病原性細菌である腸管出血性大腸菌O157の感染抑止に役立つことを発見した。異物からのバリア機能をもつ大腸下部の腸管上皮に酢酸が間接的に作用すると、O157に対する抵抗力が増強、予防機能を発揮するという。
ビフィズス菌は、ヒト腸内に常在する乳酸菌の仲間。善玉菌として有害菌の増殖を抑え、腸内環境を整えるなど健康維持によいとされる。
研究チームは、マウスにO157を感染させ、ビフィズス菌の感染予防効果を調査。O157感染前に、経口投与すると感染死が起きないビフィズス菌(予防株)3株と感染死するビフィズス菌(非予防株)2株のあることを確認したうえで、その違いは腸内で産生される代謝物の異なることが関与しているとみて解析をスタート。
解析作業では、まずビフィズス菌投与直後にマウス糞便を解析。予防株投与群では非予防株投与群に比べ、ブドウ糖など糖類が消費され半分に減少。これにともない、短鎖脂肪酸の1つ酢酸の量が約2倍高いことがわかった。
酢酸には、異物侵入のバリアとして働く腸粘膜上皮の増殖・保護作用があることを踏まえ、次に腸粘膜上皮の解析を行った。予防株投与群では細胞エネルギー代謝や抗炎症作用に関する遺伝子群の発現量が非予防株投与群よりも2~3倍高かった。酢酸の効果によりバリア機能が高まることがわかった。大腸の下部で果糖から効率よく酢酸が作られると腸粘膜上皮が保護される。これによりO157の毒素による腸粘膜上皮の細胞死を減らし、結果としてO157による炎症や感染死を予防できることが示唆された。

2011年2月17日木曜日

インフル、ピーク越え

国立感染症研究所の報告によると、インフルエンザ患者はやや減少してきたようだ。流行のピークはすぎつつあるが、流行の規模はまだ大きいため引き続き注意が必要とのこと。今後はB型の患者が増える可能性もあるようだ。
都道府県別で流行が大きかったのは、長崎、宮崎、群馬、福岡の順。これまで流行が大きかった関東、九州地方を含め、33都府県で患者数が減少しているという。
直近5週間に検出されたウイルスは新型が最も多く、季節性のA香港型、B型の順。
厚労省の担当者によると、学校の中での流行拡大は収まりつつあるようだが、依然まん延状態には変わりはない。引き続き注意が必要なようだ。

2011年2月16日水曜日

暴飲と心疾患リスク

フランスのトゥールーズ大学の研究で、英国北アイルランドのベルファストで見られる偏った飲酒文化が、同地域における心疾患の罹患率が高いことと関係している可能性があることがわかった。これに対し、今回の研究によると、比較対象となったフランス人男性は1週間を通じてより均等な割合でアルコール飲料を摂取する傾向にあるようだ。
飲酒が心疾患や早死につながることは既に知られている。しかし、飲酒パターンやアルコール飲料の種類によって、このような影響に違いが見られるか否かについては明らかにされていない。
そこで今回、文化の異なる北アイルランドとフランスの中年男性を対象に、酒の飲み方(飲酒パターン)が両地域での心疾患発症率の差と関係するか否かが検討された。
被験者データによると、ベルファストとフランスでは、1週間に消費されるアルコール飲料の量はほぼ同等であった。しかし、フランスの中年男性は週を通して習慣的に飲酒する傾向がある一方、ベルファストでは同じ量を1~2日で飲むなど飲酒パターンが異なる傾向が認められた。さらに、週末に飲酒する男性の割合は、フランスに比べてベルファストでは約2~3倍高いことが明らかになった。同地域ではほとんどの男性が週末の1日(土曜日)に集中して飲酒していたという。
研究開始から10年間にわたり、被験者の健康状態(受診,入院,治療など)をフォローアップした結果、年齢、喫煙、運動量、血圧、腹囲などの心血管疾患の危険因子とは独立して、暴飲している男性が心筋梗塞を来すあるいは心疾患が原因で死亡するリスクは、習慣的に飲酒している人の約2倍高いことがわかった。
さらにベルファストで心疾患リスクが高いもう1つの原因として、ワイン(27.4%)よりもビール(75.5%)やスピリッツ(蒸留酒,61.3%)が好まれる傾向を挙げている。これに対し、フランス人の多くはワインを飲んでいた(91.8%)。中等量のワイン摂取が心疾患を予防することは先行研究で実証されている。
暴飲は、心疾患リスクが増大するだけでなく、肝硬変やさまざまながんにも関連し、社会問題にもつながる。地中海諸国では、若年層が暴飲する傾向が強まっており、今回の研究は公衆衛生上重要な意味がある。公衆衛生の改善を図るために、中年男性に対しては、暴飲することによって、アルコール飲料の保護的効果がなくなるだけでなく、心筋梗塞リスクを高めることを知らせるべきであろう。その一方で、若年層に対しては、若者は心疾患リスクが低いため、同リスクに及ぼす影響について強調するよりも、アルコール中毒、飲酒が関与した傷害、暴行、悔いの残る性経験などに焦点を合わせた暴飲反対のメッセージを発信していく方が良いだろう。

2011年2月15日火曜日

乳製品で減量促進

イスラエルのネゲブ・ベングリオン大学保健栄養センターと保健科学部の研究で、減量目的のダイエットを受けた者のうち乳製品からのカルシウム(Ca)摂取量が最大であった者では、ダイエット法にかかわらず全く摂取しなかった者よりも体重の減少度が大きかったことがわかった。
今回の試験はイスラエルの核研究センターで実施されたもので、過体重の男女(40~65歳)300例以上が2年間にわたって低脂肪食、地中海食、および低炭水化物食を含む各種ダイエット法を行った。
その結果、試験開始後6カ月時点における乳製品からのCa摂取量が583mgと最も多かった群では、2年後の減量プログラム終了時点で、体重が5.3kg減少していたのに対し、同摂取量が156mgと最も少なかった群では体重減少量は3.3kgにとどまっていた。
今回の試験ではさらに、研究開始後6カ月の時点で血中ビタミンD濃度が高い者では、体重の減量度合が大きいことが示された。また、過体重の者では血中ビタミンD濃度が低いことも確認された。
これまでの研究により、過体重の者では血中ビタミンD濃度が低いことが明らかになっているが、今回、減量に成功した者では血中ビタミンD濃度が高かった。このような傾向は低炭水化物食、低脂肪食、地中海食のいずれのダイエットを行っているかにかかわらず、2年の試験期間を通じて一貫して見られた。
Ca吸収を高めるビタミンDは、日光を浴びる以外に、ビタミン強化ミルク、脂肪に富む魚、卵から得られる。
しかし一般には、得られるビタミンDの推奨1日摂取量(400 IU;グラス4杯のミルクに相当)を満たしている者は少ないようだ。

2011年2月14日月曜日

親の喫煙

独ハイデルベルク大学の研究で、就学前の幼児(5,6歳)で親が喫煙している場合に、収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)が有意に上昇することがわかった。家族全体の生活習慣の改善が次世代の心血管リスクを改善するようだ。
調査は2007~08年、幼稚園の最終学年の4,236人(平均年齢5.7±0.4歳)を対象として実施。調査項目は血圧、高血圧に関連する可能性のある親の喫煙、身長、体重、胎児期、環境、家族などの危険因子だった。
その結果、父親の28.5%、母親の20.7%が喫煙しており、少なくとも片方の親が喫煙していたのは33.4%、両親とも喫煙していたのは11.9%だった。
子供の血圧は身長およびBMIと強い関連があり、肥満児ではやせ児よりSBP、DBPとも有意に高かった。また、早産あるいは低出生体重児では、正常出生体重児と比べSBPの有意な上昇が認められた。
親の高血圧や肥満、低い学歴や職業階級も子供の血圧の上昇に関連していた。親の喫煙は、非喫煙と比べ、子供のSBPを1.0mmHg、DBPを0.5mmHg上昇させていた。有意ではないが、女児より男児で影響が大きかった。
親の喫煙は、BMI、出生体重、親の高血圧といった潜在的交絡因子の調整後も子供のSBPに独立して影響しており、親の肥満、高血圧、喫煙の3つがそろった場合、危険因子がない場合と比べてSBPが3.2mmHg、DBPが2.9mmHg高かった。

2011年2月13日日曜日

高齢者の歩行速度

高齢者の歩行速度によってその後の生存の予測が可能であると、米ピッツバーグ大学などのグループが発表した。
同グループは、地域在住の65歳以上の高齢者を対象とした9件のコホート研究の参加者計3万4,485例のデータを用いて、登録時の歩行速度と生存との関係を調べた。参加者の平均年齢は73.5歳、平均歩行速度は0.92m/秒であった。
9研究の追跡期間は6〜21年間で1万7,528例が死亡。全体の5年生存率は84.8%、10年生存率は59.7%であった。解析の結果、すべての研究で歩行速度は生存率と有意な関係を示し、歩行速度が0.1m/秒速くなるごとに死亡リスクは12%低下した。75歳時点の歩行速度の分布による予測10年生存率の幅は男性では19〜87%、女性では35〜91%だった。
年齢、性と歩行速度に基づく生存予測の精度は、年齢、性、歩行補助具の使用、自己申告による身体機能に基づく予測、あるいは年齢、性、慢性疾患、喫煙歴、血圧、BMI、入院歴に基づく予測と同等であった。

2011年2月12日土曜日

スポーツ飲料に注意

テキサス大学公衆衛生学部行動科学の研究で、果物や野菜を食べ、運動するなど健康的な生活習慣を実践している小児でも、糖質などを添加したスポーツ飲料の大量摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性があることがわかった。
小児や親は、これらの飲料を“健康に良いもの”と考えがちだが、実際には糖質が多く、栄養価は低い。
今回の研究では、テキサス州の中学2年から高校2年までの1万5,283人を対象に、糖質入り飲料(SSB)、ソーダ、非炭酸の味付けされたスポーツ飲料(flavored and sports beverage;FSB)と(1)不健康な食物の摂取(2)健康的な食物の摂取(3)身体活動レベル—との関係を調べ、これらの飲料摂取と関連する生活パターンを検討した。SSBには炭酸の有無にかかわらず、糖質や高果糖コーンシロップなどの高カロリー甘味料が添加された飲料が含まれた(100%果汁を除く)。
その結果、テキサス州の小児の28%が、1日に3回以上SSBを摂取していた。
SSB、ソーダ、FSBの摂取量はいずれも不健康な生活パターンと関連していた。その一方で、FSBの摂取量は、野菜や果物の摂取、運動などの健康的な生活習慣とも正の相関を示した。このような関連はソーダ摂取では認められず、むしろ健康的な習慣と負の相関が示された。
スポーツ飲料は健康的なライフスタイルとマッチする飲料として販売されており、ソーダとは別物として扱われている。しかし、実際のところ、このような飲料では果汁含有率は極めて低い上、不必要にカロリーが高い。今回の研究の結果、FSBには糖質が含まれているにもかかわらず、誰もが健康に良いと誤解している事実が浮き彫りになった。
米疾病管理センター(CDC)によると、米国の小児と青年(2~19歳)のうち17%近くが肥満傾向にあり、SSBの摂取量増加が全米の高肥満率に拍車をかけているのかもしれない。
これらの飲料の摂取は体重を増加させる可能性があり、1日にソーダもしくは他のSSBを1缶飲むだけで、体重が1年で4.5kg以上増加する可能性がある。
果汁ジュースはたとえ100%果汁であっても高カロリーなので、1日に1杯以上摂取すべきではない。果汁ジュースよりも果物そのものの方が栄養価は高い。また、スポーツ飲料は激しい運動のとき以外は摂取すべきではなく、それ以外の場合は水を飲むべきである。
青年とその親は、FSBに添加されている糖質について知る必要がある。FSBを大量に摂取すると、運動で得られた効果が台無しになる。肥満を予防するためには、FSBに関する誤解を解くことが重要なようだ。

2011年2月11日金曜日

カルシウムサプリメントと心筋梗塞

オークランド大学医学保健科学部の研究で、骨粗鬆症の高齢患者が摂取することの多いカルシウム(Ca)サプリメントは心筋梗塞リスクの増加に関連していることがわかった。今回の研究結果から、骨粗鬆症の管理におけるCaサプリメントの役割を見直す必要があることが示唆された。
Caサプリメントは骨を強化するために広く処方されている。しかし、その一方で、最近行われた試験から、健康な高齢女性では、Ca摂取によって心筋梗塞と心血管イベントの発生率が増加する可能性が示されている。
そこで研究チームは、この重大な問題をさらに詳しく調べるため、Caサプリメントの影響を検討した。
その結果、プラセボ群と比べCaサプリメントを摂取した群では心筋梗塞リスクが約30%上昇していた。また有意ではないが、脳卒中や死亡リスクも上昇していることが分かった。この結果はすべての試験で年齢、性およびサプリメントの種類を問わず一貫していた。
Caサプリメントは広範に使用されているため、リスクの上昇はわずかであっても、人口全体に及ぼす影響は大きくなる。
先行研究からは、食事から摂取したCaと心血管リスクの間に関連性は認められておらず、このリスクはサプリメントに限られることもわかっている。
Caサプリメントの骨密度や骨折予防に対する有益性がわずかであることを考慮すると、骨粗鬆症の管理におけるCaサプリメントの役割について見直す必要があるかもしれない。

2011年2月10日木曜日

妊婦に1杯のコーヒー

米国産科婦人科学会(ACOG)は、適度のカフェイン摂取が流産や早産につながる可能性は低く、妊娠中の女性は安心して1日に1杯のコーヒーや清涼飲料を楽しめると発表した。しかし、同学会は、大量のカフェイン摂取による流産への影響は不明のままであるとする同学会産科臨床委員会の意見も発表した。
長い間、妊婦がカフェインを摂取してもよいかどうかについては、見解が分かれていた。これまでの科学的なエビデンスを評価した結果、適度なカフェインを毎日摂取しても、流産や早産につながるような大きな影響は見られないことが分かった。
適度なカフェイン摂取量とは、1日当たり200mgのカフェイン摂取を指し、実際にはコーヒー約360mLに相当する。カフェイン入りのお茶やほとんどの清涼飲料に含まれるカフェイン量は、これよりもはるかに少なく(50mg未満)、平均的なチョコレートキャンディー(35mg未満)と同程度である。大量のカフェイン摂取は日常的に200mg超のカフェインを摂取する場合を指す。
同委員会は、胎児の成長に対するカフェインの影響について、科学的なエビデンスの評価も行った。その結果、カフェインが胎児の成長を妨げることを示す明確なエビデンスは得られなかった。
妊婦には、1杯のコーヒーを飲んでも問題はないようだ。

2011年2月9日水曜日

はしか(麻疹)

国立感染症研究所は今年、2010年に麻疹(はしか)に感染した患者(暫定値)は457人だったと発表した。09年の741人に比べて減っている。
はしかはウイルスによる感染症で感染力は強く、人から人へ空気感染する。07年には10代の間で流行し、大学や高校で休校が相次いで問題になった。このため厚生労働省は08年度から、13歳と18歳を対象にワクチンの公費による接種や患者の全数調査も始めた。最初の08年の患者は1万1015人だったが、09年に大幅に減った。
同省は12年度までに、ワクチン接種などで、はしかの患者をゼロに近づけると目標を掲げている。ただ集団感染例も続いており、保健所や感染研は警戒を強めている。
13歳と18歳を対象としたワクチン接種は12年度までなので、対象者ははしかのワクチンを早く打って欲しい。
はしかを発症すると1カ月ほどは免疫力が落ちる。この間にインフルエンザなど、ほかの病気にかかると重症化する恐れもあるという。

2011年2月8日火曜日

薄毛の原因

体質的な薄毛は、毛髪の元になる細胞が足りないのではなく、その細胞が次の段階に変化できないことが原因であることを、米ペンシルベニア大学などの研究チームが突きとめた。
この細胞変化を促す薬が開発できれば、薄毛の新たな治療法になる可能性がある。
毛が生える際には、頭皮にある「幹細胞」が別の「前駆細胞」に変わり、それが「毛母細胞」「角化細胞」などに変化して毛髪を生む。
研究チームは、体質的に薄毛の男性型脱毛症患者54人(40~65歳)の頭皮を採取し、細胞の種類と数を調べた。薄毛部分と毛が生えた部分を比べたところ、幹細胞の数はほとんど同じだった。ところが、前駆細胞の数は、薄毛部分で10分の1に減っていた。

2011年2月7日月曜日

脳の回復予測

救急搬送された心肺停止患者の脳機能の回復見通しを、脳の局所的な血中酸素の割合「酸素飽和度(rSO2)」から予測する方法を、大阪府済生会千里病院千里救命救急センターの研究チームが開発した。
rSO2が25%以下だと9割が24時間以内に死亡した一方、26%以上の場合は4割が社会復帰し、値が高い人ほど回復程度が良かった。適切な治療法を素早く選択し、救命率を高めることに生かせる。また、大規模災害時に搬送された患者の治療優先順位を決める「トリアージ」にも活用できる可能性がある。
脳の神経細胞は、心停止で血流が長時間止まると死滅するが、心拍再開後も細胞死が進み、脳死や植物状態に至るケースがある。
研究チームは、心臓のバイパス手術などをする際、麻酔科医が前頭葉の大脳皮質を流れる血液中のrSO2を計測して脳の状態を把握し、呼吸や血圧などの管理の目安にしていることに着目。rSO2は、酸素を運搬するヘモグロビンの血中濃度から求められ、近赤外光を額に10秒程度あてるだけで計測できる。
同センターへ一昨年4月から1年間に搬送された18歳以上の82人について、来院から3分以内のrSO2を測定。健康な人のrSO2は80~50%だが、82人のうち、25%以下だった52人は、47人が24時間以内に死亡。残りの5人も脳機能が回復せず、感染症などで亡くなった。
一方、26~40%の9人は6人が死亡、1人が植物状態になったが、2人は社会復帰できた。41%以上では21人中、5人が死亡し、5人が脳に重い後遺症が残った状態で転院したものの、10人が社会復帰し、1人は軽い後遺症で済んだ。
rSO2の値を高く保つ治療をすれば、社会復帰の可能性が高まる。また、数値の常時監視で、効果的な蘇生治療も行えるだろう。

2011年2月6日日曜日

ES細胞

様々な細胞に変化できる胚性幹細胞(ES細胞)を使って、心臓の拍動のリズムを刻むペースメーカー細胞を作ることに、鳥取大の再生医療研究チームがマウスを使って成功した。
細胞をマウスより大きいラットの弱った心臓に移植すると、心臓の拍動が活発になることも確認。人でも実現すれば、不整脈などの根本治療になると期待される。
心臓の拍動は、司令塔であるペースメーカー細胞(洞結節細胞)の電気信号が制御している。この電気信号に異常が発生すると不整脈となり、治療法として、電気刺激を与える心臓ペースメーカーの埋め込み手術がある。国内では年間約6万人がこの手術を受けるが、電磁波の影響を受けやすいほか自律神経の活動に合わせてリズムを変えられないなどの欠点があった。

2011年2月5日土曜日

動脈硬化

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーが「動脈硬化に関する意識」の調査結果を発表した。この調査は2010年12月上旬、国内に居住する40~70歳代の男女800名に対してインターネット上で行われたもの。
動脈硬化の危険因子有無について聞いたところ、「高血圧」が30.4%と最も多く、続いて「肥満」(24.1%)「脂質異常症」(18.1%)「喫煙習慣がある」(15.6%)「糖尿病」(11.8%)「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こした」(5.4%)の順となり、一つでも持っている人は64.5%にのぼった。この結果は、3人に2人が動脈硬化の危険因子を持っているということを示している。性別年代別で見た場合には、60代以上の男性においては8割が動脈硬化の危険因子を持っていることもわかった。
動脈硬化が起きる部位として知っているものについて聞いたところ、「心臓」(86.9%)「頭」(77.6%)という回答が多かったのに対し、「足」(32.1%)「首」(29.8%)「腹部」(17.1%)「腎臓」(8.9%)は昨年の調査結果同様、わずか約3割程度にとどまった。また、動脈硬化が起きる部位によっては5年後の生存率ががんより低いことを知っていると回答した人は15.1%で、動脈硬化の危険因子を持つ人においても、認知度はわずか16.7%であった。
全身に起きる動脈硬化は、部位によっては症状が出にくい場合もあり、発見や遅れによりQOL(Quality Of Life)の低下や生命予後を悪化させるケースもあり、注意が必要。

2011年2月4日金曜日

身体活動と体重

18~30歳の青年期から20年間にわたり身体活動を活発に維持した人は、体重・ウエスト周囲の増加が、そうでない人に比べ有意に抑制されていることが明らかになった。この傾向は特に、女性で顕著だったという。米国ノースウェスタン大学Feinberg校予防医学部門の研究チームが、約3,500人について20年間追跡した結果からわかった。
研究では、1985~86年に18~30歳であった3,554人について調査を開始し、その後2年、5年、7年、10年、15年と20年まで追跡した。身体活動レベルについては、調査時点の前年の活動について調べスコア化し、体重増とウエスト周囲増との関連について分析した。
その結果、身体活動レベルが高い三分位範囲の男性は、低い三分位範囲の男性に比べ、体重増加量は2.6kg少なかった。女性については、活動レベルが高い三分位範囲の体重増加量は、低い三分位範囲に比べ6.1kgも少なかった。
また、ウエスト周囲についても、男性では活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、増加量が3.1cm少なかった。女性についても、活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、ウエスト周囲増加量が3.8cm少なかった。

2011年2月3日木曜日

女性の涙

女性の涙には男性の感情に影響する化学物質が含まれているとの実験結果をイスラエルにあるワイツマン科学研究所のチームが発表した。
昆虫では、情報伝達の役割を担う微量の化学物質「フェロモン」が生殖行動に影響し、マウスでも雄の涙腺から分泌される物質が雌に交尾を促すことが報告されている。今回、動物の世界で知られる促進フェロモンとは異なる作用のフェロモンが人間に備わっている可能性が強まった。
研究チームはまず、複数の女性ボランティアに悲しい映画を見せ、涙を採取。涙と、塩水がしみこんだシートを男性被験者24人の鼻の下に別々にはりつけると、涙のシートをつけた場合でのみ、女性の顔写真に性的魅力を感じる度合いが減った。
唾液中の男性ホルモン「テストステロン」の濃度も低下したほか、脳の活動を調べる機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)でも、性的興奮にかかわる視床下部などで活動が低下していることを確認した。

2011年2月2日水曜日

緊急避妊薬

女性がレイプされたり、避妊に失敗したりした時に服用する緊急避妊薬「ノルレボ」が近く承認され、今春にも発売される。副作用が少なく、従来の緊急避妊法や妊娠中絶より、体への負担が少ないようだ。
ノルレボは性行為後72時間以内の服用で妊娠の確率が大幅に減るという。海外48か国で承認済み。これまで日本では月経周期異常などの治療薬を転用した緊急避妊法が行われていたが、嘔吐などの副作用があった。ノルレボにはそういった副作用がなく随分楽になる。
ただ、緊急避妊薬の登場で、通常の避妊がおろそかになるとの懸念もある。ノルレボを服用しても100%妊娠を防げるわけではない。緊急的に用いるものと知っておかねばならない。ノルレボの使用には、医師の処方が必要で、健康保険は適用されない。

2011年2月1日火曜日

大腸内視鏡検査

50歳以上の大腸癌患者1688人と対照1932人のデータを用いて、大腸内視鏡検査とその後の大腸癌リスクの関連性を検討した研究がある。それによると、過去10年間に大腸内視鏡検査を受けていると、大腸癌リスクが77%低下するようだ。特に左側大腸癌リスクが、大腸内視鏡検査とポリープ切除によって大幅に低下することがわかった。50歳を過ぎたら大腸内視鏡検査を受けましょう。