2011年2月24日木曜日

妊婦の体重増加と肥満児

ボストン小児病院(ボストン)とコロンビア大学(ニューヨーク)の研究で、妊娠中の母親の体重増加と生まれてくる児の出生時体重は相関し、大幅な体重増加が認められた妊婦では、4,000gを超える児を出産する確率が高いということがわかった。これまでの研究から出生時体重が成人後の体重に影響を及ぼすことがわかっているため、妊婦に対して肥満予防策を講じることは出生児にも有益となると考えられる。
これまでの研究から、妊娠中に体重が増加し過ぎた母親から生まれてくる児の出生時体重が増加し、その子が将来、肥満になるリスクも高まることがわかっている。しかし、遺伝などの共通因子もこれらに関与している可能性は否定できなかった。今回の研究では、遺伝的要因を除外するため、同一の母親による複数回の単胎妊娠が検討された。
研究では、米国の州別出生登録データから、1989年1月1日~12月31日におけるミシガン州とニュージャージー州の出生記録が用いられた。データを抽出するに当たって(1)妊娠週齢が37週以前あるいは41週以降(2)母親が糖尿病を有する(3)出生時体重が500g未満か7,000gを超える(4)妊娠中の体重増加に関するデータが残っていない―場合は除外した。最終的に分析対象となったのは,母親51万3,501人と出生児116万4,750人であった。
分析の結果、妊娠中の体重増加と出生時体重には一貫した相関性が見られ、母体の体重が1kg増えるごとに子供の出生時体重は7.35g増えた。
また、妊娠中に体重が8~10kg増えた母親から生まれた児と比べ、24kg超増えた母親から生まれた児は約150g重かった。さらに、24kg超増加した母親では4,000g以上の児を出産する確率が2倍超高かった。
このような関連の機序について、妊娠中に体重が増加することによって、インスリン抵抗性や胎盤への栄養伝達をつかさどるホルモンなどによる影響が考えられた。
出生時体重は将来のBMIリスクの予測因子でもあることから、妊娠中の過剰な体重増加は、長期的に児の肥満関連疾患発症リスクを高める可能性がある。出生時体重が高過ぎると将来、喘息、アトピー性疾患、がんなどの疾患を発症するリスクも高まる。
妊娠中の体重増加が胎児の成長や出生児の代謝系に及ぼす影響について理解を深めることは重要なようだ。一方で、生殖年齢に当たる女性が、妊娠中だけでなく妊娠前においても適正体重を維持するには、どのような支援策が有効かを緊急に検討しなければならないだろう。現在、妊娠前の女性に対する健康対策が注目されていることから、女性が適正体重で妊娠することに焦点を合わせた介入法を考える上では絶好の機会といえる。さらに、生涯にわたる体重軌跡を是正し、世代にまたがる過体重の悪循環を断ち切るためには、より効果的な集団ベースの戦略が必要であろう。

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