2011年2月16日水曜日

暴飲と心疾患リスク

フランスのトゥールーズ大学の研究で、英国北アイルランドのベルファストで見られる偏った飲酒文化が、同地域における心疾患の罹患率が高いことと関係している可能性があることがわかった。これに対し、今回の研究によると、比較対象となったフランス人男性は1週間を通じてより均等な割合でアルコール飲料を摂取する傾向にあるようだ。
飲酒が心疾患や早死につながることは既に知られている。しかし、飲酒パターンやアルコール飲料の種類によって、このような影響に違いが見られるか否かについては明らかにされていない。
そこで今回、文化の異なる北アイルランドとフランスの中年男性を対象に、酒の飲み方(飲酒パターン)が両地域での心疾患発症率の差と関係するか否かが検討された。
被験者データによると、ベルファストとフランスでは、1週間に消費されるアルコール飲料の量はほぼ同等であった。しかし、フランスの中年男性は週を通して習慣的に飲酒する傾向がある一方、ベルファストでは同じ量を1~2日で飲むなど飲酒パターンが異なる傾向が認められた。さらに、週末に飲酒する男性の割合は、フランスに比べてベルファストでは約2~3倍高いことが明らかになった。同地域ではほとんどの男性が週末の1日(土曜日)に集中して飲酒していたという。
研究開始から10年間にわたり、被験者の健康状態(受診,入院,治療など)をフォローアップした結果、年齢、喫煙、運動量、血圧、腹囲などの心血管疾患の危険因子とは独立して、暴飲している男性が心筋梗塞を来すあるいは心疾患が原因で死亡するリスクは、習慣的に飲酒している人の約2倍高いことがわかった。
さらにベルファストで心疾患リスクが高いもう1つの原因として、ワイン(27.4%)よりもビール(75.5%)やスピリッツ(蒸留酒,61.3%)が好まれる傾向を挙げている。これに対し、フランス人の多くはワインを飲んでいた(91.8%)。中等量のワイン摂取が心疾患を予防することは先行研究で実証されている。
暴飲は、心疾患リスクが増大するだけでなく、肝硬変やさまざまながんにも関連し、社会問題にもつながる。地中海諸国では、若年層が暴飲する傾向が強まっており、今回の研究は公衆衛生上重要な意味がある。公衆衛生の改善を図るために、中年男性に対しては、暴飲することによって、アルコール飲料の保護的効果がなくなるだけでなく、心筋梗塞リスクを高めることを知らせるべきであろう。その一方で、若年層に対しては、若者は心疾患リスクが低いため、同リスクに及ぼす影響について強調するよりも、アルコール中毒、飲酒が関与した傷害、暴行、悔いの残る性経験などに焦点を合わせた暴飲反対のメッセージを発信していく方が良いだろう。

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