2011年6月30日木曜日

土食

故意に土を食べるという概念はほとんどの人に嫌悪感をもたらすものかもしれないが、この慣習の歴史は古く、実際、健康的なものであると考えている人もいることが新しい研究で示された。既存の研究を分析した結果、土食は、細菌や寄生虫といった侵入者から身体を守る可能性があるという。
ヒトは何千年も前から土を食べており、住民のいる全大陸、ほとんどすべての国で報告されている。土を食べる理由を明らかにするため、米コーネル大学は、土食の文化に関する報告480件以上を調べ、パターンを検討した。
研究の結果、豊富に食物があっても土を食べ(通常、最初は煮る)、満腹になるほどは食べない傾向があることが判明した。栄養については、最もよく食べられる土は粘土の一種で、ミネラルは含まれていない。実際、摂取された粘土により消化管による栄養摂取が阻害される可能性があることが判明した。
米コーネル大学は、土が寄生虫や病原菌から身体を守る、身体防御というのが最良の回答であると考えており、土食が寄生虫や細菌に特に弱い妊娠初期の女性や思春期前の小児に最も多くみられることを指摘。この理論は、土食は食物が媒介する病原菌が最も多い熱帯地方で最も一般的であり、胃腸障害が認められる場合に土を食べたがることにより裏付けられる。

2011年6月29日水曜日

リンゴの皮

リンゴの皮に含まれるウルソル酸と呼ばれる天然化合物が、加齢や疾患による筋肉消耗の予防に有用である可能性が、マウスを用いた研究でわかった。
米アイオワ大学の研究では、最初にヒトとマウスの双方において絶食に反応して変化する63の遺伝子と、絶食をした人と脊髄損傷患者の筋肉で発現が変化する29の遺伝子が同定された。次に1,300の小分子を検討し、筋萎縮を抑制する可能性のある化合物としてウルソル酸に着目した。
次の段階で、ウルソル酸により、食餌を与えていないマウスの筋肉消耗を予防することができ、正常マウスの食餌にウルソル酸を何週間も加えると筋肉成長が促されることが判明した。また、ウルソル酸を投与したマウスのほうが痩せ、血糖値、血中コレステロール値およびトリグリセリド値が低下した。
マウスでみられた健康上の便益は、筋肉のインスリンシグナル伝達の強化と、筋萎縮に関連する遺伝子シグネチャーの修正によるという。ただし、この知見がヒトを対象とした臨床試験で確認されるかどうか、通常の食事で摂取する量のウルソル酸が筋肉消耗を予防するかどうかは不明である。しかし、この知見がヒトで確認されれば新薬の開発につながる可能性がある。
ウルソル酸は興味深い天然化合物であり、リンゴの皮の成分で通常の食事の一部となっている。1日1個のリンゴは医者いらずとも言われる。筋肉消耗は疾患や加齢に伴いみられることが多く、消耗により入院期間が延長し、回復が遅れ、患者が自宅に帰れない場合もある。筋肉消耗については十分に理解されておらず、それに対する薬剤もない。

2011年6月28日火曜日

アルツハイマー病の早期発見

アルツハイマー病の早期の警告的徴候(warning sign)を検出する脳スキャンが、年内にも米国で利用可能となる見込みである。ただし、アルツハイマー病患者にとっては、まだ有効な治療法が開発されていない現状では、この診断法が有用なものとなるには時期尚早かもしれない。
アルツハイマー病は米国では死因の6番目となっており、近年、その死亡数は増加傾向にある。脳に沈着し、老化(senility)現象を引き起こすβ(ベータ)アミロイドと呼ばれる脳内蛋白(たんぱく)の徴候を検出するPET(ポジトロンCT)スキャンの有効性を示す研究結果が米国核医学会年次集会で発表された。
PETスキャナーで検出される蛋白濃度は脳における情報処理が遅い人のほうが高く、高齢者ではより高度な記憶障害に関係する。ただし、脳スキャンにより老化の徴候がみられた患者を治療するための医師の選択肢は限られている。
より正確かつ早期に診断を受けられることは、記憶力が低下し始めたときに起きている問題を知りたい人にとって重要。残念ながら、有効な治療法が見つかるまで疾患の進行を止めるためにできることはない。有効な治療法が見つかれば、本当の価値が出る。
このスキャンは安価でなく米国では何千ドルもかかるが、約90%でアルツハイマー病を正確に診断できる。医師自身が行う場合は80%になる。このスキャンにより同疾患を早期段階で検出できる。

2011年6月27日月曜日

血液検査で消化器がん発見

金沢大発の医療ベンチャー企業「キュービクス」は、簡単な血液検査だけで消化器がんを発見できる世界初の検査キットの輸出を目指し、欧州人向けの性能試験のためドイツの医療企業に検査キットの提供を始めた。
同社は、約2年前に、消化器がんの有無を血中の遺伝子の変化で判別する新技術を使い、マイクロアレイと呼ばれる検査キットを製造。
この検査キットを使えば、2・5ccの血液を採取するだけで、3日で結果が分かるといい、胃がん、大腸がんなどの消化器がんを9割の精度で発見できるという。同社によると、これまでの性能試験は日本人だけに行われてきたため、人種が違っても同様の性能があるかどうかを調べようと、ドイツの企業と共同で試験に臨むことにした。
マイクロアレイは8人分を同時に検査でき、原価が1枚約40万円。人間ドックのオプションとして需要が期待できる。

2011年6月26日日曜日

家庭血圧

診察室収縮期血圧(SBP)の最大値(外れ高値)が、同平均値とは別に、心血管イベントの強力な予測因子であることが最近報告されたが、自治医科大学循環器内科学部門の研究グループは、同様に家庭SBPの最大値が同平均値よりも標的臓器障害(TOD)の重症度を反映する可能性があるのではと仮定し、未治療の高血圧患者を対象に試験を行った。結果、最大家庭SBPとTODには相関関係があることが認められ、平均値に加えて評価をすることで、心臓や動脈の高血圧性TODの予測値を上げられる可能性があることがわかった。
研究グループは、2004年6月~2007年12月の間、山口県・岩国市立美和病院内科の外来で募った356例の未治療の高血圧患者(2週間以上あけた2回の受診時測定診察室血圧の平均値が、SBP値140mmHg以上かDBP値90mmHg以上、あるいは両方該当)を対象に試験を行った。
被験者は、家庭血圧を連続14日間、朝と夕それぞれ3回ずつ座位にて測定し、測定値は血圧計に記録された。
最大家庭SBPとは、毎日の朝測定3回の平均値、夕測定3回の平均値のうち最も高い値のものと定義した。
TOD有無については、心エコーにて計測した左室心筋重量係数(LVMI)、超音波検査による頸動脈内膜中膜厚(IMT)と、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を評価し測定した。
おもな結果は以下のとおり。 ●被験者の平均年齢は66.6歳、44.7%(159例)が70歳以上であった。被験者1人当たりの14日間の家庭血圧の測定総回数の平均値は79.8±7.9であった。 ●最大家庭SBPと、LVMI、頸動脈IMT、UACRとは、いずれも有意な相関関係が認められた。 ●LVMI、頸動脈IMTとの相関係数は、最大家庭SBPのほうが平均家庭SBPより有意に大きかった。 ●多変量回帰分析の結果、平均家庭血圧値に関係なく、最大家庭SBPは、LVMI、頸動脈IMTと独立した相関関係を示した。 ●最大家庭SBPを、平均診察室血圧と平均家庭血圧に加えて評価を行うことで、左室肥大、頸動脈アテローム性動脈硬化症の各予測モデルの適合性は有意に改善された。
本研究は、家庭血圧の変動性の増大が、平均値とは独立して、新規の高血圧性臓器障害の指標となることを示した貴重な臨床研究である。
昨年、オックスフォード大学の先生たちが、心血管ハイリスク群において、経過中の外来血圧の日差変動性(SD)やその最大収縮期血圧が、平均値とは独立して極めて大きな予後予測因子となることを示した。
この研究発表以降、血圧変動性が注目されているが、日差血圧変動性の増大は、外来血圧のみならず、家庭血圧でもみられる。本研究は、その日差変動性の増大と最大収縮期血圧が、平均家庭血圧とは独立して、左室肥大、頸動脈硬化、微量アルブミン尿と関連していることを示した。最大収縮期血圧は、家庭血圧平均値よりもより強く、さらに独立して、これらの臓器障害指標と関連していた。
また、最大収縮期血圧は、平均血圧レベルが130mmHg未満の血圧管理良好群においても、左室肥大や頸動脈硬化と独立して関連していた。
現在、高血圧管理において家庭血圧は不可欠である。これまで、平均値のみを重要視していたが、これからは、時々高値を示す最大血圧値にも留意して、臓器障害やリスクを評価してゆく必要がある。

2011年6月25日土曜日

手足口病

岡山県では、幼児に手足口病の感染が広がっているとして注意を呼び掛けている。県感染症発生動向調査によると、県内54の定点医療機関(小児科)の平均患者数が6月6日から12日にかけて7・31人と過去10年間で最も多かった。
手足口病は夏に流行するウイルス感染症で、発症者の80%が3歳以下。発熱があり、口腔粘膜や手足などに2~5ミリの水ほう性発しんが出る。通常は合併症や後遺症もなく1週間以内で治るがまれに髄膜炎を引き起こす。
対策は、(1)外から帰ったら手洗い、うがい(2)症状がある人とは密接な接触を避け、タオルなどの共用は避ける(3)高熱、頭痛、おう吐がひどい場合は早めに医師の診察を受ける。

2011年6月24日金曜日

豊胸手術

米食品医薬品局(FDA)はこのほど,生理食塩水やシリコンジェルを注入する豊胸手術と未分化大細胞リンパ腫(ALCL)との間に相関が認められると発表した。
ALCLは非常に珍しい種類のがんである。今回のレポートによると,FDAが過去の文献をレビューした結果,豊胸手術を受けた患者ではインプラント挿入部付近の瘢痕莢膜(scar capsule)におけるALCL発症リスクがごくわずかではあるが有意に上昇していた。FDAはこの結果を受け,医療従事者は豊胸手術を受けた女性でALCLの診断が確定した例を必ず報告するよう求めている。また,豊胸手術を受ける患者がこのような潜在的リスクについて十分に説明を受けられるよう,乳房インプラントメーカーと共同で,患者および医療従事者向けの製品添付文書を改訂する予定だ。
米国立がん研究所(NCI)によると,ALCLはリンパ節や皮膚をはじめ身体のさまざまな部位に発生し,米国では,1年間に女性の約50万人に1人がALCLと診断される。豊胸手術を受けていない女性を除き,乳房組織にALCLが見つかる例は,約1億人に3人と少ないことが分かっている。
今回の通告は,1997年1月~2010年5月に発表された文献のレビュー,海外の規制当局や研究者,乳房インプラントメーカーからの情報に基づいている。
文献のレビューでは,生理食塩水やシリコンジェルによる豊胸手術を受けた後にALCLを発症した34例が特定された。症例の大半は,豊胸手術部位が完全に治癒した後に疼痛,しこり,膨張,乳房の非対称を訴えて来院した際に発見されている。これらの症状は,インプラント挿入部周囲における漿液貯留(漿液腫),瘢痕化,莢膜形成,腫瘤などによるもので,漿液や瘢痕組織を調べた結果,ALCLと診断された。
豊胸手術後にALCLを発症した女性は全世界でおよそ60例いるが(FDA調べ),正確な数は分かっていない。すべての症例が文献に報告されているわけではないし,重複して掲載されているかもしれない。豊胸手術を受けた女性は全世界で推計500万~1,000万人とされている。
FDAは医療従事者に対して,以下の通り推奨している。
 (1)豊胸手術を受けた女性がALCLと診断された場合,Medwatch(FDAの安全情報と有害事象報告プログラム)に報告すること。報告はインターネットや電話で受け付けている
 (2)患者のインプラント挿入部周囲に遅発性の漿液貯留が認められた場合,ALCLの可能性を念頭に置くこと。採取した漿液の病理検査を行い,ALCLを除外する
 (3)豊胸手術を受けた女性に対するルーチンベースでの診察や経過観察を変更する必要はない。ALCLは非常にまれな疾患で,豊胸手術を受けた女性でも発症する確率はごくわずかである
さらに,豊胸手術を受ける女性に対しても以下を推奨している。
 (4)女性は挿入された乳房インプラントの観察を怠らないこと。また,変化に気付いたら主治医に連絡する
 (5)これから豊胸手術を受けようと考えている女性は,リスクと便益について医療従事者と話し合うこと

2011年6月20日月曜日

HPV感染

性的に活発な人々のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染率は80%を超え,HPV感染症は一般的によく見られる性感染症であるが,HPVは性交時の体液ではなく,感染した上皮細胞が剥落したものを介して伝播するため,通常の性感染症とは異なる。そのため,コンドームの使用は感染を確実に防ぐ対策にはならない。子宮頸がんだけでなく,肛門がんの予防のためにも,高リスク群にはHPVワクチンを接種することが推奨される。
近年,すべての子宮頸がんのうち約70%は,高リスク型HPVとされる16型もしくは18型の感染が原因で,低リスク型の4型や6型は性器疣贅などのリスクの低い病変を惹起するにとどまることが一般にも知られるようになった。
しかし,HPV 16型あるいは18型に感染しても,感染が持続するのは20%にとどまり,異形成に進展するのは5~10%,15年以内にがんが生じるのは1%である。ただし,1%という数を軽視してはならない。一般市民のHPV感染率の高さからすると,極めて多くのがん患者が見積もられる。
一方,肛門がんの80%強もHPV 16型によるものとされており,HPV感染は男性における肛門がんの原因としても注目されている。特に危険なのは同性の性的パートナーがいる男性で,こうした男性がHPVだけでなくHIVにも感染すると,肛門がんの発症リスクは75倍に上昇する。同性のパートナーがいる男性446例を対象とした研究では,26%で正常な粘膜であることが確認された一方,35%で中等度,35%で重度の異形成が認められ,2.5%で顕性の肛門がんが見つかったとしている。
肛門がんに対するHPVワクチンの有効性を支持する有力なエビデンスはない。しかし,免疫機能が低下している患者においても4価HPVワクチンの忍容性が良好であることが明らかにされている。
HPV 16型にまだ感染していない男性がHPVワクチンを接種すれば,肛門がんを効果的に予防できると考えられており,一定リスクがある患者にはHPVワクチンの接種が勧められる。

2011年6月19日日曜日

フィブリノゲン

医薬品開発会社の免疫生物研究所は、血液を固める作用のあるタンパク質「フィブリノゲン」を、遺伝子組み換えカイコから生産することに成功した。同社によると、カイコによるフィブリノゲン生成に成功したのは世界初。
止血などに用いられるフィブリノゲン製剤は人の血液から製造されるため、C型肝炎などのウイルスが混入するリスクがあり、一部の製剤による感染被害で薬害肝炎訴訟も起きた。カイコを使えばウイルス混入の恐れがない上、血液由来の製剤より安価な製造が期待できる。
日本製粉との共同研究で、カイコの遺伝子にフィブリノゲンを発現する人の遺伝子を組み込み、繭に分泌されたフィブリノゲンを抽出する仕組み。免疫生物研究所は、安全性の確認などで実用化には3~5年かかるとみている。今後、繭を大きくしたり、抽出の効率を上げたりして生産量の向上を図る。

2011年6月18日土曜日

買い物と死亡リスク

台湾国立衛生研究所の台湾の高齢者データベースを用いた研究から,買い物に頻繁に出かける高齢者では,あまり買い物に出かけない高齢者に比べて死亡リスクが低いことがわかった。
今回は,1999~2000年に行われた高齢者の栄養・保健調査のデータを用い,買い物の頻度と死亡の関係について検討した。解析には在宅で自立生活を送っている65歳以上の高齢者1,841人の人口動態,社会経済的地位,健康行動,買い物の頻度,身体機能,認知機能に関するデータが用いられた。認知機能や身体機能については妥当性が証明された質問票により評価し,年齢,性,学歴,民族,経済状況,雇用状況,ライフスタイルに関する因子,慢性疾患の有病率などを考慮した。
回答者のうち62%が75歳未満で,54%が男性であった。大多数が健康的なライフスタイルを保っており,4人中3人は経済的に自立していた。60%は1種または2種の慢性疾患を有していた。
1週間の買い物頻度については,48%が「全く行かない」あるいは「頻繁には行かない」,22%が「1週間当たり2~4回」,17%が「毎日行く」,残りが「1週間に1回」と回答した。
1週間に1回以上買い物に行く高齢者は,年齢がより若く,男性が多い傾向にあった。また,そのような高齢者には喫煙および飲酒の習慣があり,身体的・精神的な健康状態が良好で,定期的に身体活動をしており,夕食をともにする友人や仲間がいる者が多い傾向も認められた。
さらに,身体機能と認知機能などの交絡因子で調整した結果,毎日買い物に行く高齢者では,ほとんど行かない(1週間に1回以下)高齢者に比べて死亡リスクが低かった。なお,男女別に見ると,毎日買い物に行く女性では,ほとんど行かない女性に比べて死亡リスクは23%低かったのに対し,男性では28%低く,毎日買い物に行くことで得られる便益は女性よりも男性で大きかった。
今回の研究について,買い物行動は,地域の結束を強め,地域経済に貢献するだけでなく,個々人の幸福感や健康,安心感などをもたらす。さらに,買い物に出かけることでより長生きできる可能性もあることがわかった。
また,買い物に出かけることで新鮮な食材が入手できるため,健康的な食生活が維持され,そのことが健康増進に寄与している可能性がある。さらに,頻繁に買い物に行く習慣のある高齢者は,必ずしも毎回生活に必要なものを買い求めるために出かけるのではなく,友人や仲間との交流,運動のために出かけている可能性もある。あらたまってエクササイズをするにはそれなりの動機が必要となるが,買い物であれば気軽に出かけることができる。健康的な加齢を目的とした従来の健康増進策に比べて,買い物がより魅力的なアプローチになりうるだろう。

キャラクターが味覚に影響

ペンシルベニア大学の研究で、シリアル食品の箱にイメージキャラクターが描かれているか否かで,小児の味への評価は左右されるということがわかった。
小児向け商品には,アニメや映画のキャラクターがしばしば用いられるが,これは小児に商品を印象付け,覚えさせるための一般的なマーケティング手法である。小児は銘柄など言語的なものより非言語的な要素の方が記憶しやすいため,キャラクターやロゴなどによって視覚に訴えることで,宣伝効果を高めることができる。
今回,シリアルの箱にキャラクターが用いられること,また商品名に健康的なイメージを持たせることで,小児のシリアルに対する味の評価がどう変化するか調べた。
まず,「Healthy Bits」または「Sugar Bits」の商品名で,外箱にキャラクターが描かれているものと描かれていないものの4種類のシリアル箱を用意。小児80例(4~6歳,平均年齢5.6歳)に対し,これらシリアル箱のうちの1種類を見せた後,実際には同一のシリアルを味見させ,味の好き嫌いを5段階で評価させた。
その結果,小児のほぼ全員がシリアルを好きだと回答したものの,キャラクターが描かれている箱を見た小児の方が,そうでない小児よりも高い評価を付ける傾向にあった。また,商品名がSugar Bitsではなく,Healthy Bitsのシリアル箱を見せた小児の方が,よりおいしいと感じていた。
商品名がSugar Bitsで,キャラクターが描かれていない箱を見せられた小児では,他の小児と比べ評価が低かった。一方,商品名がHealthy Bitsの場合は,キャラクターの有無により小児の評価が変化することはなかった。
今回の研究から,食品の包装にキャラクターを用いることが,小児の味に対する評価に影響を及ぼすことが示された。健康的な食事をイメージさせるようなメッセージでも小児の共感が得られるようだが,キャラクターによって受ける影響の方が上回ることがわかった。

2011年6月16日木曜日

がんは人為的な現代病

マンチェスター大学生物医学エジプト学KNHセンターの研究で、がんは汚染や食事などの環境因子によって引き起こされる現代病で,ヒトによってつくり出された可能性が高いことがわかった。古代エジプト・ギリシャとそれ以前の時代の遺物と文献を調査した今回の研究では,エジプトミイラに対して初めてがんの組織学的診断が行われた。
数百体のエジプトミイラを調査した結果,1体からしかがんが見つからなかったこと,文献でもがんについての記述がほとんど見つからなかったことから,古代において,がんは極めてまれな疾患であったとの結論。また,がんの罹患率は産業革命以降,劇的に増加し,特に小児がんで顕著であったことから,がんの増加は単に寿命延長の影響ではないことが示唆されるとしている。
工業化社会において,がんは心血管疾患に次いで2番目に多い死因だが,古代では極めてまれであった。このことから,古代の自然環境にはがんの要因になるものは存在せず,がんは環境汚染や食事・ライフスタイルの変化が原因の人為的疾患と考えざるをえない。
古代社会に手術という治療選択肢はなかったため,古代のミイラには必ずがんの痕跡が残っている。ミイラに事実上腫瘍組織が見つからないということは,古代においてがんがまれな疾患だったことを意味している。そしてこの事実は,がんの要因が現代の工業化社会にしか存在しないことを証明している。
古代人は現代人より短命であったため,がんが発生しなかったのではないかとする説がある。この説は統計学的には正しいものの,古代エジプトや古代ギリシャの人々は,実際にはアテローム動脈硬化症,骨パジェット病,骨粗鬆症などを発症する年齢まで長生きしており,骨腫瘍などはむしろ,現代社会においても若年者で発症しやすい。
それ以外にも,腫瘍組織が適切に保存できないため古代のミイラから腫瘍が発見されないという可能性も考えられる。しかし,これに対しても,腫瘍組織の特徴はミイラ化しても保存されることを実験的研究により証明されている。実際,正常組織よりも良好に保存されることを示した。このような知見が得られ,そして世界中のすべての地域のミイラ数百体が調査されたにもかかわらず,がんが顕微鏡的に確認されたとする論文はこれまで2件しかない。またカイロ博物館と欧州の博物館に安置されているミイラでも放射線学的調査が行われたが,やはりがんの痕跡は発見されなかった。
広範な古代エジプトのデータと過去1,000年にも及ぶ膨大なデータは,現代社会に対して明確なメッセージを発信している。がんはヒトが生み出した疾患で,われわれが対処でき,そして対処すべき対象であろう。

2011年6月15日水曜日

ボディースキャン

米国では,多くの空港で保安検査を目的とした全身ボディースキャナー(以下ボディースキャナー)の設置が進められている。カリフォルニア大学バークリー校公衆衛生学と同大学サンフランシスコ校放射線科で,このようなボディースキャナーによる潜在的な放射線被ばくリスクについて検討したところ,利用者に有意なリスクを及ぼすことはほとんどないことが明らかになった。
背景情報によると,米運輸保安局(TSA)は,これまでに国内の78空港に486台のボディースキャナーを設置しているが,2011年末までには1,000台を設置する予定である。これらのボディースキャナーは後方散乱X線を利用しており,実際に発する放射線量は極めて低いため,有害となりうるか否かは確認されていない。しかし,たとえ放射線量は低くても,航空機の利用者は年間7億5,000万人に上ること,また個々人におけるリスク上昇はわずかでも全体的にはがん患者数の増加となりうることから,ボディースキャナーによる発がんリスクについて検討する価値はある。
こうした装置による1回当たりの被ばく量は,日常生活における自然被ばく量に換算すると3~9分間の被ばく量に相当する。また,他の放射線源と比較しても,空港でのボディースキャンで,歯科X線検査,胸部X線検査,マンモグラフィ,腹部・骨盤部CTの1回当たりの放射線量に達するには,それぞれ50回,1,000回,4,000回,20万回以上受けなければならない計算になる。
今回の検討では,空港でのボディースキャンによる放射線被ばく量を(1)すべての航空機利用者(2)高頻度利用者(週10回利用)(3)高頻度に利用する5歳女児(週1回往復)—の3つのパターンごとに定量化し,潜在的な被ばくリスクを推算した。5歳女児を検討パターンの1つとした理由は,小児は成人と比べて放射線の影響を受けやすいこと,また飛行機の頻繁利用による乳がんリスクを評価したモデルが既に存在したことによる。
推算に当たっては,すべての乗客が1回のフライトごとに照射量0.1μシーベルトの全身ボディースキャンを1回受けるとし,1億人の乗客が年間計7億5,000万回利用すると仮定した。
解析の結果,すべての航空機利用者では,空港でのボディースキャンによる生涯のがん発症数は6件と推定された。しかし,これらの乗客における生涯のがん発症数は4,000万件にも上ると考えられる。このことを踏まえた上で,この6件によるリスクを評価すべきである。
高頻度利用者(100万人)では,ボディースキャンによる生涯のがん発症数は4件と推定された。これに関しても,この集団で高高度飛行に伴う宇宙放射線によりがんが600件発症すること,生涯のがん発症数も全体で40万件であることを前提に考えなければならない。また,高頻度に利用する5歳女児ではボディースキャンにより200万人に1人が乳がんを発症すると推算されたが,この集団でも頻回飛行による乳がん発症は25万件に上り,これは同集団の生涯乳がん発症数の12%を占めるとした。
今回の知見に基づけば,全身ボディースキャンによる健康上のリスクは非常に小さく,航空機利用者はそれを理由に同検査を恐れるべきではない。放射線に対し過敏に反応し,被ばくが心配だというのであれば,一切の航空機利用を考え直すべきだろう。なぜなら,些少ではあるが実際にリスクとなるのは航空機を利用すること自体で,ボディースキャンで微々たる放射線量を受けるからではないためだ。しかし,今後も,同装置の安全性検証のための追加試験を実施していくのが望ましいだろう。

2011年6月14日火曜日

医師不足でも長寿世界一

世界保健機関(WHO)は5月、2011年版の「世界保健統計」を発表、09年の日本の平均寿命は83歳で、前年と同様、イタリア中部の内陸国サンマリノと首位を分け合った。日本は、女性の平均寿命では86歳で単独首位を維持。男性は80歳でサンマリノ(82歳)に次いで2位。
WHOによると、喫煙率が比較的高い現状のままでは、日本は(平均寿命82歳の)オーストラリアに長寿世界一の座を譲るかもしれないとのこと。
平均寿命が最も短いのはアフリカ南部の内陸国マラウイで47歳。前年にいずれも42歳で最も短かったアフガニスタン、ジンバブエはそれぞれ48歳、49歳と大きく改善した。
また、00~10年の人口1万人当たりの医師の数では、日本が20・6人。欧州各国のほとんどが30~40人台であるのと比較すると医師不足が深刻といえる。米国は26・7人だった。
データが得られた国の中で、一番多かったのはキューバで64・0人、一番少なかったのはアフリカのタンザニアとリベリアで0・1人。世界の平均は14・0人だった。

2011年6月13日月曜日

中学生以下は窓口1割に 

社会保障と税の一体改革で、民主党の「社会保障と税の抜本改革調査会」がまとめた医療・介護制度の最終原案が明らかになった。医療機関の窓口で支払う自己負担割合について、中学生以下の場合は現行の2、3割から1割に軽減するなど、若者や現役世代に配慮した制度を構築するとしている。
民主党は、政府の「集中検討会議」がまとめる社会保障制度改革案に反映させるため、検討会議に提案する。年金や子育て分野などの議論も詰める。
最終原案では、医療費の自己負担割合の見直しを提起。中学生以下は1割とし、20歳未満は3割から2割に引き下げる一方で現在、暫定的に1割となっている70~74歳の負担を2割に戻すと例示している。20~69歳までは3割、75歳以上は1割とし、現行と同じ負担を求める。
窓口負担が限度額を超えた場合に払い戻しを受ける「高額療養費制度」については、高額で長期の療養が必要な場合、保険者の機能として負担軽減策を講じる。この機能を高めるため、(受診時に一定額を上乗せする)受診時定額負担制度の導入についても検討が加えられる。
介護保険制度では、保険料を支払う年齢を現在の40歳から引き下げることを提案。また、長く健康を保った場合、保険料を優遇するなどのインセンティブを考慮するとした。

2011年6月12日日曜日

睡眠時無呼吸症候群

睡眠呼吸障害の進展と心血管疾患の発生は関連していることが住民ベースの試験でわかった。これまでに行われた前向き試験では、睡眠呼吸障害が心血管疾患の発生および再発のリスクを増大することはわかっていたが、その逆の、心血管疾患の発生が睡眠呼吸障害を引き起こしたり、あるいは悪化させる原因となるのかについては明らかではなかった。米国・ボストン大学の研究で、地域に暮らす多様な背景を有する中高年2,721例を5年以上追跡し明らかになった。
研究グループは、心血管疾患歴のない40歳以上の2,721人を対象に、睡眠ポリグラフを試験開始時と5年以上経過後に行い、その間に発生した心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中など心血管疾患イベントとの関連を評価する「Sleep Heart Health Study」を行った。
2回の睡眠ポリグラフ実施間の無呼吸低呼吸指数変化との関連について、年齢、性別、人種、試験を行った病院、糖尿病歴、BMIの変化、頸囲の変化、仰臥位睡眠の割合、2回の睡眠ポリグラフ実施の期間について補正後、一般線形モデルを用いて分析した。
その結果 ●被験者は、平均年齢62歳(標準偏差:10)、57%が女性、23%が少数民族であった。 ●睡眠ポリグラフの1回目と2回目の間に心血管疾患イベントが認められた被験者は、95例であった。 ●心血管疾患が認められた群のほうが、認められなかった群に比べ、2回の睡眠ポリグラフ実施間の補正後平均無呼吸低呼吸指数の上昇が大きく、両群間の差は2.75回/時であった。 ●心血管疾患が認められた群では、認められなかった群に比べ、2回の睡眠ポリグラフ実施間の閉塞性睡眠時無呼吸指数の上昇は1.75回/時、中枢性睡眠時無呼吸指数は1.07回/時、それぞれ大きかった。
本研究で、心血管疾患の発症自体が睡眠時無呼吸症候群(SAS)を増悪させることがわかった。これまでは、SASが心血管疾患のリスクとなるという因果関係を示す追跡研究であったが、この逆の因果関係を明確に示したのは本研究が初めてである。
SASが全くない群においては、心血管疾患が発症してもSASの増悪は見られない。しかし、無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上の軽度SASが存在する群においてのみSASの増悪がみられている。このことは、心血管疾患自体はSASの発症ではなく増悪・促進因子であることを示している。しかしその機序はよくわからない。心血管疾患により呼吸コントロール状態が不安定化することや、夜間臥位にて下半身から上半身(喉頭周囲)への体液シフトなどが、心血管疾患がSASの病態増悪機序として考えられる。
さらに、肺うっ血による肺刺激受容体の刺激や、慢性の過呼吸と低二酸化炭素血症により引き起こされる二酸化炭素に対する化学受容体感受性の亢進が呼吸コントロールの不安定化を引き起こす鍵となることが考察されている。
本研究は、心血管疾患とSASとに悪循環が形成されることを示している。今後、心血管疾患発症後の循環動態の改善自体がSASの進展を抑制できるかどうかを検討することが必要である。

2011年6月11日土曜日

70-74歳医療費に税金

税と社会保障の一体改革に関し、厚生労働省は、大半を現役世代の保険料で賄っている70~74歳の医療給付費(約3兆円)に、税金を投入する方向で検討に入った。当面は給付費の15%分を入れ、現役の負担を軽減する。新たに約3800億円(13年度)が必要となるため、民主党や財務省と調整し、政府が社会保障改革案への盛り込みを目指す。
75歳以上の後期高齢者医療制度には給付費(10年度予算、11・7兆円)の5割に税金が充てられている。しかし、65~74歳の前期高齢者医療(同5・3兆円)には直接税を投入する仕組みがなく、厚労省は税を入れる制度改革を目指してきた。
しかし、財源を調達できるメドが立たず、対象を前期の中でもより医療費がかかる70~74歳に絞ることにした。制度を分断する形で、特定の年齢層だけに税を投入するのは異例のことだ。それでも財務省との調整は難航する可能性がある。
一体改革で厚労省は「現役と高齢世代の負担の公平化」を打ち出した。前期医療は、大企業の健康保険組合などが支払う納付金で大半を賄っているが、健康保険組合連合会によると、11年度予算では健保組合全体で前期医療に1兆4621億円を払う。後期医療への支出も含めると保険料収入の45%を占め、保険料率アップや健保組合の解散を招いている。
このため前期医療について、70~74歳だけでも税を投入し現役の負担を軽くすることにした。08年度の1人当たりの給付費のうち保険料で賄った額は75歳以上が約39万円なのに対し、70~74歳は約46万円。水準をそろえるには70~74歳の給付費の15%に税を充てる必要があると判断した。
高齢者の医療費について、現役の会社員らは従来もOB向けに「退職者給付拠出金」を負担してきた。しかし、08年度の医療制度改革ですべてのお年寄りを支える仕組みに変わり、支払いが急増した。

2011年6月10日金曜日

抗てんかん薬服用中の母乳哺育

抗てんかん薬(AED)服用中の母親から母乳で育てられた乳児では,認知発達になんらかの影響が及ぶのではないかと懸念されている。エモリー大学(ジョージア州アトランタ)神経学の研究では,母乳哺育中に母親がAEDを服用しているか否かにより,小児のその後の知能指数(IQ)に有意差が生じることはなかった。
今後、より大規模な集団で検討する必要はあるが,今回の研究結果は,乳児を母乳で育てたいが,AEDの服用を継続する必要のある女性にとっては朗報である。
今回の研究では,子宮内でのAED曝露が胎児の認知機能に長期的に及ぼす影響が多施設で検討された。対象は1種類のAEDを服用していた妊婦から生まれた小児199例で,対象児が3歳になったときにIQ試験を実施した。
対象児の42%が母乳で育てられていた。IQ試験の結果,母乳哺育を受けた小児と受けなかった小児でIQスコアに差は認められなかった(母乳哺育群99点,非母乳哺育群98点)。
母親が服用していたAEDはカルバマゼピン,ラモトリギン,フェニトイン,バルプロ酸であり,最近の新しいAEDの影響に関しても,今後調査が必要だ。
米国神経学会のガイドラインでは,出生障害リスクと認知機能への影響のため,妊娠中のバルプロ酸の服用を避けるよう推奨している。また,複数のAEDの併用は,単剤のみの投与より出生障害リスクが高くなることから,妊娠中に複数のAEDを服用することを避けるよう推奨している。
今回の研究は,AED服用中の妊婦の母乳哺育に関する初めての大規模試験といえるだろう。こうした薬剤の影響に関する情報がないため,これまで多数の女性が母乳を与えないよう指導されている。母乳哺育により母親と乳児は感情面で多大な便益が得られるほか,乳児で心疾患・糖尿病・肥満リスク,母親で乳がん・子宮がんリスクが低下するなどさまざまな効果がある。
また、今回の研究により,AEDが母乳に及ぼす長期的な影響については,さらなる研究が必要だと分かった。

2011年6月9日木曜日

大うつ病性障害

ピッツバーグ大学内科・小児科の研究で,ティーンエージャーを対象に各種メディアの利用と大うつ病性障害リスクとの関連を検討。音楽をよく聞く青少年では大うつ病性障害リスクが高い一方,本や雑誌などを読むことが多い者では同リスクは低かった。
今回の研究では,携帯電話を用いて,各種メディアの利用状況が調査された。
具体的には,各被験者に電話を計60回かけ,そのときに(1)テレビや映画(2)音楽(3)ビデオゲーム(4)インターネット(5)雑誌,新聞,書籍などの活字媒体—のいずれかを利用していたかどうかを尋ね,これまでの連続的な生活様式の指標とした。対象は青少年106例(大うつ病性障害46例,健康対照60例)で,2カ月にわたる調査期間中の5回の三連休を利用して電話がかけられた。
多変量解析の結果,音楽の視聴と大うつ病性障害リスクに正の相関が認められた。一方,本など活字媒体の利用との間には負の相関が見られた。それ以外のメディアとの間には有意な関連は認められなかった。
現在のところ,うつ病患者が現実から逃れるために音楽をより多く聞くようになるのか,音楽を多く聞くことで抑うつ状態に至るのかなどの因果関係については分かっていない。今回の研究結果はメディアとうつ病との関連性を理解する上で役立つだろう。読書が大うつ病性障害リスクの低下と相関することが示されたことも重要だ。米国では全体的に読書量が少なくなってきている一方,それ以外のメディアに関しては,ほぼ使用が増えている。
大うつ病性障害は,臨床的うつ病または大うつ病ともいわれ,世界各地で障害の主因となっている。米国立精神保健研究所によると,青少年期に大うつ病性障害を発症することは珍しくなく,ティーンエージャーの12人に1人が罹患すると考えられている。

2011年6月8日水曜日

末期がん患者のQOL

末期がん患者に対する化学療法では、医師はこれを継続することで良好な健康状態を維持しようとするのに対し、看護師は継続に疑念を示し、余命の有効活用を優先する傾向があることが、オランダ・アムステルダム大学の調査で明らかになった。がん治療の進歩により有効な治療法が増え、末期がん患者に対する化学療法薬投与の決定は繊細で複雑なプロセスとなっているが、最近の調査では末期がん患者への化学療法施行は増加し、「がん治療の積極傾向」と呼ばれる状況にある。医療従事者は患者の利益となる治療を提供する義務があるが、患者の自律性に重きが置かれる社会では患者利益は先験的に明らかなわけではなく、化学療法の利益と負担に関する医療従事者の考え方もほとんど知られていないという。
研究グループは、末期がん患者に対する化学療法施行時の医療従事者の経験およびその姿勢について、主に治療者としての考え方を引き出すことを目的に、面接に基づく質的調査を行った。
2010年6~10月に、オランダの大学病院および一般病院の腫瘍科に所属し、転移性がんの治療に当たる医師14人(平均年齢41歳、女性8人)および看護師13人(同:40歳、11人)に対し半構造的面接を行った。
医師と看護師は、不良な予後や治療選択肢について患者に十分な説明を試みたと述べた。また、化学療法の効果と有害事象を十分に考慮し、場合によっては治療を続けることが患者のQOLに寄与するか疑わしいこともあったと答えた。
医師、看護師ともに、患者の健康状態を良好に保つことが重要と考えていた。医師は化学療法を継続することで患者の健康を維持しようとし、患者がそれに従うことが多い傾向がみられた。これに対し、看護師は化学療法の継続に疑念を表明する傾向が強く、患者が残された時間を最大限に活用できるように配慮するほうがよいと考えていた。
治療上のジレンマや治療に対する患者の意向に直面した場合、医師は「では、もう1回だけ試してみませんか」などの妥協案を提示することを好んだ。化学療法施行中に、患者と死や臨終について語り合うことは、患者の希望を失わせる可能性があるとして、治療とは矛盾する行為と考えられていた。
末期がん患者に対し化学療法を継続する傾向は、患者と医師の「あきらめない」という態度の相互補強、および患者QOLに関する医師の広範な解釈の仕方で説明可能と考えられ、これは「治療を控えることで患者の希望を奪うのは危険」との考え方が元になっていると推察された。生命予後とQOLのバランスを取り戻すには、医師以外の医療従事者、とりわけ看護師の意見の導入が必要と考えられる。

2011年6月7日火曜日

子どもの車内事故

子ども連れでドライブに出かける機会が多い夏は、車内での事故に気をつけたい。春から初夏にかけての季節でも、車内は高温になることがあり、熱中症の危険がある。子どもだけにしないなどの注意が必要だ。
日本自動車連盟(JAF)は、「子どもの車内事故」について、インターネットで調査した。アンケートは昨年12月から今年1月にかけて行い、全国の車の利用者7048人が回答した。
「12歳未満の子どもだけを残して車を離れたことがある」と答えた人は28・2%いた。
理由は、「子どもが寝ていて、数分で終わる用事だった」「子どもが嫌がって降りようとしなかった」「わざわざ降ろすとまたチャイルドシートをするのが面倒」などが挙がった。
外が涼しく感じる季節でも、熱中症に気をつけねばならない。
JAFは2007年4月末、早朝からの車内の温度変化を調べた。最高気温は23℃だったが、昼前には運転席の温度は40℃に達した。午後2時過ぎには48・7℃になった。
短時間で戻るから、子どもが眠っているからといって、置き去りにするのは危険。
長時間屋外に駐車した後は、チャイルドシートの金具部分が熱くなっていることがある。やけどしないよう、まず大人が触ってみてから子どもを座らせるようにする。
また、アンケートでは、「子どもが車内でけがをしたり危険な目にあったりした経験がある」と答えた人が28・3%いた。
「少しの距離だからと子どもを助手席に立たせたままにしていたら、ダッシュボードに体をぶつけた」「車から降りるとき、子どもが追いかけてきたのに気づかずドアを閉めてしまい、指を挟み骨折した」「停車中に子どもが自分でサンルーフの開閉スイッチを押してしまい指を挟んだ」といった例があった。ドアやパワーウインドーに挟まれる事故が目立つ。
車内では、子どもに声を掛けたり、バックミラーで見たりして、こまめに様子を確認しよう。

2011年6月1日水曜日

腸内細菌叢

瞳の色や血液型と同じように、腸内に繁殖する細菌によってヒトを分類できることが新しい研究で判明した。研究グループによると、ヒトの腸内細菌叢(bacterial flora)には3つの型があり、存在する細菌種とその比率によって区別できるという。
研究によると、ヒトの腸には500~1,000種の細菌が生息しており、それぞれがミクロの生態系の中で互いに競合や協力しながら宿主である人体と共生的関係をもちバランスを保っている。微生物は単独ではなくコミュニティとして活動しており、宿主であるわれわれの食べるものなどにも適応しなくてはならない。
今回の研究では、ヨーロッパ諸国(デンマーク、フランス、イタリア、スペイン)居住の2人から便検体を採取し、DNAを抽出して細菌種を判定。さらに、日本人13人および米国人2人の過去のデータ、別のデンマーク人、米国人154人のデータを追加した。分析の結果、細菌叢を3つのカテゴリーに分類できることが判明。例えば、タイプ1はバクテロイデス(Bacteroides)属の比率が高く、タイプ2はバクテロイデス属が比較的少なくプレボテラ(Prevotella)属の比率が高かった。タイプ3ではルミノコッカス(Ruminococcus)属が多かった。さらに多くのデータを検討すればサブタイプ(亜型)が見つかる可能性もあるようだ。
腸内細菌叢がヒトの健康に重要な役割を果たすことが理解されはじめて以来、どれほどの細菌が存在するのかが課題となっていた。もし無限にあるのならば、その情報を利用するのは不可能である。今回の研究は、細菌叢のバリエーションが無限ではないことを明らかにする上で大きな飛躍にとなるものだ。研究グループによると、年齢、性別、体重などの特徴と腸内細菌叢の型に相関があるとの証拠は得られなかったが、検体をすべて検討すると年齢、性別、体重と細菌の特定の遺伝子マーカーとの間に相関がみられ、いずれはこのような情報から、疾患や疾患になりやすさを知る上で活用できる可能性があるという。

2011年5月31日火曜日

人工膵臓

1型糖尿病患者の血糖コントロールを向上させる人工膵臓について、日常生活に模した臨床試験を行った英国の研究で、血糖コントロールの改善と夜間危険性の高い低血糖リスクが低減したことがわかった。
クローズドループ・システム(closed loop system)として知られる人工膵臓は、既存の糖尿病管理法であるインスリンポンプと持続的血糖モニターを合体させ、コンピュータ制御で血糖状態に応じたインスリン量を計算し、補充を行うもので、実現化を目指すプロジェクトがいくつか進行している。
英ケンブリッジ大学代謝科学研究所は今回、午後7時に自宅で夕食を取る設定と、午後8時半に飲酒を含む夜間外食をする設定の2タイプの生活シナリオを準備。日ごろインスリンポンプ療法を用いている1型糖尿病患者24例を半数ずつ2つのシナリオに割り付け、夜間の血糖状態を評価した。
自宅食は60グラムの炭水化物を含む中用量の食事とした。対象の半数には夜間人工膵臓を装着、残り半数はインスリンポンプを継続させ、数週間後に交替させた。夜間外食は100グラムの炭水化物を含む高用量の食事とし、予測しない低血糖を起こしうるアルコール(白ワイン)を一緒に摂取させた。食後、対象の半数には人工膵臓を装着し、残り半数はインスリンポンプを継続してもらった。いずれの設定も夜間に2度の血糖値測定を行った。
その結果、自宅食設定では人工膵臓によって血糖値が目標域に収まる全時間が15%(中央値)延長することが判明。外食設定でも血糖値が良好に保たれる時間が28%(同)延長していた。2つの設定を合わせると、血糖が良好に管理コントロールされる時間は22%(同)延長していた。夜間就寝中の低血糖は、人工膵臓装着者では真夜中以降の発現は確認されなかった。重篤な低血糖は4例発生したが、うち3例は装置装着前に補充されたインスリンに起因するものと考えられた。
自己免疫疾患である1型糖尿病では、血糖値をモニタリングしながら微妙なバランスを保つようインスリンを補充する必要があり、有効な人工膵臓は患者の人生を飛躍的に改善させることが期待される。
人工膵臓はまだ揺籃期ではあるが、今回の研究結果は良いニュース以上のものであり、クローズドループ・システムの進化といえるだろう。

2011年5月30日月曜日

瞼裂斑

紫外線が原因の1つとされる疾患で白目の一部が黄色く濁り、シミのような症状が出る瞼裂斑(けんれつはん)。同症状の有病率は約6割、潜在的なものも含めると約8割に達する一方で、認知度はわずか0・7%にとどまっている。眼の不快症状にも影響する身近な眼疾患であるという認識を持つことが重要。同症状のある人では白内障発症のリスクが高いことも最近の研究で明らかになってきているため、早い時期からの正しい紫外線対策が求められる。
瞼裂斑とは、黒目のすぐ脇の白目部分に生じる黄色や褐色がかった隆起性の病変で、ありふれた病変のため眼科医のなかでも非常に軽視されており、カルテへの記載もない場合が多い。だが、研究的にも臨床的にも瞼裂斑は重要な病気であることが認識され始めているという。
紫外線関連疾患として白内障や翼状片は広く知られているが、いずれも大人になってから発症する。一方で、瞼裂斑は早い人で10代から起こる。
瞼裂斑の成因は、たん白糖化最終産物の沈着やD-アミノ酸を含むたん白質の凝集物などが挙げられ、充血や局所的なドライアイの原因になることも少なくない。このほか、翼状片の前駆病変となる可能性もある。
若いうちからの紫外線対策が瞼裂斑に関してはとくに重要。正しい紫外線対策が瞼裂斑、さらには白内障の予防につながる。UVカットコンタクトレンズとサングラスの併用が最も有用である。

2011年5月28日土曜日

加齢性難聴

カネカは、信州大学大学院医学研究科の研究チームと共同で、健康機能食品素材として知られる還元型コエンザイムQ10(CoQ10)に加齢性難聴に対し進行抑制効果のあることを確認した。老化モデルマウスを用いた実験で同素材配合のエサ摂取群と含まないエサ摂取群を、音刺激を脳波で調べる方法により比較。同素材摂取群に顕著な障害低減効果がみられた。また幼若期から摂取させると、老化度合の遅くなることが示されたとしている。
実験では、老化促進モデルマウスSAMP1を用いた。生後1カ月の幼若期、成熟期(7カ月目)、高齢期(13カ月目)それぞれに還元型CoQ10を0・3%混ぜ合わせたエサに調整し、自由摂取させた。また同素材を含まない通常のエサを摂取する対照群と、聴性脳幹反応法(音刺激により惹起させる脳幹の脳波測定法)と呼ばれる難聴の診断に使われる方法により、19カ月まで追跡し比較した。
同素材を摂取した成熟期マウスでは13カ月齢、高齢期も調べた全てのマウスの19カ月齢でそれぞれ中低音域の聴力を維持することが確認された。
また幼若期から摂取させたマウスでは、13カ月齢で高音域を良好に聞き分け、中低音域もほぼ良好な聴力を維持。19カ月齢でも若干障害はでるものの、各音域の聴力を保っていた。さらに老化の進行自体が抑制されている新知見も得られた。
一方、対照群では、13カ月齢から中低音域障害が起こり、19カ月齢にいたるとほぼ聴力を失ってしまった。
CoQ10は、酸化型をヒトが摂取すると体内で還元型に変換される。ところが加齢や病気の発症により、この変換力が低下する。還元型CoQ10素材は、同社が世界に先駆け開発したもので、これまでにモデルマウスの実験で老化を遅延させる機能がわかっている。
同社では、難聴という加齢にともなう問題に還元型CoQ10のもつ機能が対応し得る可能性が示唆されたとして、抗加齢分野でのエビデンスを積み、さらなる検証データの追求を進める考え。

2011年5月21日土曜日

スクリーンタイム

テレビ視聴やゲーム遊びなどのスクリーンタイムの長い子どもは、よく運動をする子どもに比べ眼の動脈が狭窄(狭小化)していることが、オーストラリアの研究で報告された。研究を実施したシドニー大学は、網膜血管を見れば、身体の他の部位、特に心臓で起きていることわかると述べるとともに、成人では網膜動脈の狭窄が高血圧および心疾患リスクの増大を示すシグナルとなると指摘している。
今回の研究では、シドニーに住む6歳児1,492人を対象に、運動をしている時間と座った姿勢で娯楽をする時間を追跡するとともに、眼底の脈管構造(vasculature)のデジタル写真を撮影して血管幅の平均値を算出。全体では、小児のスクリーンタイムは平均1.9時間、運動する時間は36分であったが、屋外で過ごす時間が1日平均30分未満の小児に比べ、1時間以上の小児は血管幅が広かった。スクリーンタイムを1時間半以上過ごす小児はさらに網膜血管に有害な影響のみられる比率が高いことがわかった。1時間のスクリーンタイムによって生じる狭窄は、収縮期(最大)血圧に10 mmHgの上昇をもたらすレベルに相当するものであった。
どのくらい運動をすれば十分なのかについては、今回の研究結果からは明確ではないが、1日1時間のスクリーンタイムを運動に置き換えれば、網膜血管への好ましくない影響を最小限に留めるのに有効と考えられるようだ。
今回の研究は、運動不足の影響について新しい方法で検討したもの。網膜血管に影響を及ぼしているのは、テレビやパソコンの使用ではなく、あくまで運動不足である点を親は認識する必要があろう。

2011年5月20日金曜日

カルシウムサプリメント

骨の劣化予防のためにカルシウムサプリメントを摂取する女性では、心疾患リスクが高いことが、ニュージーランドのオークランド大学の研究でわかった。
カルシウムサプリメントの利用については専門家の間でも見解の一致をみておらず、今回の結果は、サプリメント推奨に大きな影響を及ぼす可能性が高い。
また、研究結果から、カルシウムサプリメント利用の再考が勧められる。食品によるカルシウム摂取には心疾患リスク増大は認められていないことから、カルシウムは食事から摂るよう推奨される。
同研究グループによる最近の分析では、ビタミンDを併用せずにカルシウムサプリメントを利用する女性は、心臓発作リスクが27~31%高いことがわかった。
今回の分析では、米国政府支援による大規模研究「女性の健康イニシアチブ(WHI)」参加女性のうち、登録前にカルシウムサプリメントを摂取していなかった1万6,718人を対象に検討。その結果、カルシウムサプリメントとビタミンD摂取群に割り付けられた女性には、心血管障害(特に心臓発作)リスクに13~22%の増大がみられた。対照群には変化がなかった。さらに約3万人の女性を対象とした未発表の13研究のデータを追加すると、カルシウムサプリメント摂取により心臓発作リスクが25~30%、脳卒中が15~20%増大した。
カルシウムが動脈硬化に関連していることを考えれば、この結果は生物学的には理にかなったものだと言える。しかし、今回の研究からは明確な結論を導くことはできない。骨が脆弱で、カルシウムを摂取する十分な理由のある女性は、恐れずに摂取すべきであろう。いずれにしろ、カルシウムサプリメントとビタミンDの併用による有害性については、さらに研究を重ねる必要がある。

2011年5月18日水曜日

アルツハイマー病

青森県弘前大の研究グループは、アルツハイマー病の原因とされる、たんぱく質だけを攻撃する抗体を開発し、発症予防の可能性があることを突きとめた。
アルツハイマー病は、原因とされるたんぱく質が脳に沈着、凝集し、記憶障害を起こすと予想されている。
研究グループでは、このたんぱく質だけに反応する抗体を作り出すことに成功し、実験で週1回ずつ計36週にわたり、記憶障害発症前のマウスに投与し、投与しないマウスと比較したところ、記憶学習能力が保たれていることが分かったという。この結果、アルツハイマー病の原因が、このたんぱく質にあることも裏付けられたとしている。
マウスの段階だが、アルツハイマー病は予防可能な病気と考えていいのかもしれない。

2011年5月17日火曜日

長寿の秘けつ

くよくよ悩まず陽気に過ごし,あまり働きすぎない。これは長寿のための適切なアドバイスのようだが,カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)心理学の研究で,そうではないどころか,その逆であることが分かった。
今回の結果のように,研究者やマスコミが当然と思い込んでいることがしばしば覆されるのには,本当に驚かされる。また,最も意外だったのは,幼児期に見られた性格上の特徴と社交性により,数十年後の死亡リスクを予測できたこと。
今回の研究は,1921年にスタンフォード大学で心理学の教鞭を執った故Louis Terman教授らが,当時10歳前後であった頭脳明晰な小児1,500人以上を追跡した研究が基になっている。対象児は生涯追跡され,家族歴と家族関係,教師と親による性格の評価,趣味,ペットの有無,仕事上の成功,学歴,兵役の経験など膨大な情報が収集された。その後も研究者らが調査・収集してきたデータを検証し,取捨選択・補足して今回の結果に至った。
疾患に罹患しやすい人や回復が遅い人,早世する人がいる一方で,同じ年齢でも元気な人がいるのは明らかで,これまでに,不安,運動不足,神経を使う仕事,向こう見ずな性格,無信仰,交際嫌い,社会集団の崩壊,悲観主義,医療アクセスの悪さ,A型性格の行動パターンなど,あらゆる危険因子が同定されていたが,長期にわたり十分に検討された因子はなかった。つまり,同一人物を生涯にわたり追跡した研究は存在しなかった。
そこで今回の研究では,Terman教授らの研究の参加者を対象に,健康と長寿に関する因子を追跡することを計画した。
その結果,幸福と健康に関する新たな理解が得られた。中でも特に意外であったのは,参加者のうち,小児期に最も陽気で最良のユーモアセンスを持ち合わせていた人が,あまり陽気ではなく,冗談を言う性格でもない人と比べ,平均的に短命であったとする知見である。つまり,用心深く粘り強い人ほど,良好な健康状態を維持し,長生きしていた。
その理由の1つとして例えば,陽気で能天気な小児は,その後の人生において健康を危険にさらすような行動を取りやすい点を指摘している。今回の研究によると,楽天的であることは危機的状況では時に役に立つが,なんでもうまくいくという考え方に偏り過ぎると,日常生活でかえって危険を招く可能性がある。そうした考え方の人は,健康や長寿に重要な事柄に対しても軽視しがちであるという。一方,用心深く粘り強い性格は,長期にわたってプラスに働くとされる。幸福は健康の真の源ではないことが分かった。幸福と健康とは,両立し合うもののようだ。
今回の知見の多くは,世間一般の通念と矛盾するところが多い。例えば,以下のような知見が得られている。
 (1)結婚は男性の健康にとってプラスになるかもしれないが,女性にとってはさほど関係ない。堅実な結婚をした男性,すなわち婚姻生活を長く維持できた男性は,70歳以上まで生きる傾向にあったが,離婚男性で70歳以上まで生きた人は3分の1に満たなかった。さらに,一度も結婚歴のない男性は,再婚した男性よりも長生きし,離婚男性と比べた場合,その傾向は有意であったが,堅実な結婚を維持した男性ほど長生きしなかった
 (2)女性の場合,離婚が健康に及ぼす影響は,男性よりもはるかに小さい。離婚後に再婚しなかった女性と堅実な結婚を維持した女性の寿命は同等であった
 (3)「働きすぎず,ストレスをつくらない」というのは,健康と長寿のためのアドバイスとしてふさわしくない。研究の参加者のうち,最も健康で長生きしたのは,仕事に熱心に打ち込んだ者であった。男女とも,のんびり気楽に過ごした人より生産的な生活を維持した人の方が明らかに長生きしていた
 (4)公教育の開始が早過ぎること,つまり6歳未満で1年生になることは,早世の危険因子である。遊ぶ時間を十分に持ち,級友とかかわり合えることは小児にとって非常に重要である
 (5)ペットと遊ぶことは長寿に関係しない。ペットから安らぎを得ることは時々あるが,友人の代用にはならない
 (6)退役軍人は長生きできない場合が多いが,意外なことに,戦争による心理的ストレス自体が主要な健康リスクであるとは言えない。むしろ問題は,従軍後に不健康な生活習慣に陥ることである。戦争という衝撃的な体験の意味を見いだし,安全な世界を再度実感できた者は,たいてい健康な生活に戻る
 (7)愛されている,気遣ってくれる人がいると実感している者では幸福感を抱きやすいが,そのことは長寿には影響しない。健康的な人になるか,不健康な人になるかは,その人のかかわる集団によって決まることが多い
健康的な生活を始めるのに遅過ぎるということはない。最初の第1歩は,健康的な生活を送るためにしなければならないことのリストを捨て,過剰な心配の連鎖をやめることだ。食事においてω-6脂肪酸とω-3脂肪酸をどのように取るかなど,健康と長寿に役立つとされる細々としたことを考え過ぎると,重要な道筋からかえってそれることになる。自分にとっての健康的な生活パターンを長期的視点から思い描くことができれば,今からそのパターンに近づけることができるようだ。
変化は少しずつ積み重ねていくものととらえるべきである。一夜にして自分自身を大きく変えることはできないが,小さな行動の変化を段階的に積み重ねていくことで,やがては長寿への道を開くことができるのかもしれない。

2011年5月16日月曜日

大量飲酒と膵がん

米国がん協会(ACS)疫学研究で、大量飲酒者,特に蒸留酒を1日3杯以上飲む人では,非飲酒者と比べて膵がんで死亡するリスクが有意に高いことがわかった。
是正可能なライフスタイル因子である飲酒は,口腔,咽頭,喉頭,食道,肝臓,大腸,乳房などのがんと因果関係があることが知られている。膵臓との関連では,大量の飲酒が急性または慢性の膵炎を引き起こすことが知られているが,膵がんについては決定的な関連は示されていない。
そこで,今回の研究では,ACSが支援しているがん予防研究のデータ(30歳以上の米国人成人約100万人を対象)を用い,飲酒と膵がんの関連について検討した。
全参加者(男性45万3,770例,女性57万6,697例)のうち,男性の45.7%,女性の62.5%が非飲酒者だった。男性のみと男女混合の解析を行ったところ,非飲酒者と比べて飲酒量が1日3杯の群と4杯以上の群で膵がんによる死亡リスクが有意に高いことが分かった。女性のみの解析では,1日4杯以上の群で同リスクが有意に高かった。
また,アルコール飲料の種類別に見ると,母集団全体では,非飲酒者に比べてウイスキー,ブランデー,ジン,ラム酒などの蒸留酒を1日3杯以上飲む人で,膵がんによる死亡リスクが高いことが分かった。喫煙非経験者または喫煙経験のある非喫煙者に限って解析すると,蒸留酒を1日2杯以上飲む人で同リスクが高かった。しかしこれらの関連は,ビールとワインでは認められなかった。
喫煙非経験者(男女混合)の膵がんによる死亡リスクは,1日3杯以上の飲酒者で非飲酒者より36%高かった。喫煙経験のある非喫煙者では,喫煙歴などで調整後も同リスクは16%高かった。
今回の研究により,飲酒量,特に大量飲酒が,米国のがん死因で4番目に多い膵がんの独立した危険因子であるとするこれまでの仮説が強く裏付けられた。

2011年5月15日日曜日

がん患者増加

米国がん協会(ACS)は,肺がんや乳がん,大腸がんなどライフスタイルや経済発展に伴う行動様式の変化に関連するがんは,今後,広く予防策を講じなければ,発展途上国で増加の一途をたどるとの見通しを発表。全世界では,2030年までにがん患者,死亡者数が倍増すると予測している。
国際がん研究機関によると,2008年における全世界の新規がん患者数は1,270万人で,そのうち560万人は先進国,710万人が発展途上国で発生している。2008年のがん死亡者数は,全世界で760万人と推定され,内訳は先進国で280万人,発展途上国では480万人であった。世界のがん疾患負担は,2030年までにがん患者数2,140万人,がん死亡は1,320万人と,約2倍に膨らむと見込まれている。
患者数や死亡者数の増加は,人口増加や人口の高齢化など人口動態の変化によるものだけでなく,喫煙や不健康な食生活,運動不足など経済発展に伴うライフスタイルや行動様式の変化により,さらに悪化する可能性がある。
今回の報告では,先進国と発展途上国のがん罹患率の比較から,両者で発生しているがんの種類の違いが浮き彫りになっている。
先進国において,2008年に最も多く発生した上位3つのがんは,男性では前立腺がん,肺がん,大腸がん,女性では乳がん,大腸がん,肺がんだった。一方,発展途上国においては,男性では肺がん,胃がん,肝がん,女性では乳がん,子宮頸がん,肺がんだった。
発展途上国ではライフスタイルの変化によって,肺がんで死亡する患者が増加している。欧米のほとんどの国で男性の肺がん死亡率は低下しているが,中国やアジア,アフリカの一部の国では上昇しており,これらの国々では,早期からの喫煙習慣で喫煙率が上昇し続けている。
女性の肺がん率は,米国においては頭打ちとなっているが,多くの国で上昇しており,その傾向はスペインやフランス,ベルギー,オランダで顕著である。特に若年女性の罹患率が上昇していることから,これらの国々における女性の肺がんは,大規模な介入を実施しなければ,今後数十年にわたり増え続ける可能性が示唆された。
大腸がんの罹患率は米国では減少しているが,スペインや東南アジア諸国の多く,東欧諸国など歴史的にはリスクが低かった国々において,急激に上昇している。
今回の報告の中には,がんが大きな問題となっているアフリカについて,特別セクションが盛り込まれた。国際がん研究機関によると,アフリカにおける2008年のがん新規患者数は68万1,000人,がん死亡は51万2,400人だった。人口の高齢化や人口増加,さらに喫煙や不健康な食生活,運動不足など,経済発展や都市化に伴う行動やライフスタイルの変化により,2030年までに新規患者数は128万人,死亡は97万人に倍増すると見込まれている。
報告書は,アフリカでは資源不足やHIV/エイズ,マラリア,結核といった感染症など,差し迫った公衆衛生上の問題が山積していることから,がんの社会負担が増大しているにもかかわらず,がん対策の優先順位は低いと指摘している。
アフリカでは,がん検診制度などの医療サービスが欠如し,初期症状に対する市民や医療従事者の理解度が低いために,がんが進行した段階で診断されることが多い。
また,がん診断後の生存率も先進国に比べて低い。例えば,乳がんの5年生存率は,米国では90%であるのに対して,ガンビアやウガンダ,アルジェリアでは50%以下である。
喫煙は世界のがん死亡原因の20%を占め,最も予防効果の高い危険因子だが,アフリカのがん死のうち,喫煙によるものは6%にすぎない。喫煙の影響が少ないことは,アフリカではまだ喫煙がそれほど流行していないことや,女性の喫煙率が低いことを反映したものと考えられる。しかし,経済発展に伴うライフスタイルの変化や,たばこ産業によるアフリカを対象としたマーケティングの拡大などにより,多くのアフリカ諸国ではたばこ消費量が増加している。特に,10歳代の喫煙率の増加は重大な懸念材料である。
Global Youth Tobacco調査によると,アフリカの一部では,少年の喫煙率が成人の喫煙率より高い国もあるとされている。
アフリカの大半の国々は,たばこ規制枠組み条約を批准しているが,ガイドラインに沿って禁煙プログラムを実施している国はほとんどない。
2008年における760万人のがん死亡例のうちおよそ260万人,すなわち1日当たり7,300人の死亡は,喫煙や食生活,感染症や飲酒など,既知の危険因子を回避することで,予防可能であったという。
がん征圧に向けた知識を世界各国や地域の能力および経済の発展段階に応じた方法で応用することにより,次の20~30年間にがん死亡を減らすことができるかもしれない。そのためには,政府や公衆衛生機関,援助資金供給者,民間部門が,国や地域レベルでのがん征圧プログラムを世界規模で開発,導入する必要があろう。

2011年5月14日土曜日

肺がんの予測マーカー

足指の爪のニコチン値は喫煙歴とは独立した肺がんの強い予測因子であると,米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループが発表した。
同グループは,男性の医療専門家の追跡調査で1988〜2000年に肺がんを発症した210例とマッチさせたコントロール630例を対象に研究を実施。1987年に採取した足指の爪サンプルのニコチン値と肺がんとの関係を検討した。
その結果,足指の爪の平均ニコチン値は症例群が有意に高値だった。ニコチン値の最低五分位と比較した最高五分位の肺がんの相対リスクは単変量解析で10.50,喫煙歴の報告から喫煙指数を補正した多変量解析でも3.57と有意に高かった。

2011年5月12日木曜日

ベリー類

ハーバード大学公衆衛生学部(ボストン)の研究で、ベリー類の摂取によってパーキンソン病(PD)の発症リスクが低減され,さらに男性ではリンゴやオレンジなどフラボノイド含有率の高い食品の摂取によって低減効果が高まることがわかった。
研究では,男性4万9,627例と女性8万171例を対象に,質問票とデータベースを用いて算出したフラボノイド摂取量と,PD発症リスクとの関係を分析。この研究には20~22年間に及ぶ追跡調査を伴っている。なお,フラボノイド摂取量に関しては,含有率が最も高い紅茶,ベリー類,リンゴ,赤ワイン,オレンジ(果物と果汁)を対象に,品目別に分析された。
その結果,研究期間中にPDを発症したのは782例だった。そのうち,男性におけるフラボノイド摂取量の最高位20%では,最低位20%よりもPD発症率が約40%低かった。一方,女性ではフラボノイド摂取量とPD発症率との相関関係は認められなかった。しかし,フラボノイドに関するサブ解析によると,男女とも主にベリー類によるアントシアニンの習慣的な摂取と,PD発症率低下との間に有意な相関関係が認められた。
この研究は,フラボノイドとPD発症リスクとの相関関係についてヒトを対象に分析した初めてのもの。今回の結果から、フラボノイド,特にアントシアニンを含む一連の食物に,神経保護作用があることが示唆された。

2011年5月11日水曜日

コーヒーの効能

コーヒーの摂取により脳卒中のリスクが低下する可能性があることが、スウェーデンのグループの研究でわかった。
これまでの研究では,コーヒーの摂取と脳卒中発症との関係は一貫していない。同グループは,スウェーデンの心血管疾患やがんの既往のない女性3万4,670例を前向きに追跡し,コーヒー摂取と脳卒中発症との関係を検討した。
平均10.4年の追跡で1,680例に脳卒中の発症が確認された(脳梗塞1,310例,脳出血154例,くも膜下出血79例,不明137例)。他の危険因子を調整した結果,コーヒーの摂取は脳卒中全体,脳梗塞およびくも膜下出血の有意なリスク低下と関係していた。脳出血については有意なリスク低下は見られなかった。
1日のコーヒー摂取1杯未満を参照(1.00)とした脳卒中全体の相対リスクは1〜2杯が0.78,3〜4杯が0.75,5杯以上が0.77だった。コーヒー摂取と脳梗塞の関係は喫煙,BMI,糖尿病または高血圧歴,アルコール摂取によって変わることはなかった。

2011年5月10日火曜日

加糖飲料

インペリアルカレッジ(ロンドン)公衆衛生学部が,2,500人を超える英国人および米国人のデータを用いて横断的研究を行った結果,加糖飲料の過剰摂取が血圧上昇と直接的に関連することが分かった。
心疾患は世界で最も多い死亡原因で,高血圧はその主要な危険因子として知られている。例えば,血圧値が135/85mmHgの人では,115/75mmHgの人と比べて心筋梗塞や脳卒中のリスクが2倍高い。
今回行った研究では,1日当たりの加糖飲料の摂取量が1缶(355mL)増えるごとに,収縮期血圧(SBP)が平均で1.6mmHg,拡張期血圧(DBP)が同0.8mmHg上昇することが示された。また,体重や身長などの因子で調整した後も,この差は統計学的に有意であった。
今回,加糖飲料の過剰摂取が血圧を上昇させる機序については検討されなかった。しかし,研究者らは、加糖飲料の摂取によって血中尿酸値が上昇し,一酸化窒素(NO)活性が低下することで,血圧の上昇がもたらされるのではないか」と考察している。
また,加糖飲料の摂取と血圧上昇との関連は,糖分だけでなく塩分を過剰に摂取している人でも強かったことから,塩分の過剰摂取により高血圧リスクが高まることは既に知られているが,糖分の摂取量についても注意すべきことが示唆された。
今回の研究では、国際研究(INTERMAP)に参加した米国人および英国人2,696人(40~59歳)のデータを用いて加糖飲料,ダイエット飲料,糖類(フルクトース,グルコース,スクロース)と血圧値との関連について検討した。これらのデータには,平均3週間の追跡期間中に4回行われた24時間以内に摂取した飲食物に関する調査への回答,2回採取された尿サンプル,8回測定された血圧値のデータが含まれた。
その結果,加糖飲料の摂取は血圧に直接的な影響をもたらすことが分かった。一方,ダイエット飲料の摂取と血圧低下との関連が認められたが,一貫したデータは得られず,その関連も弱かった。
さらに,加糖飲料を多く摂取する人には,栄養の偏った食事を摂取する人が多い傾向が認められた。1日に1本以上の加糖飲料を摂取している人では,摂取しない人に比べて糖分摂取量が多いだけでなく,摂取カロリーが平均で1日当たり397kcal高く,食物繊維やミネラルの摂取量は少なかった。
加糖飲料を大量に摂取する人では健康的な食事を取っている割合が低いようだ。このような人は食品からのカリウムやマグネシウム,カルシウムの摂取量が少ない。今回の研究結果だけで加糖飲料が血圧を上昇させるとは断定できないが,加糖飲料を飲むなら適量にすることが勧められる。

2011年5月9日月曜日

パイロット

ブリティッシュ・ミッドランド航空(ロンドン)が,英国の民間航空会社に勤務するパイロット約1万5,000人を対象に心血管疾患(CVD)の危険因子の保有率について後ろ向き研究で検討した結果,パイロットでは一般人口に比べて喫煙者や肥満者が大幅に少なく,CVD危険因子の保有率が低かった。
今回の研究は航空機の乗務員を対象にCVD危険因子の保有率について検討した最大規模のもの。英国でパイロットの免許を行使する際に求められる医学的適正の認定書を保持する1万4,379人(女性805人)を対象に,BMI,過体重および肥満,喫煙,高血圧,糖尿病などのCVD危険因子の保有率を調べ,一般人口の保有率と比較した。
その結果,平均BMIは一般人口に比べてパイロットで大幅に低かった。しかし,男性パイロットでは,過体重(BMI 25~30)の割合は一般人口と同様に加齢とともに増加し,25歳未満および35~64歳の年齢層では一般人口よりも高い傾向が認められた。一方,女性パイロットでは,過体重の割合は一般人口よりも低い傾向が認められた。
全パイロットにおける肥満(BMI 30超)の割合は,一般人口に比べて大幅に低かった。例えば,25~34歳の年齢層における肥満の割合は,一般人口の21.0%に対してパイロットでは8.3%であった。
パイロットの喫煙率を見ると,最も喫煙率が高い年齢層は,男性が25~34歳(10%),女性が25歳未満(8%)であった。ただし,全体の喫煙率は一般人口の約3分の1とはるかに低かった。
高血圧の割合は,25歳未満および35~44歳では一般人口よりも高く,45~54歳および55~64歳では一般人口よりも低かった。
なお,糖尿病に罹患している場合は民間航空会社のパイロット免許は保持できないため,今回検討の対象となったパイロットで糖尿病と判明したのは男性で0.2%,女性では皆無であった。
さらに,パイロットは一般的に社会経済的地位が高いとされているため,社会経済的因子の影響を調整するために一般人口のうち,所得が最高五分位の集団と比較した。その結果,同集団と比べても,パイロットでは喫煙率と肥満率が大幅に低かった。
近年,世界中の航空当局の間で,民間のパイロットにおける心血管リスクプロファイルを重視する傾向が強まっているという。
今回の研究結果では,喫煙と肥満という2つの重要なCVD危険因子の保有率が,英国のパイロットでは一般人口よりもはるかに低いことが示された。過体重の割合はパイロットで高かった原因として(1)坐位時間が長い職務内容(2)不規則なシフト勤務パターン(3)外泊の機会が多いために食事内容が不健康になりがちである—などが考えられた。

2011年5月8日日曜日

2型糖尿病

インスリン抵抗性および2型糖尿病の発症には、免疫システム反応のゆがみが関与している可能性が新しい研究でわかった。カナダ、トロント総合病院では、肥満およびインスリン抵抗性患者が有し、非インスリン抵抗性の肥満者はもたない免疫システム抗体を同定。また、免疫システムを改変する薬剤が高脂肪食を与えられたマウスでの正常な血糖値維持に役立つことを発見した。
2型糖尿病では、身体がインスリンを効果的に利用できないため、膵臓はインスリン産生を増加させるが、結果的に必要な量のインスリン産生ができなくなる。原因はまだ明らかではないが、家族間でみられることから遺伝的要因があると考えられる。体重増加と強く関連しているが、過体重のすべての人が発症するわけではなく、研究者らは別の因子を探索している。
過剰な体重が炎症に関連し、これが免疫システム反応のゆがみの原因と考えられる。腹部脂肪が拡大するとスペースがなくなり、脂肪細胞がストレスを受けて炎症を生じ、ついには細胞が死に至り、マクロファージ(大食細胞)がこれを掃除する。免疫系システム細胞のT細胞やB細胞も、ストレスや細胞の死に反応する。B細胞は外部からの異物に対する抗体を作るものだが、肥満の場合、脂肪に対する抗体を作り、それが脂肪細胞を攻撃してインスリン抵抗性とし、脂肪酸の処理を妨げる。この脂肪細胞に対する猛攻が、2型糖尿病だけでなく、脂肪肝、高コレステロール、高血圧にも関連しているという。
今回の研究では、インスリン抵抗性でないマウスに高脂肪食(60%が脂肪)を与えた。6週間目、7週間目に、マウスに抗CD20抗体(非ホジキンリンパ腫治療薬リツキシマブ:B細胞表面のCD20 に結合し、B細胞を破壊する)を投与。投与マウスはインスリン抵抗性を発症せず、血糖値も正常だったが、対照群のマウスはインスリン抵抗性となった。
また、32人の肥満者(半数はインスリン抵抗性)から血液試料を採取。インスリン抵抗性者が有する抗体セットは、非インスリン抵抗性者の抗体と異なっていた。肥満で非インスリン抵抗性の人が有する保護的抗体をもとに、2型糖尿病ワクチンが開発できる可能性がある。ただし、用いられたマウスは雄で、被験者も男性であったことから、この知見が女性にも当てはまるかどうかは不明」としている。さらに、抗CD20抗体は免疫システムを低下させ、重大な副作用を生じる可能性がある点も指摘。他の治療薬があるので、この薬剤が2型糖尿病に用いられるかどうかは確信できない。しかし、免疫システムの構成成分が2型糖尿病発症に寄与しているならば、別のよりよい治療法につながるかもしれない。

2011年5月7日土曜日

避難生活

精神的負担などから睡眠不足が続くと交感神経が緊張状態となり、血圧の上昇を招く。さらに脱水などから血が固まりやすくなり、脳卒中や心筋梗塞の原因となる。
インフルエンザや感染性胃腸炎などの感染症も要注意。また、がれきの撤去や家屋の片づけの際、乾燥したヘドロが空気中に舞い、細菌や化学物質を吸い込むことで肺炎を発症する恐れもある。
粉じんが多い場所を避け、マスクを着用するよう心がけねばならない。
精神面の影響も心配されている。プライバシーが保たれないことや、余震などによるストレスが大きい。避難者同士で炊き出しなどの作業をすることを通じて、自然と愚痴を言い合えるような運営の工夫が欠かせない。

2011年5月6日金曜日

子宮頸がんワクチン

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン接種について、3回の接種を標準スケジュールの初回接種0・2・6ヵ月ばかりでなく、0・3・9ヵ月や0・6・12ヵ月で行っても、効果は非劣性であることが、米国・ワシントン州シアトルで行われた無作為化非劣性試験で確認された。
研究グループは、2007年10月~2010年1月にかけて、ベトナム21ヵ所の学校に通う11~13歳の女生徒903人について、オープンラベルクラスター無作為化試験を行った。研究グループは被験者を無作為に、HPVワクチンを「標準接種(0・2・6ヵ月)」「0・3・9ヵ月」「0・6・12ヵ月」「0・12・24ヵ月」のスケジュールで接種する4群に割り付けた。
3回目接種後1ヵ月に血清抗HPVの幾何平均抗体価(GMT)を調べ、標準接種に対する非劣性試験を行った。各接種群GMT値の標準接種群GMT値に対する割合を調べ、95%信頼区間の下限値が0.5以上であれば非劣性が認められると定義した。
結果、標準接種群の3回接種後のGMT値は、HPV-16が5808.0、HPV-18が1729.9だった。それに対し、9ヵ月スケジュール群のGMT値はそれぞれ5368.5と1502.3、12ヵ月スケジュール群はそれぞれ5716.4と1581.5と、いずれも標準スケジュール群に対する非劣性が認められた。
一方で、24ヵ月スケジュール群については、3692.5と1335.7で、標準スケジュール群に対する非劣性は認められなかった。
このベトナムの青年期女児において、HPVワクチン投与は標準または選択スケジュールにおいても、免疫原性、忍容性ともに良好であった。標準接種法(0・2・6ヵ月)と比較して、2つのスケジュール法(0・3・9ヵ月、0・6・12ヵ月)は、抗体濃度について非劣性であった。

2011年5月5日木曜日

低用量アスピリン

低用量アスピリン療法は上部消化管出血リスクを、非投与群との比較で約2倍に増大すること、またそのリスクは、クロピドグレル、経口抗凝固薬、NSAIDs、経口ステロイド大量投与との併用でさらに上昇することが、スペイン薬剤疫学研究センターの研究により明らかにされた。心血管イベントの2次予防として現在、低用量アスピリン単独ならびにクロピドグレル併用療法は標準療法として行われている。しかし臨床試験により、各療法の上部消化管出血リスク増大との関連および併用によるさらなるリスク増大のエビデンスが示されていた。研究では、一般集団における同療法またその他胃粘膜に対し有害作用を有する薬剤の影響について評価を行った。
研究グループは、英国プライマリ・ケアを担う開業医により約300万人の患者データを抽出し、コホート内症例対照研究法にて解析を行った。
2000~2007年に上部消化管出血リスクと診断された40~84歳の患者2,049例をコホート群とし、対照群は年齢、性、暦年をマッチさせた20,000例で、上部消化管出血と低用量アスピリン(75~300mg/d)、クロピドグレル、その他併用薬との関連、相対リスク(RR)を評価した。
その結果、低用量アスピリン療法(75~300mg/日)は上部消化管出血リスクを約2倍に増加させることがわかった。 
さらに、アスピリン単独群に比較して、クロピドグレル併用で2倍、抗凝固療法で2倍、非ステロイド系消炎鎮痛剤で2.5倍、ステロイドで4倍も増大することがわかった。
これまでに、一般集団における抗血小板薬の併用療法も含めた十分な消化管出血リスクの検討はなされていなかった。
上部消化管出血は一般集団の1000名あたり、年間0.5-1件発生すると推定されている。 したがって、アスピリン投与で年間1-2名、クロピドグレルや抗凝固療法の併用で2-4名発生することになる。 
アスピリンを含めたNSAIDs潰瘍の治癒および予防については、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択治療とされている。わが国では、昨年7月よりPPIランソプラゾール15mgが、「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」に対する適応が追加されている。

2011年5月3日火曜日

肥満高齢者

肥満高齢者に対しては減量と運動の介入をワンセットで行うことが、どちらか単独の介入をするよりも身体機能の改善が大きいことが、米国・ワシントン大学医学部老年医学・栄養学部門の研究の結果、わかった。肥満は加齢に伴う身体機能低下の増大や高齢者の虚弱を引き起こすとされるが、肥満高齢者に対する適切な治療については議論の的となっているという。
研究は、1年間にわたり減量、運動介入の単独もしくは併用の効果を評価することを目的に行われた。107例が、対照群、体重管理(ダイエット)群、運動群、体重管理+運動(ダイエット+運動)群に無作為に割り付けられ追跡された。
試験を完了したのは93例(87%)だった。身体機能は、ダイエット+運動群が21%増で、ダイエット群12%増、運動群15%増よりも変化が大きかった。なおこれら3群は、対照群(1%増)よりはいずれも変化が大きかった(P<0.001)。
また、最大酸素消費量の変化は、ダイエット+運動群が17%増で、ダイエット群10%増、運動群8%増と比べ改善が認められた(P<0.001)。
機能状態については、ダイエット+運動群が10%増で、ダイエット群4%よりも変化が大きかった(P<0.001)。
体重の減量は、ダイエット群10%、ダイエット+運動群9%で認められた。しかし運動群や対照群では減量が認められなかった(P<0.001)。
ダイエット+運動群では筋力、平衡感覚、歩行機能について一貫した改善が認められた(すべての比較のP<0.05)。

2011年5月2日月曜日

長時間労働と心疾患

心疾患の危険因子(リスクファクター)に長時間労働を加える時が来たのかもしれない。同僚よりも長時間働くと、心臓発作が起きる可能性が有意に増大することが、英国の事務職を対象とした新しい研究でわかった。労働時間が定期的に1日11時間以上の人は1日7~8時間の人に比べて心疾患を発症する可能性が67%高かったという。
英ロンドン大学ユニバーシティカレッジの社会疫学教室では、低リスク集団に属する英国の公務員約7,100人を対象に、1991年から2004年まで追跡調査し、心疾患の徴候のある被験者を選別した。被験者の約70%が男性で、大多数(91%)が白人であった。研究終了時までに約2.7%が冠動脈疾患を発症した。被験者は、自宅に持ち帰ったものを含め、仕事に費やす時間数を報告した。
研究の結果、半数以上(54%)が1日7~8時間、21%が1日9時間、15%が1日10時間、10%強が11時間以上働いていた。労働時間が1日11時間強の被験者では心疾患リスクが高まると同時に、その一部は他のリスク全般が高まったという。
長時間働く人は、運動や健康的な食事、医師の診察を受ける時間が少ない。より多くのストレスに曝され、睡眠時間が短く、心血管リスクの一因となる行動をとっている可能性がある。

2011年5月1日日曜日

子ども初の脳死判定

4月12日、交通事故による重症頭部外傷で関東甲信越地方の病院に入院していた10歳以上15歳未満の男子が法的に脳死と判定された。脳死判定と臓器提供を家族が承諾した。13日朝に臓器摘出手術が行われ、待機患者に移植された。
15歳未満を含め、本人の意思が不明でも拒否していない場合は家族の承諾で脳死での臓器提供ができるようにした改正臓器移植法が2010年7月に施行されて以降、15歳未満の脳死判定は初。書面や口頭で拒否の意思表示はなかったことを家族に確認したという。
移植ネットは家族のコメントを発表、「息子は将来は世の役に立つ仕事をしたいと言っていた。臓器提供があれば命をつなぐことができる人たちのために身体を役立てることが、彼の願いに沿うことだと考えた」などとしている。
2回の脳死判定は12日午前7時37分に終了し、死亡と宣告された。警察は午前8時49分から13分間、検視をした。
本人が18歳未満の場合、虐待を受けた疑いがないことを確かめる必要がある。移植ネットによると、今回は提供病院で委員会や対応マニュアルを作るなど態勢が整っていることや、院内の倫理委員会が臓器摘出を承認したことを確認した。
移植ネットによると、4月8日に主治医が家族に回復は困難との見通しを示した後、臓器提供の機会があることを知らせた。同日、脳死とされうる状態と判断した。
9日には両親らの希望を受け、臓器移植コーディネーターが家族に臓器提供に関し約2時間説明。11日に再度説明をした後、午前11時33分に家族から脳死判定と臓器摘出の承諾書を受け取った。
心臓は大阪大病院で10代の男性、両肺は東北大病院で50代の女性、肝臓は北海道大病院で20代の男性、膵臓と一方の腎臓は藤田保健衛生大病院で30代の女性、もう一方の腎臓は新潟大病院で40代の男性に移植された。小腸は医学的理由で断念された。
従来は意思表示カードなどの書面で提供意思を示した15歳以上でなければ脳死での臓器提供はできなかったが、09年7月、提供数増加を目的に提供条件を緩和した改正法が成立した。

2011年4月30日土曜日

抗うつ薬と動脈硬化

抗うつ薬を服用している男性は、心臓発作や脳卒中の発症をもたらすアテローム性動脈硬化症のリスクを高める可能性のあることが、米エモリー大学の研究でわかった。抗うつ薬は、脳に血液を送る頸動脈の厚さの増大(約5%)に関連しているという。
米エモリー大学は、中年男性双生児513例のデータを収集。被験者の16%が抗うつ薬を服用しており、その60%が選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を、またそれ以外はより古い抗うつ薬を服用していた。
抗うつ薬が血管に及ぼす影響を検討するために、頸動脈の厚さ(頸動脈内膜中膜厚)を測定した結果、抗うつ薬を服用している一方の兄弟は服用していないもう一方の兄弟に比べて肥厚が大きかった。服用した抗うつ薬による違いはみられず、またうつ病自体と頸動脈肥厚との関連は認められなかった。
年齢や糖尿病、血圧、喫煙歴、コレステロール、体重などの因子について調整後もこの状態は同じであった。内膜中膜厚の増大と抗うつ薬服用は明らかに関連しており、同薬を服用し、抑うつ状態がより重症の患者ではこの傾向がさらに強まるようだ。
抗うつ薬と心疾患との間に関連性がある理由は不明としながらも、抗うつ薬によってもたらされるセロトニンやノルエピネフリンなどの脳内化学物質濃度の上昇が血管を硬くし、臓器への血流量の低下、動脈硬化症の危険因子である血圧の上昇につながるとみている。
今回の知見は非常に予備的なものであるため、この研究をもとに患者が抗うつ薬服用に懸念を抱いたり、服用を中止したりすべきではない。抗うつ薬使用とアテローム性動脈硬化症の因果関係の有無を調べるにはより厳正な研究が必要である。

2011年4月29日金曜日

ヨガで心房細動予防

ヨガによって心房細動(AF)が半減することが、米カンザス大学病院の研究でわかった。週3回のヨガにより、生活の質(QOL)も改善し、不安や抑うつに絶えず悩まされる患者の不安や抑うつレベルも低下するという。
心房細動は血液が凝固し脳卒中の原因ともなる不整脈で、米国では多くの高齢者にみられる。治療には、病原となる異常を排除する侵襲的手術、または副作用のある治療薬のいずれかが用いられる。
これまでの研究では、ヨガによる血圧やコレステロールの低下、より弾性のある動脈などの便益がわかっているが、心房細動に限定して検討された研究は今回が初めて。今回の研究では、25~70歳の心房細動患者49例が、指導者のもとで行われる週45分のヨガプログラムに週3回、3か月間参加した。
ヨガには、呼吸運動、さまざまなポーズ(アーサナ)、瞑想およびリラクゼーションが含まれていた。被験者は教育用DVDを渡され、自宅で毎日練習するよう勧められた。研究の結果、運動は行っていたものの、ヨガは行っていなかったクラス開始前の3か月間に発生した心房細動は平均3.8回であったのに対し、3か月間のヨガ練習期間中は平均2.1回であった。

2011年4月28日木曜日

震災関連死

東日本大震災の発生から1か月半、避難所の寒さや衛生状態の悪さから持病が悪化するなどして亡くなる震災関連死の疑い例が、岩手、宮城、福島3県で少なくとも300人近くに上ることが、読売新聞の災害拠点病院などのアンケート調査でわかった。
避難所の劣悪な状況はあまり改善されておらず、専門家によると、関連死が拡大する速度は、阪神大震災や中越地震の時と比較にならないようだ。
調査は、災害拠点病院と主な2次救急指定病院に、これまでに被災した影響で持病悪化や新たな発症で亡くなった患者数を聞いたところ、大半は高齢者とみられる。
死因について138人について回答があり、肺炎などの呼吸器疾患43人、心不全などの循環器疾患40人、脳卒中などの脳血管疾患11人。
石巻赤十字病院は、3月中に1日30-50人の急患が搬送された。半数が避難所の被災者で、意識もなく心停止状態で運ばれてくる高齢者が多かった。同病院は、こうしたケースも関連死の疑い例とみている。
震災関連死は、自治体が地震との因果関係を認定すれば、弔慰金の支払い対象となる。認定作業は審査会を設置して行われるが、医師の死亡診断書や警察の検視などが重要な判断材料となる。
1995年の阪神大震災では仮設住宅の孤独死、2004年の中越地震では車中泊によるエコノミークラス症候群が問題となった。阪神大震災では、発生から10年間で919人が認定された。兵庫県内の死者6402人の14%を占めている。東日本大震災の死者は、警察庁の集計で1万3000人を超えたが、関連死は含まれていない。3県の災害対策本部は、いずれも関連死を把握しきれていないとしている。
震災関連死は地震に伴う持病の悪化や発作などが原因による死亡。明確な基準は定められていないが、自治体が認定する。阪神大震災でわが国の災害史上初めて、避難所生活や必要な医療が受けられないことで病気が悪化した関連死も死者に加えられた。

2011年4月27日水曜日

不妊治療とストレス

ロンドンのカーディフ大学心理学科・不妊治療研究グループは、体外受精(IVF)など生殖補助医療を受けている女性を対象に治療前の精神的苦痛と治療成績とを検討した。その結果、不妊治療の前に不安や落ち込みなどのストレスを感じても、治療成績とは関連しないことがわかった。
妊娠可能年齢人口の9~15%が不妊症で、その半数以上が治療を受けている。
不妊症女性の大半は、精神的苦痛が自然妊娠または不妊治療の成功を妨げる要因の1つだと信じている。しかし、このような考え方は主に、気を楽に持てば妊娠するものだという言い伝えに基づいており、確かなエビデンスもない。そのため、多くの医師はこの関連性について懐疑的な見方を示している。
そこで今回の研究では、ストレスと不妊治療の成績との関連性を調査するために、不妊治療を受けている女性(計3,583例)を対象とする14の研究について解析した。これらの研究では、不妊治療の開始前に参加女性の不安やストレスを評価し、治療結果との関連性が前向きに検討されている。
解析の結果、不妊治療実施前の精神的苦痛は、妊娠の有無とは無関係であることが分かった。
今回の研究から、不妊や治療にストレスを感じても、妊娠成功率には影響を及ぼさないことが確認された。

2011年4月26日火曜日

アルコールの健康被害

世界保健機関(WHO)は,100カ国以上の加盟国におけるアルコール摂取と健康被害に関するエビデンスやデータを発表した。それによると、健康が損なわれるまでアルコールを摂取すること、すなわちアルコールの有害摂取(harmful alcohol use)を低減させ、生命を守るために、これまで以上に政策を強化する必要があるようだ。
アルコールの有害摂取により世界で年間250万人が死亡し、多数の疾患や外傷が発生している。また、その影響は特に若年世代や発展途上国の人々に広く及んでいる。
今回のWHOの報告書には、世界各国のアルコール消費量の推移や飲酒パターン、飲酒に起因した疾患の罹患率および死亡率、社会負担などに関するデータやエビデンスのほか、それらを低減させるための効果的な政策や介入方法がまとめられている。
WHO非感染性疾患・精神保健部門によると、多くの国はアルコールの有害摂取が引き起こす深刻な健康問題を認識しており、疾病負担や社会負担を回避し、なんらかのケアが必要な国民への対策を講じてきた。しかし、アルコールの有害摂取に関連した死亡や疾患を減らすには、いっそうの対策が必要であるようだ。
報告書によると、世界の全死亡件数の4%がアルコールに関連した原因による死亡であるという。これらの死亡の大半はアルコールの有害摂取に起因した外傷やがん、心血管疾患、肝硬変による死亡である。
また、全世界で男性の死亡の6.2%、女性の死亡の1.1%がアルコールに関連しているほか、毎年32万人の若年者(15~29歳)がアルコール関連の原因で死亡しており、これは同年齢層の全死亡件数の9%に相当する。
しかし、報告書によると、アルコールの有害摂取による死亡や疾患、障害を回避するための有効な政策を展開している国は少ないようだ。
WHOがアルコール政策に関する報告書をまとめるようになった1999年以降、少なくとも34カ国がなんらかのアルコール政策を採用した。酒類の販売制限や飲酒運転の取り締まりも強化されてきたが、最も有効な予防策がどれであるかについてははっきりしていない。また、大半の国々では依然、アルコール政策や予防プログラムが不十分なことも指摘されている。
2010年5月、加盟国193カ国が参加したWHOの総会で、アルコールの有害摂取を減らす世界戦略が承認された。同戦略では、(1)アルコール飲料に対する課税の強化(2)アルコール飲料の販売店の削減(3)アルコール飲料の購入可能年齢の引き上げ(4)飲酒運転の規制強化—などを有効性の証明された対策としている。
また、有害な飲酒パターンを変えることを目的とした医療現場でのスクリーニングや介入、アルコール関連疾患の治療、アルコール飲料の販売規制や禁止、有効なアルコール政策を推進するための啓発活動を併せて奨励している。
報告書によると、2005年における全世界の15歳以上の若年者および成人が消費する酒量は、アルコール換算で1人当たり平均6.13Lであった。また、飲酒量を地域別に見ると、2001年から2005年にかけて北米および南米、欧州、東地中海沿岸、西太平洋ではほぼ横ばいで推移していたが、アフリカや東南アジアでは大幅に増加していた。
なお、アルコール消費国は広域にわたっているが、飲酒人口の割合は非飲酒人口の割合を下回り、2005年のデータによると、全男性の約半数、全女性の3分の2を非飲酒者が占めていた。特に、イスラム教徒の多い北アフリカや南アジアでは非飲酒者の占める割合が高く、高所得・高消費国では低かった。

2011年4月24日日曜日

喫煙とALS

ハーバード大学公衆衛生学部の研究で、喫煙と筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症リスクとの間に関連が認められることがわかった。
ALSは運動神経の変性疾患で、米国では毎年5,500例が新規に診断されている。ALSを治癒させる方法はなく、数少ない治療薬の効果も限定的である。ALS症例の約90%は散発性で、原因は不明だが、環境因子が関係している可能性も指摘されている。
今回の研究の結果、
ALS発症率は加齢とともに上昇し、すべての年齢群で女性より男性で高かった。試験開始時点で喫煙歴を有していた人のALS発症リスクは一度も喫煙したことがない人と比べて高いことが分かった。ALS発症リスクは、現役の喫煙者で42%、喫煙経験者では44%高かった。
ALSの発症リスクは、pack-yearsで表す喫煙量(1日に吸うたばこの箱の数と喫煙年数をかけた数字)が増すほど高くなった。pack-yearsに換算しない1日の平均喫煙本数と喫煙期間をそれぞれ独立して調べたところ、両者ともALS発症リスクとの間に正の相関が認められた。ALS発症リスクは、1日当たりの喫煙本数が10本増えるごとに10%、喫煙期間10年ごとに9%上昇した。しかし、これらの相関は、一度も喫煙したことがない者(never-smokers)を除外すると有意ではなくなった。喫煙者の中では、喫煙開始年齢が低い人ほど、ALS発症リスクが高かった。たばこの煙がALSリスクに影響を及ぼす機序に関しては、これまでの研究で複数示唆されている。例えば、たばこの煙に含まれる一酸化窒素(NO)やそのほかの化合物(タバコ栽培の際に使用された農薬の残留物など)あるいは酸化ストレスによる直接的な神経損傷などである。さらに、たばこの煙に含まれる化学物質は、フリーラジカルや過酸化脂質を産生する。また、喫煙者では主要な抗酸化物質であるビタミンCが不足しやすい。喫煙による燃焼生成物の副産物であるホルムアルデヒドに曝露されると、ALSリスクが上昇することが2008年に報告された。喫煙とALSとの関係についての理解を深めることは、他の危険因子のさらなる発見につながり、この疾患の本質解明に役立つであろう。

2011年4月23日土曜日

放射能汚染

汚染された食品の放射性物質の量は、調理や加工で減らせる場合があるらしい。
農産物の汚染経路は、〈1〉大気中の放射性物質が表面に付く〈2〉土壌に降り積もった放射性物質が根を通じて吸収される――の2通りある。いま見つかっているのは、〈1〉の表面汚染だ。
国内外の研究成果をみると、葉もの野菜の表面についた放射性ヨウ素、放射性セシウムとも、水洗いをすると10~30%程度は落ちることがわかっている。葉の裏表、茎にも付くため、水を入れたボウルやたらいの中で、野菜を振るように洗うと良い。水洗いの後で、さらにゆでて、そのゆで汁を捨てると、40~80%は除去できるようだ。
ブロッコリーなどの花蕾類や、根から吸収した野菜の場合はどうか。除去率のデータは少ないが、ゆでて、ゆで汁を捨てればある程度の低減が見込めるようだ。放射性物質はゆで汁に溶け出ると考えられるためで、熱で減るわけではない。
牛乳は、乳製品への加工で放射性物質の量を減らせる。加工過程で、放射性ヨウ素、セシウムは液体の乳清部分に残り、バターやチーズにはほとんど移行しない。そもそも放射性ヨウ素は8日間で放射線を出す力が半分に減るため、乳製品の加工・貯蔵過程で少なくなる。加工法の違いで、牛乳から乳製品への放射性物質の移行率を下げる研究もある。
水道水の放射性ヨウ素汚染に活性炭を使う試みがあるが、効果は薄いとみる専門家が多い。イオン交換樹脂で除去できたとする実験もあるが、放射性ヨウ素を確実に取り除ける家庭用浄水器があるかどうかは、これから検証する必要がある。
放射性物質がどの程度、食品に移行するかは、食品の種類や環境中の濃度、天候などによっても異なる。海産物も含め、食品への汚染を長期にわたり監視し続ける態勢が必要なようだ。

2011年4月22日金曜日

中国の喫煙コスト

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)保健・加齢研究所の研究で、中国で喫煙による健康被害が急増しており、2000年から2008年にかけて喫煙に関連した直接コストは154%、間接コストは376%増加したことが分かった。
中国では2010年時点の喫煙者は3億人以上に上り、同国はたばこの最大の消費国かつ生産国であり、中央政府の歳入の7%はたばこ産業の利益と税金からもたらされているという。
今回の研究では、2003年および2008年に行われた中国の国民保健サービスの調査データを用いて同国における喫煙に関連したコストを推算した。調査データには被験者の喫煙状況、医療サービスの利用、そのコストに関する情報が含まれた。今回の研究では喫煙による数年後の影響を検討するため、35歳以上の成人のみを解析対象とした。
その結果、喫煙に関連したコストは2003年の171億ドルから2008年には289億ドルにまで増加していた。これは、同国のGDPの0.7%に相当した。
喫煙を直接的な原因とする医療コストは、2003年の42億ドルから2008年には62億ドルに増加していた。一方、介護や喫煙の影響による疾患および早死を原因とした生産性の低下などでもたらされる間接コストは、2003年の129億ドルから2008年には227億ドルに増加していた。
さらに、2000年のデータとの比較では、直接コストは2003年に72%、2008年に154%増加。間接コストは2003年に170%、2008年に376%増加していた。この原因として、急激な経済成長に伴い高価でハイテクな医療機器の導入が進んだほか、賃金や医療費の上昇などが影響したのではないかと考えられる。
中国の経済が成長を続け、喫煙率の低下が見られなければ、喫煙による将来の経済コストはさらに膨れ上がることが予想されため、強力な喫煙管理規制が迅速に施行されるべきであると思われる。

2011年4月21日木曜日

小児の高脂血症

シカゴのウェストバージニア大学の研究で、焦げ付き防止加工された調理器具や防水加工された布地の製造過程で使用されるペルフルオロアルキル酸化合物が高濃度に血中から検出された小児では、総コレステロール(TC)値とLDLコレステロール(LDL-C)値が高い傾向にあることがわかった。
ヒトは飲用水、ほこり、食品パッケージ、母乳、臍帯血、大気、就業被ばくを介してペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などペルフルオロアルキル酸から合成される化合物に曝露される。最近の全米調査でも、ほぼすべての血液標本からPFOAとPFOSが検出されている。
ペルフルオロアルキル酸は、耐熱焦げ付き防止調理器具や、布地・室内装飾品に通気性防水性を与えるフッ素重合体の製造過程で使用されている。
PFOAとPFOSはまた、食料製品パッケージ、布地やじゅうたんの工場処理、衣類に汚れを付きにくくする加工処理に使用されるコーティング成分が分解される際にも発生する。
動物実験ではペルフルオロアルキル酸に曝露されると、まず肝臓が影響を受けることが明らかにされており、コレステロール値が変動するなどヒトにも影響を及ぼす可能性が示唆されている。
今回の研究では、飲用水中にPFOAが混入していたオハイオ川中流域の小児1万2,476例(年齢0~17.9歳,平均11.1歳)の血液サンプルから,TC値,LDL-C値,HDLコレステロール(HDL-C)値,トリグリセライド値を測定された。
測定の結果、小児の平均PFOA濃度は69.2ng/mL、平均PFOS濃度は22.7ng/mLであった。12~19歳の参加者ではPFOA濃度が全国平均を上回っていた(29.3ng/mL対3.9ng/mL)が、PFOS濃度についてはそのような差は認められなかった(19.1ng/mL対19.3ng/mL)。
血中PFOA濃度とTC値やLDL-C値との間には正の相関が認められ、血中PFOS濃度とTC値、LDL-C値、HDL- C値との間にも相関が認められた。
血中PFOA濃度が最低5分位の小児と比べ、最高5分位の小児ではTC値が4.6mg/dL、LDL-C値が3.8mg/dL高かった。血中PFOS濃度でも同様に、最低5分位の小児と比べ、最高5分位の小児ではTC値が8.5mg/dL、LDL-C値が5.8mg/dL高かった。
今回観察された傾向は、特にPFOAの濃度が低い群で顕著に見られた。また、全体的には、PFOA濃度よりもPFOS濃度による影響の方が大きいことが推測された。
ペルフルオロアルキル酸全般にいえることかもしれないが、特にPFOAとPFOSについては、血中脂質値に影響を及ぼすと考えられ、全米平均の曝露レベルにおいてさえ、なんらかの影響が生じている可能性がある。

2011年4月20日水曜日

自転車で体重抑制

ハーバード大学公衆衛生学部の研究グループは閉経前の女性を16年間追跡。自転車の利用や速歩によって体重増加が抑制できることが分かった。この関連は、特に過体重や肥満の女性で顕著に見られ、用量依存的効果があるようだ。
米国成人の66%が過体重または肥満で、小児と青年の16%は過体重、さらに小児と青年の34%が将来過体重になるリスクを持つとされる。これまで、歩行と体重増加を検討した研究はかなり実施されているが、自転車に関するものは少ない。また多くが男性を対象としている。そこで今回の追跡調査では、閉経前女性を対象に自転車の利用と体重管理の関係が評価された。
今回の研究では、閉経前の女性1万8,414人を1989から2005年まで追跡し、 体重がこの期間に5%増加したかどうかが確認された。
開始時(1989年)における1日当たりの活動量を調べたところ、1日30分以上速歩をしている女性は39%にすぎず、自転車に乗っている女性も1.2%にとどまった。
追跡の結果、1989年から2005年にかけて速歩および自転車に費やす時間が増加した者ほど体重増加が抑制され、1日当たりの時間が30分増加するごとに、速歩で−1.81kg、自転車で−1.59kgの体重増加の抑制が認められた。一方、時速3マイル未満の低速歩行では、このような変化は認められなかった。
開始時に自転車に乗らないと回答した女性のうち、2005年までに自転車に乗る時間がたとえ1日に5分であっても増えた者では、体重増加が抑制され(−0.74kg)、対照的に、1989年に15分以上乗っていたが2005年時にその時間が減少した女性では体重が増加した(+2.13kg)。
また、追跡期間中に体重が5%増加する確率を算出したところ、正常体重の女性では2005年に毎週4時間以上自転車に乗っている者で低かった。一方、過体重および肥満の女性では2005年時に毎週2~3時間自転車に乗っている者で低かった。
今回の研究から、自転車に乗ることは、速歩と同様に体重増加の抑制に有効であることが分かった。しかし、米国では16歳以上の通勤・通学人口のうち自転車に乗るのは0.5%程度にすぎず、そのうち女性は23%にすぎないのが現状。自転車は、わざわざジムに行かなくても、日常生活の中で、例えば通勤、通学時や買い物に行く際などに車の代わりとして用いることができる。また、自転車は交通手段であって、目的地に着くことが重要となるため、意識せずに運動が行える良い方法である。

2011年4月19日火曜日

交通騒音と脳卒中

デンマークがん学会がん疫学研究所で、デンマークに住む成人を対象に道路交通騒音と脳卒中発症リスクとの関連を検討した結果、騒音にさらされると脳卒中リスクが上昇し、この関連は特に64.5歳以上の高齢者で顕著であることがわかった。
今回の研究は、コペンハーゲンとオーフスに住む5万1,485例(50~64歳)を対象に、既往歴や居住歴などに関するデータを収集した。全被験者の平均追跡期間は10.1年であった。
解析に当たっては、大気汚染の程度や鉄道と飛行機の騒音のほか、喫煙、食生活、アルコールおよびカフェインの摂取などの交絡因子の影響が考慮された。騒音の評価には交通量や車両の速度、道路の種類(高速道路または幹線道路など)と路面状態、道路と住居の位置関係などが考慮された。
さらに、脳卒中を発症した1,881例(3.7%、平均追跡期間6.0年)を対象に、道路交通騒音への曝露による脳卒中の罹患率比(IRR)を検討した。その結果、生活習慣や大気汚染曝露などで調整した後の全例のIRRは1.14であった。
年齢別の検討では、64.5歳未満の者では有意なリスクの上昇は認められなかったが、64.5歳以上の高齢者では道路交通騒音10dB上昇に対するIRRが1.27と有意に上昇していた。
また、自動車の騒音にさらされると脳卒中リスクが上昇することもわかった。過去の研究ではこのような騒音が血圧の上昇や心筋梗塞の発症リスクに関連することが示唆されている。
騒音と脳卒中リスクとの関連について確実な結論を導くにはさらなる研究が必要だろう。これらの間に因果関係があると仮定すれば、全脳卒中の8%、65歳以上の高齢者では19%が交通騒音の影響を受けたと推定できる。今回の研究の対象は主に都市部の住民で、交通騒音にさらされているすべての人々を代表してはいないが、デンマークの人口が550万人で、毎年1万2,400人が脳卒中を発症していることを踏まえると、デンマークでは毎年600例が交通騒音による脳卒中を発症していると推定できる。
さらに、関連が特に高齢者で強かった点について、高齢者では睡眠が分断される傾向があり、睡眠障害が現れやすい。騒音と脳卒中リスクとの関連が主に高齢者で認められたのは、このためとも考えられる。

2011年4月18日月曜日

鉛・カドミウム曝露

米国立小児保健・ヒト発育研究所の研究で、小児期に鉛への曝露レベルが高い女児では思春期の発来が遅れ、この関連は曝露量が多いほど顕著に見られるということがわかった。これまでの先行研究では、重金属への曝露が正常なホルモン産生パターンを妨害し、場合によっては生殖機能の発達に悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。今回の研究では、女児700人超(6~11歳)の血液サンプルと尿サンプルのデータを検証。血中の鉛やインヒビンBなどの生殖ホルモンと尿中のカドミウムの濃度を測定した。インヒビンBは女児において、思春期発来の前に徐々に増加することが知られている。今回の研究では、血清中のインヒビンBの濃度が35pg/mLを超える場合に“思春期発来”と定義した。研究の結果、すべての年齢群で、鉛の曝露レベルが低度の女児よりも高度の女児で、血清中のインヒビンBが35pg/mLを超える割合が低い傾向にあった。一方、尿中のカドミウム単独ではこのような有意な関連は認められなかったが、鉛だけが高濃度の場合や鉛とカドミウムがともに低濃度の場合と比べて、鉛とカドミウムの濃度がともに高い女児ではインヒビンBがより低いことが分かった。米疾病対策センター(CDC)によると、カドミウムは腎、肺、骨を障害し、がんリスクを上昇させる。この結果から、鉛が単独か、もしくはカドミウムと協働して、女児が初潮を迎えるに当たって必要となる卵巣でのホルモン産生を抑制するのかもしれないと推測される。さらに、鉛曝露に関連した思春期発来の遅延は、鉄欠乏の影響を受けることも分かった。今回の研究では、鉛の曝露レベルが中等度~高度の女児では鉄分が欠乏していると、インヒビンBの濃度が極端に低かった。つまり、たとえ鉛の曝露レベルが中等度であっても、鉄分が欠乏している女児では、曝露レベルが高度の女児よりもインヒビンBの濃度が低いこともあるという。鉛曝露リスクが高い女児に対して、鉄分不足のスクリーニング検査を行う必要があろう。鉛への曝露は、子供が成長し、思春期を迎えるに当たって懸念すべき重大な課題であることが示された。このことは、小児が有鉛ガソリンや塗料、産業性汚染物質に曝露されている諸外国や米国のいくつかの地域にとって憂慮すべき問題である。米環境保護局(EPA)によると、鉛の曝露源として最も多いのは、劣化しつつある鉛ベース塗料や鉛汚染粉じん、鉛汚染住宅土壌である。

2011年4月17日日曜日

ワクチン同時接種

他のワクチンと同時接種後の死亡報告が相次ぎ、3月上旬から一時見合わせていた小児用肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンについて、4月から接種が再開している。心疾患など重い持病がある乳幼児については単独接種も検討し、同時接種が必要な場合には医師の判断で実施することになった。専門家検討会で、追加報告された2例を含む計7例の死亡例を検証。このうち6例で解剖が行われ、死因は感染症や乳幼児突然死症候群などの可能性が高いと報告された。いずれも接種と死亡との明確な因果関係は認められず、ワクチンの安全性に特段の問題はないと判断した。米国など海外の使用実績でも、10万人に0・1~1人の割合で接種後の死亡報告があるが、死因は感染症などが大半を占め、国内の死亡割合と大きな違いはなかった。

2011年4月16日土曜日

ヒブ、肺炎球菌ワクチン

接種後に乳幼児が死亡したとの報告が相次ぎ、予防接種の実施を見合わせていたインフルエンザ菌b型(ヒブ)、肺炎球菌の2ワクチンの接種が4月から再開している。専門家の検討会が、報告分については死亡と接種に明確な因果関係はないと判断した。死亡例の報告は3月に7件あった。いずれもヒブや肺炎球菌と、三種混合などのワクチンを同じ日に接種していたが、検討会では、国内外の事例を考慮しても「単独接種に比べて重い副作用の増加は認められない」と、同時接種の安全性に問題はないと認めた。ただ、重い持病のある子どもの場合は、医師が慎重に判断するべきだと指摘した。この2ワクチンは、子どもの細菌性髄膜炎などを予防する。昨年11月、市区町村がこれらのワクチンの接種と公費補助をする場合に国が半額負担する事業が始まった。死亡例の報告が相次いだのを受け、厚労省は3月4日から接種を見合わせていた。

2011年4月15日金曜日

高度受動喫煙と乳がん

喫煙女性だけでなく、高度の受動喫煙にさらされている女性も乳がんのリスクが高いということが、米ウエストバージニア大学の研究グループによってわかった。同グループは、50〜79歳の女性7万9,990例を対象に、閉経後女性の生涯にわたる能動喫煙および受動喫煙への曝露と浸潤性乳がんとの関係を検討した。平均10.3年間の追跡で3,520例に浸潤性乳がんが確認された。解析の結果、喫煙経験のない女性と比較した過去の喫煙者と現喫煙者の乳がんのリスクは伴に高かった。多い喫煙本数、長い喫煙期間、10歳代での喫煙開始が有意なリスク上昇と関係していた。最もリスクが高かったのは50年以上喫煙している女性で、喫煙による乳がんリスク上昇は、禁煙後20年まで続いた。また、高度(小児期に10年以上、成人期に自宅で20年以上、成人期に職場で10年以上)の受動喫煙への曝露によって乳がんのリスクは、受動喫煙への曝露がなかった女性と比較して高かった。しかし、受動喫煙への曝露が少ない女性では有意な関係はなく、累積曝露に対する明らかな用量反応は見られなかった。

2011年3月19日土曜日

3/19被災地のみなさまへ

毎日、お辛いでしょうが、頑張ってください。みなさまのご健康をお祈り致します。

3/18被災地のみなさまへ

毎日、お辛いでしょうが、頑張ってください。みなさまのご健康をお祈り致します。

3/17被災地のみなさまへ

毎日、お辛いでしょうが、頑張ってください。みなさまのご健康をお祈り致します。

2011年3月16日水曜日

3/16被災地のみなさまへ

毎日、お辛いでしょうが、頑張ってください。みなさまのご健康をお祈り致します。

2011年3月6日日曜日

ウオーキング

米ピッツバーグ大学の研究で、身体活動レベルと高齢期の脳サイズとの関連性について長期的に調査し、1週間の歩行距離が長かった者ほど、その後の脳灰白質サイズが保持され、認知機能障害リスクも低かったことがわかった。
脳は中年以降に縮小し、記憶障害を引き起こすことがある。脳灰白質サイズの保持には身体活動が有効だといわれているものの、実際に長期にわたるデータを用いて、この関連性を検討した研究はこれまでなかった。今回の13年にわたる調査の結果、高齢者は運動を取り入れることで、認知症やアルツハイマー病(AD)が予防できることが分かった。
今回の研究では、認知症のない被験者299例(平均年齢78歳)を対象に1週間に何ブロック歩いたかを記録。その9年後に脳サイズを測定し、さらにその4年後に認知障害や認知症の有無について検査した。
研究開始から9年後に脳サイズを測定した結果、歩行距離が長かった者ほど、脳サイズが大きいことが分かった。
また研究開始から13年後に認知機能検査を実施したところ、歩行距離が長かった者では、記憶障害リスクが2分の1であることが分かった。
今回の結果から、規則的な身体活動を行うことで、脳のサイズが保持され、思考や記憶を維持できる可能性が示唆された。全世代に規則的な身体活動を促すための早急な対策が必要であろう。

2011年3月5日土曜日

小児用肺炎球菌ワクチン

兵庫県西宮市の診療所で小児用肺炎球菌ワクチンなどの予防接種を受けた女児(1)が、翌日に死亡した。同県宝塚市でも男児(2)が接種翌日に死亡している。いずれも製造番号が同じで、厚生労働省は死亡と接種との因果関係について、調査を開始した。
西宮市によると、女児は3月1日、診療所で肺炎球菌と三種混合の両ワクチンの接種を受け、同日深夜に高熱を出した。翌2日朝、診療所を受診し、いったん帰宅。しかし、午後になって無呼吸状態となり、搬送先の病院で死亡した。
女児は肺炎球菌ワクチンは初めて、三種混合ワクチンは4回目の接種だった。基礎疾患はなかったという。
厚労省によると、2児が接種した肺炎球菌ワクチンは、2010年7月に海外で製造されたという。
肺炎球菌ワクチンは大人用は従来、使われていたが、小児用は2009年に厚生労働省が承認、10年2月に発売された。細菌性髄膜炎の予防に効果があるとされ、小児用の接種費用を助成する自治体が増えている。今年1月末までに、215万回分のワクチンが流通し、厚労省の推定で、110万人が接種済みという。

2011年3月4日金曜日

リンゴ病

両頬が赤くなるのが特徴で、リンゴ病と呼ばれる感染症、伝染性紅斑の患者が全国で増え、2000年以降では2007年に次いで多いことが国立感染症研究所のまとめで分かった。
4~6年周期で流行しており、例年は夏ごろがピーク。今年は流行する可能性があるようだ。
せきやくしゃみのほか接触によって感染し、感染自体を防ぐことは難しい。患者は子どもが多いが、妊婦が感染すると、胎児の組織などに液体がたまる胎児水腫や流産の恐れもある。保育園や幼稚園、小学校で流行している場合は、妊婦は施設に立ち入らないようにするなど、注意が必要。
最新の集計によると、都道府県別では福岡が最多で、宮崎、石川、宮城の順。31都府県で前週より増えている。
1月からの累計では、4~5歳が32・9%、6~7歳が25・9%、2~3歳が17・0%。
原因ウイルスはヒトパルボウイルスB19。頬や腕、脚などが赤くなるほか、かぜのような症状を示すが、症状が出ない不顕性感染も多い。成人の場合は頬が赤くなることは少ないが、関節痛や関節炎が起きる。潜伏期は10~20日で、頬が赤くなる頃にはすでに感染力は弱まっているため、登園・登校停止の対象とはならない。

2011年3月3日木曜日

新型インフルエンザ用ワクチン

世界保健機関(WHO)は、英製薬大手グラクソ・スミスクライン社が製造した新型インフルエンザ用ワクチンの接種を受けた若年層が突然、睡眠状態になるケースが少なくとも12か国で報告されたと発表した。
日本は含まれていないが、WHOの専門委員会は因果関係について調査を進めているようだ。
問題になっているのは、同社のワクチン「パンデムリックス」。フィンランドでは2009~10年にこのワクチンを接種された4~19歳の若年層に、ナルコレプシーと呼ばれる発作的な睡眠状態に陥った症例が、接種を受けていないグループより約9倍多く発生したという。
日本は10年、同社から新型用のワクチンを緊急輸入したが、カナダの工場で製造された別のワクチンで、同様の副作用は報告されていない。

2011年3月2日水曜日

ビタミンDサプリメント

ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常な小児、青少年の骨密度に利点をもたらさないが、欠乏している場合は一定の改善効果が得られることが、オーストラリア・タスマニア大学の研究で明らかになった。ビタミンDの欠乏はごく一般的にみられる状態だが、小児における潜在的なビタミンD欠乏は骨に悪影響を及ぼす可能性があるという。
研究グループは、小児、青少年の骨密度に及ぼすビタミンDサプリメントの効果を検討し、用量などの因子による効果の変動について評価した。
生後1ヵ月から20歳未満までの健常小児、青少年を対象に、ビタミンDサプリメントを3ヵ月以上投与して骨密度を評価した。
前腕、股関節、腰椎の骨密度および全身骨塩量のベースラインからの変化率を算出し、性別、思春期ステージ、ビタミンDの用量、ベースラインの血清ビタミンD濃度に関する解析を行った。
解析の結果、全身骨塩量、股関節・前腕の骨密度に対するビタミンDの有意な効果はみられなかった。腰椎の骨密度に対しては、わずかに有効な傾向が認められた。
血清ビタミンD濃度別の比較では、高値例と低値例で効果は同等であったが、全身骨塩量については低値例で効果が大きい傾向がみられた。
血清ビタミンD濃度低値例では、全身骨塩量と腰椎骨密度に対するビタミンDの有意でおおよそ同等な効果を認めた。
結論として、ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度に利点をもたらす傾向は認めなかった。しかし、血清ビタミンD濃度による解析では、ビタミンDが欠乏した小児、青少年において、サプリメントは特に腰椎骨密度と全身骨塩量に対する臨床的な改善効果を示した。

2011年3月1日火曜日

コレステロール値

コレステロール値のモニタリングは、内服薬の完全な飲み忘れの検出にある程度は有効だが、時折飲み忘れる程度の検出能は劣ることが、オーストラリアとニュージーランドの試験でわかった。ガイドラインでは、コレステロール値をモニターすることで飲み忘れを評価するよう勧告しているが、コレステロール値モニタリングによる飲み忘れの検出能は不明で、補助データとしてのみ考慮すべきなようだ。

2011年2月28日月曜日

乳がん手術

早期の乳がん患者の外科手術で、転移を防ぐために脇の下のリンパ節全体を切除する「郭清」をしても、リンパ節の一部しか切除しなかった場合と生存率に変わりはないとする米国の多施設臨床試験の結果が発表された。
「郭清」はがんの再発を防ぐために広く行われているが、むくみが出るリンパ浮腫などの合併症が起きやすいとされる。研究グループは「(郭清をやめる)新手法を取り入れることによって、術後の生活を改善できる」と指摘している。
研究には、100カ所以上の医療機関が参加。1999~2004年に、手術前に脇の下の「センチネルリンパ節」を検査して転移が見つかった早期がんの患者を対象に、リンパ節全体の郭清をした場合と、転移が見つかった一部だけを取り除いた場合の生存率を比較した。
転移を防ぐための抗がん剤や放射線治療なども続けた結果、5年後の生存率は全切除した445人は91・8%、一部切除の446人は92・5%と、ほぼ同じだった。
一方、リンパ浮腫などの合併症は全切除では70%で起きたが、一部切除では25%で、大きな差が出た。
乳がん細胞は早い段階で全身に広がることが分かっており、研究グループはリンパ節切除よりも、抗がん剤や放射線による全身的な治療が再発を防いでいるのではないかとみている。

2011年2月27日日曜日

糖尿病入院

米ミシガン大学の調査によると、若年成人、特に若年女性で糖尿病による入院患者数が急増しているようだ。
米国では推定2,400万人が糖尿病に罹患している。完治は望めないが、糖尿病患者は投薬、健康的な食事と身体活動によって疾患を管理することができる。
調査では今回、糖尿病による入院の過去14年の傾向を把握するため、1993~2006年の全米入院患者データベースを使用、そのうち糖尿病と診断された退院患者データを検討した。
その結果、全年齢層で糖尿病による入院は65%増加。さらに、30歳代の若年成人の入院数は1993~2006年に2倍超となった。
研究によると、この入院の傾向は過去30年間の米国全土における肥満率の急増を反映しているようだ。
また今回の研究では、20歳代と30歳代のデータについて調べた結果、妊娠による入院を除外した後でも、男性と比べ女性では糖尿病による入院リスクが1.3倍高いことが分かった。この原因として(1)若年者では、男性よりも女性で肥満率が高い(2)男性よりも女性の方が糖尿病の症状が重い傾向にある—点を挙げ、このような状況は、若年女性で糖尿病の予防治療を受ける機会が少ないことの表れだとしている。
過去の研究では、糖尿病女性は予防的ケアの利用が少なく、積極的な内科的治療をあまり受けていないため、入院後の心血管障害による転帰が悪化することがわかっている。
今後、糖尿病患者の増加を防ぐためには、若年成人、その中でも特に女性をターゲットにした糖尿病予防策が必要である。また、糖尿病に罹患した若年成人の健康全般を改善するための医療介入が求められる。

2011年2月26日土曜日

受動喫煙

受動喫煙は世界各国で問題となっているが、世界レベルでどの程度の健康被害をもたらしているかについては明確にされていない。世界保健機関(WHO)「タバコのない世界構想」が、2004年時の192カ国のデータを解析したところ、受動喫煙が原因で年間に推定60万人超が死亡していたことが分かった。これは、世界中の全死亡の約1%に相当するという。
今回の研究は、全世界で受動喫煙がもたらす疾病負担を評価した初めてのもの。2004年の各国の疫学データやWHOのデータを用いて受動喫煙による死亡数と障害調整生存年数を算出し、受動喫煙による疾病負担を評価した。
その結果、全世界で小児の40%、非喫煙女性の35%、非喫煙男性の33%が受動喫煙にさらされていることが分かった。また、2004年の受動喫煙に関連した全死亡数は60万3,000人と推定された。これは、全世界の死亡数の約1%に相当する。これらの死亡の47%が女性、28%が小児、26%が男性で発生していた。
同年の受動喫煙に関連した死亡で多かったのは、成人における虚血性心疾患(IHD)による死亡で、37万9,000件であった。次いで、5歳未満の乳幼児における下気道感染症による死亡16万5,000件、成人および小児における喘息による死亡3万6,900件、成人における肺がんによる死亡2万1,400件が続いた。
受動喫煙によるDALY損失は1,090万年で、同年の全世界における疾患負担の約0.7%に相当した。また、全DALY損失の61%を小児が占めていた。
受動喫煙がもたらした疾患負担で最大であったのは、5歳未満の小児における下気道感染症による負担で、次いで成人のIHD、成人と小児の喘息と続いた。
受動喫煙による小児の死亡数は特に低・中所得国で多かったが、成人の死亡数についてはすべての所得国で同等であった。
受動喫煙に起因した小児の死亡の3分の2は、アフリカや東南アジア諸国で発生している。小児の受動喫煙のほとんどは家庭内での曝露である。これらの国や地域では、感染症とたばこが小児の死亡の複合的な原因となっていると考えられる。
世界全体で見ても、受動喫煙にさらされている割合が最も高いのは小児である。小児の場合、主要な曝露源である家庭内の喫煙者から逃れるすべがない。家庭内で受動喫煙にさらされている小児は、ほとんどの国や地域で見られたが、特にアジアや中東諸国で多かった。小児は受動喫煙の害に関する強いエビデンスが得られている人口集団である。したがって、これらの事実は公衆衛生上の提言の根幹となるべきものであり、政策立案者が勘案すべき事項であるといえる。
また、受動喫煙に関連する全死亡数の約3分の2,DALY損失の約4分の1を成人非喫煙者におけるIHDによる死亡が占めていたが、職場での喫煙を禁止する禁煙法の施行により急性冠動脈イベントの数は急減している。完全禁煙法が施行されれば、施行後1年以内に受動喫煙による死亡が大幅に減少し、それに伴って社会・医療システムにおける疾病負担も減少すると見込まれる。
一方、受動喫煙による死亡数を男女別に見ると、男性に比べて女性で多かった。この原因について、(1)非喫煙者数が男性に比べて女性で多い(2)アフリカ、南北アメリカの一部地域、東地中海沿岸諸国、東南アジアでは、女性の受動喫煙リスクが男性に比べて50%以上高いことが挙げられる。
2004年の能動喫煙による死亡数は全世界で510万人と推定されており、今回明らかになった受動喫煙による死亡数を合計すると570万人超に上る。今回の研究では、喫煙者は受動喫煙によるさらなる影響は受けないとの想定の下で解析が行われた。しかし、受動喫煙の影響が喫煙者と非喫煙者で同等であるとすれば、受動喫煙による死亡数は30%多く推定される。
完全禁煙法が施行されている国の住民は世界人口の7.4%にすぎず、完全禁煙法が確実に施行されている国は数カ国にとどまる。しかし、完全禁煙法の施行により受動喫煙リスクは飲食店などで90%、一般の場所では60%低下することが、これまでの研究で示されている。また、完全禁煙法の施行は非喫煙者を受動喫煙から守るだけでなく、喫煙者の禁煙成功率も高めるようだ。
受動喫煙を削減するために、政策立案者は以下の2領域で行動を起こすべきである。まず、多くの地域で女性や小児を受動喫煙から守るには、家庭での受動喫煙曝露を減らすための補足的な教育戦略が必要になる。自発的な家庭内禁煙を促す政策は、小児や成人非喫煙者の受動喫煙の機会、さらに成人の喫煙を減らし、若年者の喫煙を減らす上でも有効と考えられる。また、低所得国では受動喫煙が多くの5歳未満児の死亡原因となっている。発展途上国では、たばこ関連疾患対策よりも感染症対策が先決であるという誤解を早急に正す必要がある。
禁煙法の施行に伴う社会的規範の変化は家庭内にも波及すると考えられるが、家庭内における受動喫煙を減らすには、その家庭独自の方法で減らせるように動機付けるイニシアチブが必要だ。たばこの煙のない家庭が普通になりつつあるとはいえ、世界的にはまだ多い。世界中の喫煙者12億人が、何十億人もの非喫煙者を疾患の原因となる大気汚染物質にさらしている。完全に取り除ける大気汚染物質源は少ないが、屋内の喫煙をなくすことは可能である。そのことにより多大な便益が得られる。

2011年2月25日金曜日

がん死亡率減少(EU)

欧州連合(EU)加盟27カ国で今年中にがんで死亡するとみられる人数は10万人当たりの死者数でみると、男性が2007年の153・8人から142・8人、女性が90・7人から85・3人へそれぞれ減少する見通し。
調査によると、死亡率の低下は女性の場合は主として乳がん、男性は肺がんおよび結腸がんによる死亡率の減少が主因だという。ただ全体の死者数は、人口増加や高齢化の影響で2007年の125万6001人から2011年は128万1460人へ微増が予想されている。
調査はイタリアのミラノ大学研究グループが中心となって数学モデルを使って予測、来年も調査する予定。
報告によると、西欧における死亡率は中欧および東欧に比べて相対的に低く、調査グループは、この傾向は予測可能な将来も続く見通しだと述べた。がんの種類による死亡率をみると、肺がんの10万人当たり死亡率は2007年12・55人から2011年には13・12人に上昇する見通しで、特にポーランドと英国では女性のがん死亡原因の首位は乳がんから肺がんに代わった。

2011年2月24日木曜日

妊婦の体重増加と肥満児

ボストン小児病院(ボストン)とコロンビア大学(ニューヨーク)の研究で、妊娠中の母親の体重増加と生まれてくる児の出生時体重は相関し、大幅な体重増加が認められた妊婦では、4,000gを超える児を出産する確率が高いということがわかった。これまでの研究から出生時体重が成人後の体重に影響を及ぼすことがわかっているため、妊婦に対して肥満予防策を講じることは出生児にも有益となると考えられる。
これまでの研究から、妊娠中に体重が増加し過ぎた母親から生まれてくる児の出生時体重が増加し、その子が将来、肥満になるリスクも高まることがわかっている。しかし、遺伝などの共通因子もこれらに関与している可能性は否定できなかった。今回の研究では、遺伝的要因を除外するため、同一の母親による複数回の単胎妊娠が検討された。
研究では、米国の州別出生登録データから、1989年1月1日~12月31日におけるミシガン州とニュージャージー州の出生記録が用いられた。データを抽出するに当たって(1)妊娠週齢が37週以前あるいは41週以降(2)母親が糖尿病を有する(3)出生時体重が500g未満か7,000gを超える(4)妊娠中の体重増加に関するデータが残っていない―場合は除外した。最終的に分析対象となったのは,母親51万3,501人と出生児116万4,750人であった。
分析の結果、妊娠中の体重増加と出生時体重には一貫した相関性が見られ、母体の体重が1kg増えるごとに子供の出生時体重は7.35g増えた。
また、妊娠中に体重が8~10kg増えた母親から生まれた児と比べ、24kg超増えた母親から生まれた児は約150g重かった。さらに、24kg超増加した母親では4,000g以上の児を出産する確率が2倍超高かった。
このような関連の機序について、妊娠中に体重が増加することによって、インスリン抵抗性や胎盤への栄養伝達をつかさどるホルモンなどによる影響が考えられた。
出生時体重は将来のBMIリスクの予測因子でもあることから、妊娠中の過剰な体重増加は、長期的に児の肥満関連疾患発症リスクを高める可能性がある。出生時体重が高過ぎると将来、喘息、アトピー性疾患、がんなどの疾患を発症するリスクも高まる。
妊娠中の体重増加が胎児の成長や出生児の代謝系に及ぼす影響について理解を深めることは重要なようだ。一方で、生殖年齢に当たる女性が、妊娠中だけでなく妊娠前においても適正体重を維持するには、どのような支援策が有効かを緊急に検討しなければならないだろう。現在、妊娠前の女性に対する健康対策が注目されていることから、女性が適正体重で妊娠することに焦点を合わせた介入法を考える上では絶好の機会といえる。さらに、生涯にわたる体重軌跡を是正し、世代にまたがる過体重の悪循環を断ち切るためには、より効果的な集団ベースの戦略が必要であろう。

2011年2月23日水曜日

画面前着座時間と心血管イベント

テレビ視聴など画面の前に座っている時間が長い程、心血管イベントおよび死亡リスクが増加することが、英国のグループの研究でわかった。
同グループは、2003年のスコットランド健康調査の参加者4,512例を2007年まで追跡。心血管イベントおよび死亡と1日の画面前に座っている時間(2時間未満、2〜4時間未満、4時間以上)との関係を調べた。
1万9,364人年の追跡で215例が心血管イベントを発症、325例がなんらかの原因で死亡した。年齢、性、肥満、喫煙、長期罹患疾患、糖尿病、高血圧などを調整した結果、画面前に座っている時間が2時間未満の群と比べ、4時間以上の群の心血管イベントおよび全死亡ハザード比(HR)はそれぞれ2.30、1.52と高かった。
画面前に座っている時間と心血管イベントの関係のおよそ25%はBMIやC反応性蛋白、HDLコレステロールと関係していた。

2011年2月22日火曜日

腸内細菌と脳の発達

腸内細菌がマウスの行動に影響を与えることをスウェーデンのカロリンスカ研究所などの研究チームが発見した。
腸内細菌が肥満や免疫に関わっていることは知られていたが、脳の発達や行動にまで影響をおよぼすことが示されたのは初めて。
研究チームは、通常の腸内細菌を持つマウスと、無菌で育てたマウスの行動を比較した。箱の中で陰の区画に隠れ、警戒している時間が多い普通のマウスに比べ、無菌マウスは明るく広い場所をうろつくなど行動が大胆だった。
脳の変化を調べたところ、無菌マウスでは、不安や感情に関わる脳内物質の量が少なかった。研究チームは、進化の過程で、腸内細菌の作用が、新生児の脳の発達過程に組み込まれたのではないかと考えているようだ。

2011年2月21日月曜日

痛風(2)

痛風になりやすい人
▽30代以上の男性
▽過去に部活などで激しい運動をしていた
▽大食いで肥満
▽酒を大量に飲む
▽仕事などのストレスが多い
▽腎臓に障害がある
▽血縁者に痛風の人がいる

2011年2月20日日曜日

痛風

働き盛りの男性に多い痛風に悩む人が増えているようだ。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、07年の国内の患者数は約85万人で、98年(約59万人)の約1・4倍。食生活の変化やストレスの増加などにより、以前に比べ若い人も発症しやすくなったことが原因とされる。
痛風は、急に足の親指の付け根などが赤く腫れて激痛が走る生活習慣病。痛みで動けないこともある。原因はプリン体の老廃物である尿酸が血液中に過剰に増え、関節にたまって結晶化すること。体が結晶を異物と見なして排除しようとするため、激痛を伴う発作が起こる。足の甲やかかと、くるぶし、アキレスけん、ひざなどが痛む場合もある。
発作は片足の親指に表れる場合が多い。むずむずするような違和感が寝る前から始まり、朝には激痛になっているなど、1日以内に痛みがピークに達する。
痛風は欧州などでは紀元前から報告があり、フランスのルイ14世やレオナルド・ダビンチら多くの著名人もかかったとされる。日本では明治時代まではほとんど知られておらず、食生活の欧米化が進んだ1960年代以降に患者が増えたという。
患者の98~99%は男性。女性ホルモンに尿酸の排せつを促す働きがあり、血液中の尿酸濃度(血清尿酸値)は男性の方が高いため。特に、よく食べよく酒を飲む30~60代の肥満男性が痛風になりやすい。メタボリックシンドロームの人はリスクが高く、足に原因不明の痛みが出たら痛風を疑い、内科や整形外科を受診した方がいい。

2011年2月19日土曜日

子供の風邪

野菜を食べる子供は風邪の治りが早く、ひきにくい。有機・低農薬野菜などの食品宅配事業を展開するらでぃっしゅぼーやが実施した調査でわかった。母親がひきにくいと、子供もひきにくく、体質が受け継がれる傾向がみられた。とくに小学生時代に野菜をよく食べた母親では、それが現在も食習慣となっていると、ひきにくい体質になるようだ。また、ひきにくさは東高西低と地域差がみられることも明らかになった。
調査は、全国の30~40代の小学生をもつ母親対象(有効サンプル約1300人)にアンケート形式で実施。
風邪の罹患率は、過半数の小学生が年に2~3回とする回答を得た。ただひきやすい体質か、否かを尋ねると、50・1%は「ひきにくい」と答えている。
風邪をひきにくい体質について、母親と子供に相関関係があるかを分析すると、「ひきにくい」(どちらかといえばも含む)とする母親は46・1%で、「ひきやすい」(同)体質27%を上回っている。「ひきにくい」母親の66・6%が子供も「ひきにくい」体質と回答しており、同じ体質が引き継がれていることが示唆された。
子供に対する野菜の摂食状況によれば、70・5%の小学生が「よく食べる」(まあまあ食べる含む)と答え、風邪との相関性を分析してみると、野菜摂食する小学生の51・1%が「ひきにくい」体質であり、野菜ぎらいの非摂食系小学性に比べ高く、有意差のあることがわかった。
風邪にかかった子供の治るのが早いか、遅い方かを尋ねると、61・4%が「早い」と回答している。野菜摂取する小学性の64・2%で、治るのが「早い」ことが判明した。これは非摂食系小学生51・3%と比べ、12・9ポイントも高かった。
次に母親自身に回答してもらうと、63%が小学生時代に野菜をよく食べ、現在、「食べている」(まあまあ食べる含む)ヒトは86・8%だった。この食習慣が子供にも伝わり、「ひきにくい」体質づくりに役立っているようだ。

2011年2月18日金曜日

ビフィズス菌

理化学研究所、東京大学、横浜市立大学の研究チームは、ヒトの腸内にいるビフィズス菌の作り出す酢酸が病原性細菌である腸管出血性大腸菌O157の感染抑止に役立つことを発見した。異物からのバリア機能をもつ大腸下部の腸管上皮に酢酸が間接的に作用すると、O157に対する抵抗力が増強、予防機能を発揮するという。
ビフィズス菌は、ヒト腸内に常在する乳酸菌の仲間。善玉菌として有害菌の増殖を抑え、腸内環境を整えるなど健康維持によいとされる。
研究チームは、マウスにO157を感染させ、ビフィズス菌の感染予防効果を調査。O157感染前に、経口投与すると感染死が起きないビフィズス菌(予防株)3株と感染死するビフィズス菌(非予防株)2株のあることを確認したうえで、その違いは腸内で産生される代謝物の異なることが関与しているとみて解析をスタート。
解析作業では、まずビフィズス菌投与直後にマウス糞便を解析。予防株投与群では非予防株投与群に比べ、ブドウ糖など糖類が消費され半分に減少。これにともない、短鎖脂肪酸の1つ酢酸の量が約2倍高いことがわかった。
酢酸には、異物侵入のバリアとして働く腸粘膜上皮の増殖・保護作用があることを踏まえ、次に腸粘膜上皮の解析を行った。予防株投与群では細胞エネルギー代謝や抗炎症作用に関する遺伝子群の発現量が非予防株投与群よりも2~3倍高かった。酢酸の効果によりバリア機能が高まることがわかった。大腸の下部で果糖から効率よく酢酸が作られると腸粘膜上皮が保護される。これによりO157の毒素による腸粘膜上皮の細胞死を減らし、結果としてO157による炎症や感染死を予防できることが示唆された。

2011年2月17日木曜日

インフル、ピーク越え

国立感染症研究所の報告によると、インフルエンザ患者はやや減少してきたようだ。流行のピークはすぎつつあるが、流行の規模はまだ大きいため引き続き注意が必要とのこと。今後はB型の患者が増える可能性もあるようだ。
都道府県別で流行が大きかったのは、長崎、宮崎、群馬、福岡の順。これまで流行が大きかった関東、九州地方を含め、33都府県で患者数が減少しているという。
直近5週間に検出されたウイルスは新型が最も多く、季節性のA香港型、B型の順。
厚労省の担当者によると、学校の中での流行拡大は収まりつつあるようだが、依然まん延状態には変わりはない。引き続き注意が必要なようだ。

2011年2月16日水曜日

暴飲と心疾患リスク

フランスのトゥールーズ大学の研究で、英国北アイルランドのベルファストで見られる偏った飲酒文化が、同地域における心疾患の罹患率が高いことと関係している可能性があることがわかった。これに対し、今回の研究によると、比較対象となったフランス人男性は1週間を通じてより均等な割合でアルコール飲料を摂取する傾向にあるようだ。
飲酒が心疾患や早死につながることは既に知られている。しかし、飲酒パターンやアルコール飲料の種類によって、このような影響に違いが見られるか否かについては明らかにされていない。
そこで今回、文化の異なる北アイルランドとフランスの中年男性を対象に、酒の飲み方(飲酒パターン)が両地域での心疾患発症率の差と関係するか否かが検討された。
被験者データによると、ベルファストとフランスでは、1週間に消費されるアルコール飲料の量はほぼ同等であった。しかし、フランスの中年男性は週を通して習慣的に飲酒する傾向がある一方、ベルファストでは同じ量を1~2日で飲むなど飲酒パターンが異なる傾向が認められた。さらに、週末に飲酒する男性の割合は、フランスに比べてベルファストでは約2~3倍高いことが明らかになった。同地域ではほとんどの男性が週末の1日(土曜日)に集中して飲酒していたという。
研究開始から10年間にわたり、被験者の健康状態(受診,入院,治療など)をフォローアップした結果、年齢、喫煙、運動量、血圧、腹囲などの心血管疾患の危険因子とは独立して、暴飲している男性が心筋梗塞を来すあるいは心疾患が原因で死亡するリスクは、習慣的に飲酒している人の約2倍高いことがわかった。
さらにベルファストで心疾患リスクが高いもう1つの原因として、ワイン(27.4%)よりもビール(75.5%)やスピリッツ(蒸留酒,61.3%)が好まれる傾向を挙げている。これに対し、フランス人の多くはワインを飲んでいた(91.8%)。中等量のワイン摂取が心疾患を予防することは先行研究で実証されている。
暴飲は、心疾患リスクが増大するだけでなく、肝硬変やさまざまながんにも関連し、社会問題にもつながる。地中海諸国では、若年層が暴飲する傾向が強まっており、今回の研究は公衆衛生上重要な意味がある。公衆衛生の改善を図るために、中年男性に対しては、暴飲することによって、アルコール飲料の保護的効果がなくなるだけでなく、心筋梗塞リスクを高めることを知らせるべきであろう。その一方で、若年層に対しては、若者は心疾患リスクが低いため、同リスクに及ぼす影響について強調するよりも、アルコール中毒、飲酒が関与した傷害、暴行、悔いの残る性経験などに焦点を合わせた暴飲反対のメッセージを発信していく方が良いだろう。

2011年2月15日火曜日

乳製品で減量促進

イスラエルのネゲブ・ベングリオン大学保健栄養センターと保健科学部の研究で、減量目的のダイエットを受けた者のうち乳製品からのカルシウム(Ca)摂取量が最大であった者では、ダイエット法にかかわらず全く摂取しなかった者よりも体重の減少度が大きかったことがわかった。
今回の試験はイスラエルの核研究センターで実施されたもので、過体重の男女(40~65歳)300例以上が2年間にわたって低脂肪食、地中海食、および低炭水化物食を含む各種ダイエット法を行った。
その結果、試験開始後6カ月時点における乳製品からのCa摂取量が583mgと最も多かった群では、2年後の減量プログラム終了時点で、体重が5.3kg減少していたのに対し、同摂取量が156mgと最も少なかった群では体重減少量は3.3kgにとどまっていた。
今回の試験ではさらに、研究開始後6カ月の時点で血中ビタミンD濃度が高い者では、体重の減量度合が大きいことが示された。また、過体重の者では血中ビタミンD濃度が低いことも確認された。
これまでの研究により、過体重の者では血中ビタミンD濃度が低いことが明らかになっているが、今回、減量に成功した者では血中ビタミンD濃度が高かった。このような傾向は低炭水化物食、低脂肪食、地中海食のいずれのダイエットを行っているかにかかわらず、2年の試験期間を通じて一貫して見られた。
Ca吸収を高めるビタミンDは、日光を浴びる以外に、ビタミン強化ミルク、脂肪に富む魚、卵から得られる。
しかし一般には、得られるビタミンDの推奨1日摂取量(400 IU;グラス4杯のミルクに相当)を満たしている者は少ないようだ。

2011年2月14日月曜日

親の喫煙

独ハイデルベルク大学の研究で、就学前の幼児(5,6歳)で親が喫煙している場合に、収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)が有意に上昇することがわかった。家族全体の生活習慣の改善が次世代の心血管リスクを改善するようだ。
調査は2007~08年、幼稚園の最終学年の4,236人(平均年齢5.7±0.4歳)を対象として実施。調査項目は血圧、高血圧に関連する可能性のある親の喫煙、身長、体重、胎児期、環境、家族などの危険因子だった。
その結果、父親の28.5%、母親の20.7%が喫煙しており、少なくとも片方の親が喫煙していたのは33.4%、両親とも喫煙していたのは11.9%だった。
子供の血圧は身長およびBMIと強い関連があり、肥満児ではやせ児よりSBP、DBPとも有意に高かった。また、早産あるいは低出生体重児では、正常出生体重児と比べSBPの有意な上昇が認められた。
親の高血圧や肥満、低い学歴や職業階級も子供の血圧の上昇に関連していた。親の喫煙は、非喫煙と比べ、子供のSBPを1.0mmHg、DBPを0.5mmHg上昇させていた。有意ではないが、女児より男児で影響が大きかった。
親の喫煙は、BMI、出生体重、親の高血圧といった潜在的交絡因子の調整後も子供のSBPに独立して影響しており、親の肥満、高血圧、喫煙の3つがそろった場合、危険因子がない場合と比べてSBPが3.2mmHg、DBPが2.9mmHg高かった。

2011年2月13日日曜日

高齢者の歩行速度

高齢者の歩行速度によってその後の生存の予測が可能であると、米ピッツバーグ大学などのグループが発表した。
同グループは、地域在住の65歳以上の高齢者を対象とした9件のコホート研究の参加者計3万4,485例のデータを用いて、登録時の歩行速度と生存との関係を調べた。参加者の平均年齢は73.5歳、平均歩行速度は0.92m/秒であった。
9研究の追跡期間は6〜21年間で1万7,528例が死亡。全体の5年生存率は84.8%、10年生存率は59.7%であった。解析の結果、すべての研究で歩行速度は生存率と有意な関係を示し、歩行速度が0.1m/秒速くなるごとに死亡リスクは12%低下した。75歳時点の歩行速度の分布による予測10年生存率の幅は男性では19〜87%、女性では35〜91%だった。
年齢、性と歩行速度に基づく生存予測の精度は、年齢、性、歩行補助具の使用、自己申告による身体機能に基づく予測、あるいは年齢、性、慢性疾患、喫煙歴、血圧、BMI、入院歴に基づく予測と同等であった。

2011年2月12日土曜日

スポーツ飲料に注意

テキサス大学公衆衛生学部行動科学の研究で、果物や野菜を食べ、運動するなど健康的な生活習慣を実践している小児でも、糖質などを添加したスポーツ飲料の大量摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性があることがわかった。
小児や親は、これらの飲料を“健康に良いもの”と考えがちだが、実際には糖質が多く、栄養価は低い。
今回の研究では、テキサス州の中学2年から高校2年までの1万5,283人を対象に、糖質入り飲料(SSB)、ソーダ、非炭酸の味付けされたスポーツ飲料(flavored and sports beverage;FSB)と(1)不健康な食物の摂取(2)健康的な食物の摂取(3)身体活動レベル—との関係を調べ、これらの飲料摂取と関連する生活パターンを検討した。SSBには炭酸の有無にかかわらず、糖質や高果糖コーンシロップなどの高カロリー甘味料が添加された飲料が含まれた(100%果汁を除く)。
その結果、テキサス州の小児の28%が、1日に3回以上SSBを摂取していた。
SSB、ソーダ、FSBの摂取量はいずれも不健康な生活パターンと関連していた。その一方で、FSBの摂取量は、野菜や果物の摂取、運動などの健康的な生活習慣とも正の相関を示した。このような関連はソーダ摂取では認められず、むしろ健康的な習慣と負の相関が示された。
スポーツ飲料は健康的なライフスタイルとマッチする飲料として販売されており、ソーダとは別物として扱われている。しかし、実際のところ、このような飲料では果汁含有率は極めて低い上、不必要にカロリーが高い。今回の研究の結果、FSBには糖質が含まれているにもかかわらず、誰もが健康に良いと誤解している事実が浮き彫りになった。
米疾病管理センター(CDC)によると、米国の小児と青年(2~19歳)のうち17%近くが肥満傾向にあり、SSBの摂取量増加が全米の高肥満率に拍車をかけているのかもしれない。
これらの飲料の摂取は体重を増加させる可能性があり、1日にソーダもしくは他のSSBを1缶飲むだけで、体重が1年で4.5kg以上増加する可能性がある。
果汁ジュースはたとえ100%果汁であっても高カロリーなので、1日に1杯以上摂取すべきではない。果汁ジュースよりも果物そのものの方が栄養価は高い。また、スポーツ飲料は激しい運動のとき以外は摂取すべきではなく、それ以外の場合は水を飲むべきである。
青年とその親は、FSBに添加されている糖質について知る必要がある。FSBを大量に摂取すると、運動で得られた効果が台無しになる。肥満を予防するためには、FSBに関する誤解を解くことが重要なようだ。

2011年2月11日金曜日

カルシウムサプリメントと心筋梗塞

オークランド大学医学保健科学部の研究で、骨粗鬆症の高齢患者が摂取することの多いカルシウム(Ca)サプリメントは心筋梗塞リスクの増加に関連していることがわかった。今回の研究結果から、骨粗鬆症の管理におけるCaサプリメントの役割を見直す必要があることが示唆された。
Caサプリメントは骨を強化するために広く処方されている。しかし、その一方で、最近行われた試験から、健康な高齢女性では、Ca摂取によって心筋梗塞と心血管イベントの発生率が増加する可能性が示されている。
そこで研究チームは、この重大な問題をさらに詳しく調べるため、Caサプリメントの影響を検討した。
その結果、プラセボ群と比べCaサプリメントを摂取した群では心筋梗塞リスクが約30%上昇していた。また有意ではないが、脳卒中や死亡リスクも上昇していることが分かった。この結果はすべての試験で年齢、性およびサプリメントの種類を問わず一貫していた。
Caサプリメントは広範に使用されているため、リスクの上昇はわずかであっても、人口全体に及ぼす影響は大きくなる。
先行研究からは、食事から摂取したCaと心血管リスクの間に関連性は認められておらず、このリスクはサプリメントに限られることもわかっている。
Caサプリメントの骨密度や骨折予防に対する有益性がわずかであることを考慮すると、骨粗鬆症の管理におけるCaサプリメントの役割について見直す必要があるかもしれない。

2011年2月10日木曜日

妊婦に1杯のコーヒー

米国産科婦人科学会(ACOG)は、適度のカフェイン摂取が流産や早産につながる可能性は低く、妊娠中の女性は安心して1日に1杯のコーヒーや清涼飲料を楽しめると発表した。しかし、同学会は、大量のカフェイン摂取による流産への影響は不明のままであるとする同学会産科臨床委員会の意見も発表した。
長い間、妊婦がカフェインを摂取してもよいかどうかについては、見解が分かれていた。これまでの科学的なエビデンスを評価した結果、適度なカフェインを毎日摂取しても、流産や早産につながるような大きな影響は見られないことが分かった。
適度なカフェイン摂取量とは、1日当たり200mgのカフェイン摂取を指し、実際にはコーヒー約360mLに相当する。カフェイン入りのお茶やほとんどの清涼飲料に含まれるカフェイン量は、これよりもはるかに少なく(50mg未満)、平均的なチョコレートキャンディー(35mg未満)と同程度である。大量のカフェイン摂取は日常的に200mg超のカフェインを摂取する場合を指す。
同委員会は、胎児の成長に対するカフェインの影響について、科学的なエビデンスの評価も行った。その結果、カフェインが胎児の成長を妨げることを示す明確なエビデンスは得られなかった。
妊婦には、1杯のコーヒーを飲んでも問題はないようだ。

2011年2月9日水曜日

はしか(麻疹)

国立感染症研究所は今年、2010年に麻疹(はしか)に感染した患者(暫定値)は457人だったと発表した。09年の741人に比べて減っている。
はしかはウイルスによる感染症で感染力は強く、人から人へ空気感染する。07年には10代の間で流行し、大学や高校で休校が相次いで問題になった。このため厚生労働省は08年度から、13歳と18歳を対象にワクチンの公費による接種や患者の全数調査も始めた。最初の08年の患者は1万1015人だったが、09年に大幅に減った。
同省は12年度までに、ワクチン接種などで、はしかの患者をゼロに近づけると目標を掲げている。ただ集団感染例も続いており、保健所や感染研は警戒を強めている。
13歳と18歳を対象としたワクチン接種は12年度までなので、対象者ははしかのワクチンを早く打って欲しい。
はしかを発症すると1カ月ほどは免疫力が落ちる。この間にインフルエンザなど、ほかの病気にかかると重症化する恐れもあるという。

2011年2月8日火曜日

薄毛の原因

体質的な薄毛は、毛髪の元になる細胞が足りないのではなく、その細胞が次の段階に変化できないことが原因であることを、米ペンシルベニア大学などの研究チームが突きとめた。
この細胞変化を促す薬が開発できれば、薄毛の新たな治療法になる可能性がある。
毛が生える際には、頭皮にある「幹細胞」が別の「前駆細胞」に変わり、それが「毛母細胞」「角化細胞」などに変化して毛髪を生む。
研究チームは、体質的に薄毛の男性型脱毛症患者54人(40~65歳)の頭皮を採取し、細胞の種類と数を調べた。薄毛部分と毛が生えた部分を比べたところ、幹細胞の数はほとんど同じだった。ところが、前駆細胞の数は、薄毛部分で10分の1に減っていた。

2011年2月7日月曜日

脳の回復予測

救急搬送された心肺停止患者の脳機能の回復見通しを、脳の局所的な血中酸素の割合「酸素飽和度(rSO2)」から予測する方法を、大阪府済生会千里病院千里救命救急センターの研究チームが開発した。
rSO2が25%以下だと9割が24時間以内に死亡した一方、26%以上の場合は4割が社会復帰し、値が高い人ほど回復程度が良かった。適切な治療法を素早く選択し、救命率を高めることに生かせる。また、大規模災害時に搬送された患者の治療優先順位を決める「トリアージ」にも活用できる可能性がある。
脳の神経細胞は、心停止で血流が長時間止まると死滅するが、心拍再開後も細胞死が進み、脳死や植物状態に至るケースがある。
研究チームは、心臓のバイパス手術などをする際、麻酔科医が前頭葉の大脳皮質を流れる血液中のrSO2を計測して脳の状態を把握し、呼吸や血圧などの管理の目安にしていることに着目。rSO2は、酸素を運搬するヘモグロビンの血中濃度から求められ、近赤外光を額に10秒程度あてるだけで計測できる。
同センターへ一昨年4月から1年間に搬送された18歳以上の82人について、来院から3分以内のrSO2を測定。健康な人のrSO2は80~50%だが、82人のうち、25%以下だった52人は、47人が24時間以内に死亡。残りの5人も脳機能が回復せず、感染症などで亡くなった。
一方、26~40%の9人は6人が死亡、1人が植物状態になったが、2人は社会復帰できた。41%以上では21人中、5人が死亡し、5人が脳に重い後遺症が残った状態で転院したものの、10人が社会復帰し、1人は軽い後遺症で済んだ。
rSO2の値を高く保つ治療をすれば、社会復帰の可能性が高まる。また、数値の常時監視で、効果的な蘇生治療も行えるだろう。

2011年2月6日日曜日

ES細胞

様々な細胞に変化できる胚性幹細胞(ES細胞)を使って、心臓の拍動のリズムを刻むペースメーカー細胞を作ることに、鳥取大の再生医療研究チームがマウスを使って成功した。
細胞をマウスより大きいラットの弱った心臓に移植すると、心臓の拍動が活発になることも確認。人でも実現すれば、不整脈などの根本治療になると期待される。
心臓の拍動は、司令塔であるペースメーカー細胞(洞結節細胞)の電気信号が制御している。この電気信号に異常が発生すると不整脈となり、治療法として、電気刺激を与える心臓ペースメーカーの埋め込み手術がある。国内では年間約6万人がこの手術を受けるが、電磁波の影響を受けやすいほか自律神経の活動に合わせてリズムを変えられないなどの欠点があった。

2011年2月5日土曜日

動脈硬化

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーが「動脈硬化に関する意識」の調査結果を発表した。この調査は2010年12月上旬、国内に居住する40~70歳代の男女800名に対してインターネット上で行われたもの。
動脈硬化の危険因子有無について聞いたところ、「高血圧」が30.4%と最も多く、続いて「肥満」(24.1%)「脂質異常症」(18.1%)「喫煙習慣がある」(15.6%)「糖尿病」(11.8%)「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こした」(5.4%)の順となり、一つでも持っている人は64.5%にのぼった。この結果は、3人に2人が動脈硬化の危険因子を持っているということを示している。性別年代別で見た場合には、60代以上の男性においては8割が動脈硬化の危険因子を持っていることもわかった。
動脈硬化が起きる部位として知っているものについて聞いたところ、「心臓」(86.9%)「頭」(77.6%)という回答が多かったのに対し、「足」(32.1%)「首」(29.8%)「腹部」(17.1%)「腎臓」(8.9%)は昨年の調査結果同様、わずか約3割程度にとどまった。また、動脈硬化が起きる部位によっては5年後の生存率ががんより低いことを知っていると回答した人は15.1%で、動脈硬化の危険因子を持つ人においても、認知度はわずか16.7%であった。
全身に起きる動脈硬化は、部位によっては症状が出にくい場合もあり、発見や遅れによりQOL(Quality Of Life)の低下や生命予後を悪化させるケースもあり、注意が必要。

2011年2月4日金曜日

身体活動と体重

18~30歳の青年期から20年間にわたり身体活動を活発に維持した人は、体重・ウエスト周囲の増加が、そうでない人に比べ有意に抑制されていることが明らかになった。この傾向は特に、女性で顕著だったという。米国ノースウェスタン大学Feinberg校予防医学部門の研究チームが、約3,500人について20年間追跡した結果からわかった。
研究では、1985~86年に18~30歳であった3,554人について調査を開始し、その後2年、5年、7年、10年、15年と20年まで追跡した。身体活動レベルについては、調査時点の前年の活動について調べスコア化し、体重増とウエスト周囲増との関連について分析した。
その結果、身体活動レベルが高い三分位範囲の男性は、低い三分位範囲の男性に比べ、体重増加量は2.6kg少なかった。女性については、活動レベルが高い三分位範囲の体重増加量は、低い三分位範囲に比べ6.1kgも少なかった。
また、ウエスト周囲についても、男性では活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、増加量が3.1cm少なかった。女性についても、活動レベルが高い三分位範囲の人は、低い三分位範囲の人に比べ、ウエスト周囲増加量が3.8cm少なかった。

2011年2月3日木曜日

女性の涙

女性の涙には男性の感情に影響する化学物質が含まれているとの実験結果をイスラエルにあるワイツマン科学研究所のチームが発表した。
昆虫では、情報伝達の役割を担う微量の化学物質「フェロモン」が生殖行動に影響し、マウスでも雄の涙腺から分泌される物質が雌に交尾を促すことが報告されている。今回、動物の世界で知られる促進フェロモンとは異なる作用のフェロモンが人間に備わっている可能性が強まった。
研究チームはまず、複数の女性ボランティアに悲しい映画を見せ、涙を採取。涙と、塩水がしみこんだシートを男性被験者24人の鼻の下に別々にはりつけると、涙のシートをつけた場合でのみ、女性の顔写真に性的魅力を感じる度合いが減った。
唾液中の男性ホルモン「テストステロン」の濃度も低下したほか、脳の活動を調べる機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)でも、性的興奮にかかわる視床下部などで活動が低下していることを確認した。

2011年2月2日水曜日

緊急避妊薬

女性がレイプされたり、避妊に失敗したりした時に服用する緊急避妊薬「ノルレボ」が近く承認され、今春にも発売される。副作用が少なく、従来の緊急避妊法や妊娠中絶より、体への負担が少ないようだ。
ノルレボは性行為後72時間以内の服用で妊娠の確率が大幅に減るという。海外48か国で承認済み。これまで日本では月経周期異常などの治療薬を転用した緊急避妊法が行われていたが、嘔吐などの副作用があった。ノルレボにはそういった副作用がなく随分楽になる。
ただ、緊急避妊薬の登場で、通常の避妊がおろそかになるとの懸念もある。ノルレボを服用しても100%妊娠を防げるわけではない。緊急的に用いるものと知っておかねばならない。ノルレボの使用には、医師の処方が必要で、健康保険は適用されない。

2011年2月1日火曜日

大腸内視鏡検査

50歳以上の大腸癌患者1688人と対照1932人のデータを用いて、大腸内視鏡検査とその後の大腸癌リスクの関連性を検討した研究がある。それによると、過去10年間に大腸内視鏡検査を受けていると、大腸癌リスクが77%低下するようだ。特に左側大腸癌リスクが、大腸内視鏡検査とポリープ切除によって大幅に低下することがわかった。50歳を過ぎたら大腸内視鏡検査を受けましょう。

2011年1月31日月曜日

都市構造とBMI

ニューヨーク大学バッファロー校都市・地域計画学の研究で、自宅がコンビニエンスストアよりもスーパーマーケットに近い女性ではBMIが低く、家から徒歩5分圏内にレストランが多い女性ほどBMIが高くなることがわかった。
2006年の米国の報告によると、成人の3分の1超が肥満で、その割合は男性より女性でわずかに高かった。
肥満はさまざまな疾患につながることから、公衆衛生上大きな問題となっている。また、肥満に影響する環境因子への注目は高まりつつある。
そこで今回、食品環境や都市構造が女性のBMIに影響を及ぼすか否かを調べるため、特定の地区に居住している女性(172例)を対象に研究が行われた。
 その結果、以下の3つのことがわかった。
 (1)自宅から徒歩5分圏内にレストランが多いほどBMIが高い
 (2)コンビニエンスストアと比較して、自宅の近くにスーパーマーケットや食料品店がある女性では、BMIは平均的に低い
 (3)居住地域での食品環境と都市構造の相互作用が肥満を招いている。例えば、住宅、商業施設、産業施設、オフィスなど多様な形態の建物を同一地域に配置することは身体活動を促すとされているが、その地域にレストランが多い場合は逆にBMIの増加につながる。つまり、本来なら歩くのに適しているはずの地域に住んでいる女性でBMIが高いという矛盾した結果が示された
研究の結果から、今後、都市構造と健康に関して研究を行う際には、食品環境が女性の健康に及ぼす影響を加味しなければならない。また、戦略計画によって、食品環境がどのように改善されるかがわかった。
さらにこの研究で、都市構造を見直し、地域の食品環境を整えることで健康的な食習慣を促す計画・戦略も見いだすことができた。

2011年1月26日水曜日

チョコ募金

バレンタインデーに贈るチョコレートの収益で、がんや白血病に苦しむイラクの子どもたちを支援する「チョコ募金」に、「日本イラク医療支援ネットワーク」が取り組んでいるという。
同ネットは、イラク戦争などの影響で保健行政が停滞し、適切な医療を受けられないイラクの子どもたちを支援するために2004年に発足。気軽に支援の輪に加わってもらえる方法はないかと考え、05年末からバレンタインに贈られる義理チョコを利用した募金を始めた。
インターネットと電話による募金は1口2000円。「六花亭製菓」(北海道帯広市)のチョコ10枚入りの缶4個と、イラクの子どもが絵を描いたカードが送られる。昨年は約3800万円分の薬や医療機器をイラクに贈ったそうだ。

2011年1月24日月曜日

飲酒後仮眠

飲酒後に睡眠を取ると、アルコールの吸収や分解が大幅に遅れることが、国立病院機構久里浜アルコール症センターと札幌医科大の共同研究でわかった。
飲酒後に仮眠して車を運転することの危険性を裏付けるものとして注目される。
同大で昨年3月、20歳代の男女計24人を対象に実験を実施。体重1キロ当たり0・75グラムのアルコール(体重60キロで45グラム=ビール約1リットルに相当)を摂取し、直後に4時間眠った場合と4時間眠らずにいた場合の呼気中のアルコール濃度を比べたところ、眠った場合は眠らない場合の約2倍だった。睡眠により、アルコールを吸収する腸の働きと分解する肝臓の活動が弱まった可能性が高いと分析されている。
また、海外の研究を調べたところ、アルコール分解後、少なくとも3時間は運転技能が低下することもわかった。飲酒後に「仮眠を取ったから大丈夫」と考えるのは危険なようだ。

2011年1月23日日曜日

アルコールの課税効果

たばこ規制においては、価格コントロールが健康被害の軽減に有効であることが示されているが、同じく嗜好品であるアルコール規制の有効性については研究途上にあるようだ。フロリダ大学医療評価・政策学の研究によると、アルコールへの課税率を2倍にすると死亡率が35%減少するそうだ。
2010年5月に採択された世界保健機関(WHO)のアルコール規制に関する指針では、アルコール乱用による健康被害や社会的悪影響を予防する政策介入の1つとして、アルコール課税システムの適正化が盛り込まれた。研究では、アルコールの価格や課税と疾病率および死亡率の関係をシステマチックレビューやメタアナリシスで検討した。
解析の結果、アルコールへの課税や価格規制を強化することにより、健康被害や社会的悪影響が低減される可能性が示された。
暴力、交通事故、性感染症、薬物使用、犯罪などの不正行為についてもアルコールへの課税や価格規制と負の相関関係にあり、統計学的有意差が示された。また、有意差は示されなかったが、自殺についても負の相関傾向が示された。
さらに、アルコールに対する課税率を2倍にすると、アルコールに関連する死亡率が35%低下し、交通事故死は11%、性感染症は6%、暴力は2%、犯罪についても1.4%低下することが示唆された。以上の研究結果より、アルコール価格に影響を与える政策介入は、アルコールに関連する死亡率に重大な影響を及ぼすことがわかった。

2011年1月22日土曜日

乳房再生

乳がんで乳房を切除した患者のため、九州大や大阪大などは今春に複数の国立大や医療機関などによる研究組織を設立し、来年3月までに本人の幹細胞を使って乳房を再生させる治験に乗り出す方針を決めた。
国の承認を受けるためのデータを集め、健康保険が適用される医療を目指すようだ。
乳房修復は現在、シリコーンや本人の脂肪移植が主流。しかしシリコーンには感染症の危険性、脂肪は体内に吸収され効果が持続しないなどの欠点がある。また健康保険も適用されない。
一方、幹細胞は体を作る大もとの細胞で特定の細胞に変化したり自分をコピーしたりできる。九州大などの再建法は、本人の腹部から200~400ミリ・リットル前後の脂肪を採取。専用の分離器で幹細胞を多く含む細胞群を取り出し、乳房を失った部分の筋肉と皮膚の間に2~3ccずつ30~40回注入、生着すると修復される。拒絶反応が起きにくく、より自然な形になるという。

2011年1月21日金曜日

インフルエンザワクチン

高濃度のインフルエンザワクチンを鼻の内側の粘膜に噴霧すると、従来の注射型ワクチンでは難しかった感染防止効果が出ることが、国立感染症研究所の臨床研究でわかった。
粘膜特有の免疫反応が誘導できたためと見られる。遺伝子が毎年変化するインフルエンザウイルスにも対応し、新たなワクチン開発につながる成果だ。
研究チームは20~60歳代の健康な男性5人の鼻に、季節性のA香港型インフルエンザに対するワクチンを、通常の3倍の濃度で吹き付けた。3週間の間隔をあけて2回接種すると、全員で鼻汁に含まれる、粘膜特有の免疫物質(抗体)が感染予防に十分とされる量まで増えた。
この抗体は、10年前のA香港型など過去のウイルスに対しても、感染予防効果が確認できた。接種による副作用も見られなかったという。

2011年1月19日水曜日

子宮頸がんワクチン

子宮頸がんワクチンの副作用として、気を失う例の多いことが、厚生労働省の調査でわかった。
接種者の大半が思春期の女子で、他のワクチンが皮下注射なのに比べ、このワクチンは筋肉注射。筋肉注射特有の強い痛みにショックを受け、自律神経のバランスが崩れるのが原因とみられる。転倒して負傷した例もあるという。同省は「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」と呼びかけている。
子宮頸がんワクチンは、肩近くの筋肉に注射するため、皮下注射をする他の感染症の予防接種より痛みが強い。昨年12月以降、推計40万人が接種を受けたが、10月末現在の副作用の報告は81人。最も多いのが失神・意識消失の21件で、失神寸前の状態になった例も2件あった。その他は発熱(11件)、注射した部分の痛み(9件)、頭痛(7件)などだった。