2011年4月19日火曜日

交通騒音と脳卒中

デンマークがん学会がん疫学研究所で、デンマークに住む成人を対象に道路交通騒音と脳卒中発症リスクとの関連を検討した結果、騒音にさらされると脳卒中リスクが上昇し、この関連は特に64.5歳以上の高齢者で顕著であることがわかった。
今回の研究は、コペンハーゲンとオーフスに住む5万1,485例(50~64歳)を対象に、既往歴や居住歴などに関するデータを収集した。全被験者の平均追跡期間は10.1年であった。
解析に当たっては、大気汚染の程度や鉄道と飛行機の騒音のほか、喫煙、食生活、アルコールおよびカフェインの摂取などの交絡因子の影響が考慮された。騒音の評価には交通量や車両の速度、道路の種類(高速道路または幹線道路など)と路面状態、道路と住居の位置関係などが考慮された。
さらに、脳卒中を発症した1,881例(3.7%、平均追跡期間6.0年)を対象に、道路交通騒音への曝露による脳卒中の罹患率比(IRR)を検討した。その結果、生活習慣や大気汚染曝露などで調整した後の全例のIRRは1.14であった。
年齢別の検討では、64.5歳未満の者では有意なリスクの上昇は認められなかったが、64.5歳以上の高齢者では道路交通騒音10dB上昇に対するIRRが1.27と有意に上昇していた。
また、自動車の騒音にさらされると脳卒中リスクが上昇することもわかった。過去の研究ではこのような騒音が血圧の上昇や心筋梗塞の発症リスクに関連することが示唆されている。
騒音と脳卒中リスクとの関連について確実な結論を導くにはさらなる研究が必要だろう。これらの間に因果関係があると仮定すれば、全脳卒中の8%、65歳以上の高齢者では19%が交通騒音の影響を受けたと推定できる。今回の研究の対象は主に都市部の住民で、交通騒音にさらされているすべての人々を代表してはいないが、デンマークの人口が550万人で、毎年1万2,400人が脳卒中を発症していることを踏まえると、デンマークでは毎年600例が交通騒音による脳卒中を発症していると推定できる。
さらに、関連が特に高齢者で強かった点について、高齢者では睡眠が分断される傾向があり、睡眠障害が現れやすい。騒音と脳卒中リスクとの関連が主に高齢者で認められたのは、このためとも考えられる。

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