2011年4月18日月曜日

鉛・カドミウム曝露

米国立小児保健・ヒト発育研究所の研究で、小児期に鉛への曝露レベルが高い女児では思春期の発来が遅れ、この関連は曝露量が多いほど顕著に見られるということがわかった。これまでの先行研究では、重金属への曝露が正常なホルモン産生パターンを妨害し、場合によっては生殖機能の発達に悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。今回の研究では、女児700人超(6~11歳)の血液サンプルと尿サンプルのデータを検証。血中の鉛やインヒビンBなどの生殖ホルモンと尿中のカドミウムの濃度を測定した。インヒビンBは女児において、思春期発来の前に徐々に増加することが知られている。今回の研究では、血清中のインヒビンBの濃度が35pg/mLを超える場合に“思春期発来”と定義した。研究の結果、すべての年齢群で、鉛の曝露レベルが低度の女児よりも高度の女児で、血清中のインヒビンBが35pg/mLを超える割合が低い傾向にあった。一方、尿中のカドミウム単独ではこのような有意な関連は認められなかったが、鉛だけが高濃度の場合や鉛とカドミウムがともに低濃度の場合と比べて、鉛とカドミウムの濃度がともに高い女児ではインヒビンBがより低いことが分かった。米疾病対策センター(CDC)によると、カドミウムは腎、肺、骨を障害し、がんリスクを上昇させる。この結果から、鉛が単独か、もしくはカドミウムと協働して、女児が初潮を迎えるに当たって必要となる卵巣でのホルモン産生を抑制するのかもしれないと推測される。さらに、鉛曝露に関連した思春期発来の遅延は、鉄欠乏の影響を受けることも分かった。今回の研究では、鉛の曝露レベルが中等度~高度の女児では鉄分が欠乏していると、インヒビンBの濃度が極端に低かった。つまり、たとえ鉛の曝露レベルが中等度であっても、鉄分が欠乏している女児では、曝露レベルが高度の女児よりもインヒビンBの濃度が低いこともあるという。鉛曝露リスクが高い女児に対して、鉄分不足のスクリーニング検査を行う必要があろう。鉛への曝露は、子供が成長し、思春期を迎えるに当たって懸念すべき重大な課題であることが示された。このことは、小児が有鉛ガソリンや塗料、産業性汚染物質に曝露されている諸外国や米国のいくつかの地域にとって憂慮すべき問題である。米環境保護局(EPA)によると、鉛の曝露源として最も多いのは、劣化しつつある鉛ベース塗料や鉛汚染粉じん、鉛汚染住宅土壌である。

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