2011年4月24日日曜日

喫煙とALS

ハーバード大学公衆衛生学部の研究で、喫煙と筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症リスクとの間に関連が認められることがわかった。
ALSは運動神経の変性疾患で、米国では毎年5,500例が新規に診断されている。ALSを治癒させる方法はなく、数少ない治療薬の効果も限定的である。ALS症例の約90%は散発性で、原因は不明だが、環境因子が関係している可能性も指摘されている。
今回の研究の結果、
ALS発症率は加齢とともに上昇し、すべての年齢群で女性より男性で高かった。試験開始時点で喫煙歴を有していた人のALS発症リスクは一度も喫煙したことがない人と比べて高いことが分かった。ALS発症リスクは、現役の喫煙者で42%、喫煙経験者では44%高かった。
ALSの発症リスクは、pack-yearsで表す喫煙量(1日に吸うたばこの箱の数と喫煙年数をかけた数字)が増すほど高くなった。pack-yearsに換算しない1日の平均喫煙本数と喫煙期間をそれぞれ独立して調べたところ、両者ともALS発症リスクとの間に正の相関が認められた。ALS発症リスクは、1日当たりの喫煙本数が10本増えるごとに10%、喫煙期間10年ごとに9%上昇した。しかし、これらの相関は、一度も喫煙したことがない者(never-smokers)を除外すると有意ではなくなった。喫煙者の中では、喫煙開始年齢が低い人ほど、ALS発症リスクが高かった。たばこの煙がALSリスクに影響を及ぼす機序に関しては、これまでの研究で複数示唆されている。例えば、たばこの煙に含まれる一酸化窒素(NO)やそのほかの化合物(タバコ栽培の際に使用された農薬の残留物など)あるいは酸化ストレスによる直接的な神経損傷などである。さらに、たばこの煙に含まれる化学物質は、フリーラジカルや過酸化脂質を産生する。また、喫煙者では主要な抗酸化物質であるビタミンCが不足しやすい。喫煙による燃焼生成物の副産物であるホルムアルデヒドに曝露されると、ALSリスクが上昇することが2008年に報告された。喫煙とALSとの関係についての理解を深めることは、他の危険因子のさらなる発見につながり、この疾患の本質解明に役立つであろう。

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