2011年4月21日木曜日

小児の高脂血症

シカゴのウェストバージニア大学の研究で、焦げ付き防止加工された調理器具や防水加工された布地の製造過程で使用されるペルフルオロアルキル酸化合物が高濃度に血中から検出された小児では、総コレステロール(TC)値とLDLコレステロール(LDL-C)値が高い傾向にあることがわかった。
ヒトは飲用水、ほこり、食品パッケージ、母乳、臍帯血、大気、就業被ばくを介してペルフルオロオクタン酸(PFOA)やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などペルフルオロアルキル酸から合成される化合物に曝露される。最近の全米調査でも、ほぼすべての血液標本からPFOAとPFOSが検出されている。
ペルフルオロアルキル酸は、耐熱焦げ付き防止調理器具や、布地・室内装飾品に通気性防水性を与えるフッ素重合体の製造過程で使用されている。
PFOAとPFOSはまた、食料製品パッケージ、布地やじゅうたんの工場処理、衣類に汚れを付きにくくする加工処理に使用されるコーティング成分が分解される際にも発生する。
動物実験ではペルフルオロアルキル酸に曝露されると、まず肝臓が影響を受けることが明らかにされており、コレステロール値が変動するなどヒトにも影響を及ぼす可能性が示唆されている。
今回の研究では、飲用水中にPFOAが混入していたオハイオ川中流域の小児1万2,476例(年齢0~17.9歳,平均11.1歳)の血液サンプルから,TC値,LDL-C値,HDLコレステロール(HDL-C)値,トリグリセライド値を測定された。
測定の結果、小児の平均PFOA濃度は69.2ng/mL、平均PFOS濃度は22.7ng/mLであった。12~19歳の参加者ではPFOA濃度が全国平均を上回っていた(29.3ng/mL対3.9ng/mL)が、PFOS濃度についてはそのような差は認められなかった(19.1ng/mL対19.3ng/mL)。
血中PFOA濃度とTC値やLDL-C値との間には正の相関が認められ、血中PFOS濃度とTC値、LDL-C値、HDL- C値との間にも相関が認められた。
血中PFOA濃度が最低5分位の小児と比べ、最高5分位の小児ではTC値が4.6mg/dL、LDL-C値が3.8mg/dL高かった。血中PFOS濃度でも同様に、最低5分位の小児と比べ、最高5分位の小児ではTC値が8.5mg/dL、LDL-C値が5.8mg/dL高かった。
今回観察された傾向は、特にPFOAの濃度が低い群で顕著に見られた。また、全体的には、PFOA濃度よりもPFOS濃度による影響の方が大きいことが推測された。
ペルフルオロアルキル酸全般にいえることかもしれないが、特にPFOAとPFOSについては、血中脂質値に影響を及ぼすと考えられ、全米平均の曝露レベルにおいてさえ、なんらかの影響が生じている可能性がある。

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