2011年4月26日火曜日

アルコールの健康被害

世界保健機関(WHO)は,100カ国以上の加盟国におけるアルコール摂取と健康被害に関するエビデンスやデータを発表した。それによると、健康が損なわれるまでアルコールを摂取すること、すなわちアルコールの有害摂取(harmful alcohol use)を低減させ、生命を守るために、これまで以上に政策を強化する必要があるようだ。
アルコールの有害摂取により世界で年間250万人が死亡し、多数の疾患や外傷が発生している。また、その影響は特に若年世代や発展途上国の人々に広く及んでいる。
今回のWHOの報告書には、世界各国のアルコール消費量の推移や飲酒パターン、飲酒に起因した疾患の罹患率および死亡率、社会負担などに関するデータやエビデンスのほか、それらを低減させるための効果的な政策や介入方法がまとめられている。
WHO非感染性疾患・精神保健部門によると、多くの国はアルコールの有害摂取が引き起こす深刻な健康問題を認識しており、疾病負担や社会負担を回避し、なんらかのケアが必要な国民への対策を講じてきた。しかし、アルコールの有害摂取に関連した死亡や疾患を減らすには、いっそうの対策が必要であるようだ。
報告書によると、世界の全死亡件数の4%がアルコールに関連した原因による死亡であるという。これらの死亡の大半はアルコールの有害摂取に起因した外傷やがん、心血管疾患、肝硬変による死亡である。
また、全世界で男性の死亡の6.2%、女性の死亡の1.1%がアルコールに関連しているほか、毎年32万人の若年者(15~29歳)がアルコール関連の原因で死亡しており、これは同年齢層の全死亡件数の9%に相当する。
しかし、報告書によると、アルコールの有害摂取による死亡や疾患、障害を回避するための有効な政策を展開している国は少ないようだ。
WHOがアルコール政策に関する報告書をまとめるようになった1999年以降、少なくとも34カ国がなんらかのアルコール政策を採用した。酒類の販売制限や飲酒運転の取り締まりも強化されてきたが、最も有効な予防策がどれであるかについてははっきりしていない。また、大半の国々では依然、アルコール政策や予防プログラムが不十分なことも指摘されている。
2010年5月、加盟国193カ国が参加したWHOの総会で、アルコールの有害摂取を減らす世界戦略が承認された。同戦略では、(1)アルコール飲料に対する課税の強化(2)アルコール飲料の販売店の削減(3)アルコール飲料の購入可能年齢の引き上げ(4)飲酒運転の規制強化—などを有効性の証明された対策としている。
また、有害な飲酒パターンを変えることを目的とした医療現場でのスクリーニングや介入、アルコール関連疾患の治療、アルコール飲料の販売規制や禁止、有効なアルコール政策を推進するための啓発活動を併せて奨励している。
報告書によると、2005年における全世界の15歳以上の若年者および成人が消費する酒量は、アルコール換算で1人当たり平均6.13Lであった。また、飲酒量を地域別に見ると、2001年から2005年にかけて北米および南米、欧州、東地中海沿岸、西太平洋ではほぼ横ばいで推移していたが、アフリカや東南アジアでは大幅に増加していた。
なお、アルコール消費国は広域にわたっているが、飲酒人口の割合は非飲酒人口の割合を下回り、2005年のデータによると、全男性の約半数、全女性の3分の2を非飲酒者が占めていた。特に、イスラム教徒の多い北アフリカや南アジアでは非飲酒者の占める割合が高く、高所得・高消費国では低かった。

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