2011年5月8日日曜日

2型糖尿病

インスリン抵抗性および2型糖尿病の発症には、免疫システム反応のゆがみが関与している可能性が新しい研究でわかった。カナダ、トロント総合病院では、肥満およびインスリン抵抗性患者が有し、非インスリン抵抗性の肥満者はもたない免疫システム抗体を同定。また、免疫システムを改変する薬剤が高脂肪食を与えられたマウスでの正常な血糖値維持に役立つことを発見した。
2型糖尿病では、身体がインスリンを効果的に利用できないため、膵臓はインスリン産生を増加させるが、結果的に必要な量のインスリン産生ができなくなる。原因はまだ明らかではないが、家族間でみられることから遺伝的要因があると考えられる。体重増加と強く関連しているが、過体重のすべての人が発症するわけではなく、研究者らは別の因子を探索している。
過剰な体重が炎症に関連し、これが免疫システム反応のゆがみの原因と考えられる。腹部脂肪が拡大するとスペースがなくなり、脂肪細胞がストレスを受けて炎症を生じ、ついには細胞が死に至り、マクロファージ(大食細胞)がこれを掃除する。免疫系システム細胞のT細胞やB細胞も、ストレスや細胞の死に反応する。B細胞は外部からの異物に対する抗体を作るものだが、肥満の場合、脂肪に対する抗体を作り、それが脂肪細胞を攻撃してインスリン抵抗性とし、脂肪酸の処理を妨げる。この脂肪細胞に対する猛攻が、2型糖尿病だけでなく、脂肪肝、高コレステロール、高血圧にも関連しているという。
今回の研究では、インスリン抵抗性でないマウスに高脂肪食(60%が脂肪)を与えた。6週間目、7週間目に、マウスに抗CD20抗体(非ホジキンリンパ腫治療薬リツキシマブ:B細胞表面のCD20 に結合し、B細胞を破壊する)を投与。投与マウスはインスリン抵抗性を発症せず、血糖値も正常だったが、対照群のマウスはインスリン抵抗性となった。
また、32人の肥満者(半数はインスリン抵抗性)から血液試料を採取。インスリン抵抗性者が有する抗体セットは、非インスリン抵抗性者の抗体と異なっていた。肥満で非インスリン抵抗性の人が有する保護的抗体をもとに、2型糖尿病ワクチンが開発できる可能性がある。ただし、用いられたマウスは雄で、被験者も男性であったことから、この知見が女性にも当てはまるかどうかは不明」としている。さらに、抗CD20抗体は免疫システムを低下させ、重大な副作用を生じる可能性がある点も指摘。他の治療薬があるので、この薬剤が2型糖尿病に用いられるかどうかは確信できない。しかし、免疫システムの構成成分が2型糖尿病発症に寄与しているならば、別のよりよい治療法につながるかもしれない。

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