2011年5月31日火曜日

人工膵臓

1型糖尿病患者の血糖コントロールを向上させる人工膵臓について、日常生活に模した臨床試験を行った英国の研究で、血糖コントロールの改善と夜間危険性の高い低血糖リスクが低減したことがわかった。
クローズドループ・システム(closed loop system)として知られる人工膵臓は、既存の糖尿病管理法であるインスリンポンプと持続的血糖モニターを合体させ、コンピュータ制御で血糖状態に応じたインスリン量を計算し、補充を行うもので、実現化を目指すプロジェクトがいくつか進行している。
英ケンブリッジ大学代謝科学研究所は今回、午後7時に自宅で夕食を取る設定と、午後8時半に飲酒を含む夜間外食をする設定の2タイプの生活シナリオを準備。日ごろインスリンポンプ療法を用いている1型糖尿病患者24例を半数ずつ2つのシナリオに割り付け、夜間の血糖状態を評価した。
自宅食は60グラムの炭水化物を含む中用量の食事とした。対象の半数には夜間人工膵臓を装着、残り半数はインスリンポンプを継続させ、数週間後に交替させた。夜間外食は100グラムの炭水化物を含む高用量の食事とし、予測しない低血糖を起こしうるアルコール(白ワイン)を一緒に摂取させた。食後、対象の半数には人工膵臓を装着し、残り半数はインスリンポンプを継続してもらった。いずれの設定も夜間に2度の血糖値測定を行った。
その結果、自宅食設定では人工膵臓によって血糖値が目標域に収まる全時間が15%(中央値)延長することが判明。外食設定でも血糖値が良好に保たれる時間が28%(同)延長していた。2つの設定を合わせると、血糖が良好に管理コントロールされる時間は22%(同)延長していた。夜間就寝中の低血糖は、人工膵臓装着者では真夜中以降の発現は確認されなかった。重篤な低血糖は4例発生したが、うち3例は装置装着前に補充されたインスリンに起因するものと考えられた。
自己免疫疾患である1型糖尿病では、血糖値をモニタリングしながら微妙なバランスを保つようインスリンを補充する必要があり、有効な人工膵臓は患者の人生を飛躍的に改善させることが期待される。
人工膵臓はまだ揺籃期ではあるが、今回の研究結果は良いニュース以上のものであり、クローズドループ・システムの進化といえるだろう。

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