2011年5月16日月曜日

大量飲酒と膵がん

米国がん協会(ACS)疫学研究で、大量飲酒者,特に蒸留酒を1日3杯以上飲む人では,非飲酒者と比べて膵がんで死亡するリスクが有意に高いことがわかった。
是正可能なライフスタイル因子である飲酒は,口腔,咽頭,喉頭,食道,肝臓,大腸,乳房などのがんと因果関係があることが知られている。膵臓との関連では,大量の飲酒が急性または慢性の膵炎を引き起こすことが知られているが,膵がんについては決定的な関連は示されていない。
そこで,今回の研究では,ACSが支援しているがん予防研究のデータ(30歳以上の米国人成人約100万人を対象)を用い,飲酒と膵がんの関連について検討した。
全参加者(男性45万3,770例,女性57万6,697例)のうち,男性の45.7%,女性の62.5%が非飲酒者だった。男性のみと男女混合の解析を行ったところ,非飲酒者と比べて飲酒量が1日3杯の群と4杯以上の群で膵がんによる死亡リスクが有意に高いことが分かった。女性のみの解析では,1日4杯以上の群で同リスクが有意に高かった。
また,アルコール飲料の種類別に見ると,母集団全体では,非飲酒者に比べてウイスキー,ブランデー,ジン,ラム酒などの蒸留酒を1日3杯以上飲む人で,膵がんによる死亡リスクが高いことが分かった。喫煙非経験者または喫煙経験のある非喫煙者に限って解析すると,蒸留酒を1日2杯以上飲む人で同リスクが高かった。しかしこれらの関連は,ビールとワインでは認められなかった。
喫煙非経験者(男女混合)の膵がんによる死亡リスクは,1日3杯以上の飲酒者で非飲酒者より36%高かった。喫煙経験のある非喫煙者では,喫煙歴などで調整後も同リスクは16%高かった。
今回の研究により,飲酒量,特に大量飲酒が,米国のがん死因で4番目に多い膵がんの独立した危険因子であるとするこれまでの仮説が強く裏付けられた。

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