2011年5月5日木曜日

低用量アスピリン

低用量アスピリン療法は上部消化管出血リスクを、非投与群との比較で約2倍に増大すること、またそのリスクは、クロピドグレル、経口抗凝固薬、NSAIDs、経口ステロイド大量投与との併用でさらに上昇することが、スペイン薬剤疫学研究センターの研究により明らかにされた。心血管イベントの2次予防として現在、低用量アスピリン単独ならびにクロピドグレル併用療法は標準療法として行われている。しかし臨床試験により、各療法の上部消化管出血リスク増大との関連および併用によるさらなるリスク増大のエビデンスが示されていた。研究では、一般集団における同療法またその他胃粘膜に対し有害作用を有する薬剤の影響について評価を行った。
研究グループは、英国プライマリ・ケアを担う開業医により約300万人の患者データを抽出し、コホート内症例対照研究法にて解析を行った。
2000~2007年に上部消化管出血リスクと診断された40~84歳の患者2,049例をコホート群とし、対照群は年齢、性、暦年をマッチさせた20,000例で、上部消化管出血と低用量アスピリン(75~300mg/d)、クロピドグレル、その他併用薬との関連、相対リスク(RR)を評価した。
その結果、低用量アスピリン療法(75~300mg/日)は上部消化管出血リスクを約2倍に増加させることがわかった。 
さらに、アスピリン単独群に比較して、クロピドグレル併用で2倍、抗凝固療法で2倍、非ステロイド系消炎鎮痛剤で2.5倍、ステロイドで4倍も増大することがわかった。
これまでに、一般集団における抗血小板薬の併用療法も含めた十分な消化管出血リスクの検討はなされていなかった。
上部消化管出血は一般集団の1000名あたり、年間0.5-1件発生すると推定されている。 したがって、アスピリン投与で年間1-2名、クロピドグレルや抗凝固療法の併用で2-4名発生することになる。 
アスピリンを含めたNSAIDs潰瘍の治癒および予防については、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択治療とされている。わが国では、昨年7月よりPPIランソプラゾール15mgが、「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」に対する適応が追加されている。

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