2011年5月9日月曜日

パイロット

ブリティッシュ・ミッドランド航空(ロンドン)が,英国の民間航空会社に勤務するパイロット約1万5,000人を対象に心血管疾患(CVD)の危険因子の保有率について後ろ向き研究で検討した結果,パイロットでは一般人口に比べて喫煙者や肥満者が大幅に少なく,CVD危険因子の保有率が低かった。
今回の研究は航空機の乗務員を対象にCVD危険因子の保有率について検討した最大規模のもの。英国でパイロットの免許を行使する際に求められる医学的適正の認定書を保持する1万4,379人(女性805人)を対象に,BMI,過体重および肥満,喫煙,高血圧,糖尿病などのCVD危険因子の保有率を調べ,一般人口の保有率と比較した。
その結果,平均BMIは一般人口に比べてパイロットで大幅に低かった。しかし,男性パイロットでは,過体重(BMI 25~30)の割合は一般人口と同様に加齢とともに増加し,25歳未満および35~64歳の年齢層では一般人口よりも高い傾向が認められた。一方,女性パイロットでは,過体重の割合は一般人口よりも低い傾向が認められた。
全パイロットにおける肥満(BMI 30超)の割合は,一般人口に比べて大幅に低かった。例えば,25~34歳の年齢層における肥満の割合は,一般人口の21.0%に対してパイロットでは8.3%であった。
パイロットの喫煙率を見ると,最も喫煙率が高い年齢層は,男性が25~34歳(10%),女性が25歳未満(8%)であった。ただし,全体の喫煙率は一般人口の約3分の1とはるかに低かった。
高血圧の割合は,25歳未満および35~44歳では一般人口よりも高く,45~54歳および55~64歳では一般人口よりも低かった。
なお,糖尿病に罹患している場合は民間航空会社のパイロット免許は保持できないため,今回検討の対象となったパイロットで糖尿病と判明したのは男性で0.2%,女性では皆無であった。
さらに,パイロットは一般的に社会経済的地位が高いとされているため,社会経済的因子の影響を調整するために一般人口のうち,所得が最高五分位の集団と比較した。その結果,同集団と比べても,パイロットでは喫煙率と肥満率が大幅に低かった。
近年,世界中の航空当局の間で,民間のパイロットにおける心血管リスクプロファイルを重視する傾向が強まっているという。
今回の研究結果では,喫煙と肥満という2つの重要なCVD危険因子の保有率が,英国のパイロットでは一般人口よりもはるかに低いことが示された。過体重の割合はパイロットで高かった原因として(1)坐位時間が長い職務内容(2)不規則なシフト勤務パターン(3)外泊の機会が多いために食事内容が不健康になりがちである—などが考えられた。

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