2011年6月26日日曜日

家庭血圧

診察室収縮期血圧(SBP)の最大値(外れ高値)が、同平均値とは別に、心血管イベントの強力な予測因子であることが最近報告されたが、自治医科大学循環器内科学部門の研究グループは、同様に家庭SBPの最大値が同平均値よりも標的臓器障害(TOD)の重症度を反映する可能性があるのではと仮定し、未治療の高血圧患者を対象に試験を行った。結果、最大家庭SBPとTODには相関関係があることが認められ、平均値に加えて評価をすることで、心臓や動脈の高血圧性TODの予測値を上げられる可能性があることがわかった。
研究グループは、2004年6月~2007年12月の間、山口県・岩国市立美和病院内科の外来で募った356例の未治療の高血圧患者(2週間以上あけた2回の受診時測定診察室血圧の平均値が、SBP値140mmHg以上かDBP値90mmHg以上、あるいは両方該当)を対象に試験を行った。
被験者は、家庭血圧を連続14日間、朝と夕それぞれ3回ずつ座位にて測定し、測定値は血圧計に記録された。
最大家庭SBPとは、毎日の朝測定3回の平均値、夕測定3回の平均値のうち最も高い値のものと定義した。
TOD有無については、心エコーにて計測した左室心筋重量係数(LVMI)、超音波検査による頸動脈内膜中膜厚(IMT)と、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を評価し測定した。
おもな結果は以下のとおり。 ●被験者の平均年齢は66.6歳、44.7%(159例)が70歳以上であった。被験者1人当たりの14日間の家庭血圧の測定総回数の平均値は79.8±7.9であった。 ●最大家庭SBPと、LVMI、頸動脈IMT、UACRとは、いずれも有意な相関関係が認められた。 ●LVMI、頸動脈IMTとの相関係数は、最大家庭SBPのほうが平均家庭SBPより有意に大きかった。 ●多変量回帰分析の結果、平均家庭血圧値に関係なく、最大家庭SBPは、LVMI、頸動脈IMTと独立した相関関係を示した。 ●最大家庭SBPを、平均診察室血圧と平均家庭血圧に加えて評価を行うことで、左室肥大、頸動脈アテローム性動脈硬化症の各予測モデルの適合性は有意に改善された。
本研究は、家庭血圧の変動性の増大が、平均値とは独立して、新規の高血圧性臓器障害の指標となることを示した貴重な臨床研究である。
昨年、オックスフォード大学の先生たちが、心血管ハイリスク群において、経過中の外来血圧の日差変動性(SD)やその最大収縮期血圧が、平均値とは独立して極めて大きな予後予測因子となることを示した。
この研究発表以降、血圧変動性が注目されているが、日差血圧変動性の増大は、外来血圧のみならず、家庭血圧でもみられる。本研究は、その日差変動性の増大と最大収縮期血圧が、平均家庭血圧とは独立して、左室肥大、頸動脈硬化、微量アルブミン尿と関連していることを示した。最大収縮期血圧は、家庭血圧平均値よりもより強く、さらに独立して、これらの臓器障害指標と関連していた。
また、最大収縮期血圧は、平均血圧レベルが130mmHg未満の血圧管理良好群においても、左室肥大や頸動脈硬化と独立して関連していた。
現在、高血圧管理において家庭血圧は不可欠である。これまで、平均値のみを重要視していたが、これからは、時々高値を示す最大血圧値にも留意して、臓器障害やリスクを評価してゆく必要がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿