2011年6月18日土曜日

買い物と死亡リスク

台湾国立衛生研究所の台湾の高齢者データベースを用いた研究から,買い物に頻繁に出かける高齢者では,あまり買い物に出かけない高齢者に比べて死亡リスクが低いことがわかった。
今回は,1999~2000年に行われた高齢者の栄養・保健調査のデータを用い,買い物の頻度と死亡の関係について検討した。解析には在宅で自立生活を送っている65歳以上の高齢者1,841人の人口動態,社会経済的地位,健康行動,買い物の頻度,身体機能,認知機能に関するデータが用いられた。認知機能や身体機能については妥当性が証明された質問票により評価し,年齢,性,学歴,民族,経済状況,雇用状況,ライフスタイルに関する因子,慢性疾患の有病率などを考慮した。
回答者のうち62%が75歳未満で,54%が男性であった。大多数が健康的なライフスタイルを保っており,4人中3人は経済的に自立していた。60%は1種または2種の慢性疾患を有していた。
1週間の買い物頻度については,48%が「全く行かない」あるいは「頻繁には行かない」,22%が「1週間当たり2~4回」,17%が「毎日行く」,残りが「1週間に1回」と回答した。
1週間に1回以上買い物に行く高齢者は,年齢がより若く,男性が多い傾向にあった。また,そのような高齢者には喫煙および飲酒の習慣があり,身体的・精神的な健康状態が良好で,定期的に身体活動をしており,夕食をともにする友人や仲間がいる者が多い傾向も認められた。
さらに,身体機能と認知機能などの交絡因子で調整した結果,毎日買い物に行く高齢者では,ほとんど行かない(1週間に1回以下)高齢者に比べて死亡リスクが低かった。なお,男女別に見ると,毎日買い物に行く女性では,ほとんど行かない女性に比べて死亡リスクは23%低かったのに対し,男性では28%低く,毎日買い物に行くことで得られる便益は女性よりも男性で大きかった。
今回の研究について,買い物行動は,地域の結束を強め,地域経済に貢献するだけでなく,個々人の幸福感や健康,安心感などをもたらす。さらに,買い物に出かけることでより長生きできる可能性もあることがわかった。
また,買い物に出かけることで新鮮な食材が入手できるため,健康的な食生活が維持され,そのことが健康増進に寄与している可能性がある。さらに,頻繁に買い物に行く習慣のある高齢者は,必ずしも毎回生活に必要なものを買い求めるために出かけるのではなく,友人や仲間との交流,運動のために出かけている可能性もある。あらたまってエクササイズをするにはそれなりの動機が必要となるが,買い物であれば気軽に出かけることができる。健康的な加齢を目的とした従来の健康増進策に比べて,買い物がより魅力的なアプローチになりうるだろう。

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