2011年6月24日金曜日

豊胸手術

米食品医薬品局(FDA)はこのほど,生理食塩水やシリコンジェルを注入する豊胸手術と未分化大細胞リンパ腫(ALCL)との間に相関が認められると発表した。
ALCLは非常に珍しい種類のがんである。今回のレポートによると,FDAが過去の文献をレビューした結果,豊胸手術を受けた患者ではインプラント挿入部付近の瘢痕莢膜(scar capsule)におけるALCL発症リスクがごくわずかではあるが有意に上昇していた。FDAはこの結果を受け,医療従事者は豊胸手術を受けた女性でALCLの診断が確定した例を必ず報告するよう求めている。また,豊胸手術を受ける患者がこのような潜在的リスクについて十分に説明を受けられるよう,乳房インプラントメーカーと共同で,患者および医療従事者向けの製品添付文書を改訂する予定だ。
米国立がん研究所(NCI)によると,ALCLはリンパ節や皮膚をはじめ身体のさまざまな部位に発生し,米国では,1年間に女性の約50万人に1人がALCLと診断される。豊胸手術を受けていない女性を除き,乳房組織にALCLが見つかる例は,約1億人に3人と少ないことが分かっている。
今回の通告は,1997年1月~2010年5月に発表された文献のレビュー,海外の規制当局や研究者,乳房インプラントメーカーからの情報に基づいている。
文献のレビューでは,生理食塩水やシリコンジェルによる豊胸手術を受けた後にALCLを発症した34例が特定された。症例の大半は,豊胸手術部位が完全に治癒した後に疼痛,しこり,膨張,乳房の非対称を訴えて来院した際に発見されている。これらの症状は,インプラント挿入部周囲における漿液貯留(漿液腫),瘢痕化,莢膜形成,腫瘤などによるもので,漿液や瘢痕組織を調べた結果,ALCLと診断された。
豊胸手術後にALCLを発症した女性は全世界でおよそ60例いるが(FDA調べ),正確な数は分かっていない。すべての症例が文献に報告されているわけではないし,重複して掲載されているかもしれない。豊胸手術を受けた女性は全世界で推計500万~1,000万人とされている。
FDAは医療従事者に対して,以下の通り推奨している。
 (1)豊胸手術を受けた女性がALCLと診断された場合,Medwatch(FDAの安全情報と有害事象報告プログラム)に報告すること。報告はインターネットや電話で受け付けている
 (2)患者のインプラント挿入部周囲に遅発性の漿液貯留が認められた場合,ALCLの可能性を念頭に置くこと。採取した漿液の病理検査を行い,ALCLを除外する
 (3)豊胸手術を受けた女性に対するルーチンベースでの診察や経過観察を変更する必要はない。ALCLは非常にまれな疾患で,豊胸手術を受けた女性でも発症する確率はごくわずかである
さらに,豊胸手術を受ける女性に対しても以下を推奨している。
 (4)女性は挿入された乳房インプラントの観察を怠らないこと。また,変化に気付いたら主治医に連絡する
 (5)これから豊胸手術を受けようと考えている女性は,リスクと便益について医療従事者と話し合うこと

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