2011年6月20日月曜日

HPV感染

性的に活発な人々のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染率は80%を超え,HPV感染症は一般的によく見られる性感染症であるが,HPVは性交時の体液ではなく,感染した上皮細胞が剥落したものを介して伝播するため,通常の性感染症とは異なる。そのため,コンドームの使用は感染を確実に防ぐ対策にはならない。子宮頸がんだけでなく,肛門がんの予防のためにも,高リスク群にはHPVワクチンを接種することが推奨される。
近年,すべての子宮頸がんのうち約70%は,高リスク型HPVとされる16型もしくは18型の感染が原因で,低リスク型の4型や6型は性器疣贅などのリスクの低い病変を惹起するにとどまることが一般にも知られるようになった。
しかし,HPV 16型あるいは18型に感染しても,感染が持続するのは20%にとどまり,異形成に進展するのは5~10%,15年以内にがんが生じるのは1%である。ただし,1%という数を軽視してはならない。一般市民のHPV感染率の高さからすると,極めて多くのがん患者が見積もられる。
一方,肛門がんの80%強もHPV 16型によるものとされており,HPV感染は男性における肛門がんの原因としても注目されている。特に危険なのは同性の性的パートナーがいる男性で,こうした男性がHPVだけでなくHIVにも感染すると,肛門がんの発症リスクは75倍に上昇する。同性のパートナーがいる男性446例を対象とした研究では,26%で正常な粘膜であることが確認された一方,35%で中等度,35%で重度の異形成が認められ,2.5%で顕性の肛門がんが見つかったとしている。
肛門がんに対するHPVワクチンの有効性を支持する有力なエビデンスはない。しかし,免疫機能が低下している患者においても4価HPVワクチンの忍容性が良好であることが明らかにされている。
HPV 16型にまだ感染していない男性がHPVワクチンを接種すれば,肛門がんを効果的に予防できると考えられており,一定リスクがある患者にはHPVワクチンの接種が勧められる。

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