2011年6月10日金曜日

抗てんかん薬服用中の母乳哺育

抗てんかん薬(AED)服用中の母親から母乳で育てられた乳児では,認知発達になんらかの影響が及ぶのではないかと懸念されている。エモリー大学(ジョージア州アトランタ)神経学の研究では,母乳哺育中に母親がAEDを服用しているか否かにより,小児のその後の知能指数(IQ)に有意差が生じることはなかった。
今後、より大規模な集団で検討する必要はあるが,今回の研究結果は,乳児を母乳で育てたいが,AEDの服用を継続する必要のある女性にとっては朗報である。
今回の研究では,子宮内でのAED曝露が胎児の認知機能に長期的に及ぼす影響が多施設で検討された。対象は1種類のAEDを服用していた妊婦から生まれた小児199例で,対象児が3歳になったときにIQ試験を実施した。
対象児の42%が母乳で育てられていた。IQ試験の結果,母乳哺育を受けた小児と受けなかった小児でIQスコアに差は認められなかった(母乳哺育群99点,非母乳哺育群98点)。
母親が服用していたAEDはカルバマゼピン,ラモトリギン,フェニトイン,バルプロ酸であり,最近の新しいAEDの影響に関しても,今後調査が必要だ。
米国神経学会のガイドラインでは,出生障害リスクと認知機能への影響のため,妊娠中のバルプロ酸の服用を避けるよう推奨している。また,複数のAEDの併用は,単剤のみの投与より出生障害リスクが高くなることから,妊娠中に複数のAEDを服用することを避けるよう推奨している。
今回の研究は,AED服用中の妊婦の母乳哺育に関する初めての大規模試験といえるだろう。こうした薬剤の影響に関する情報がないため,これまで多数の女性が母乳を与えないよう指導されている。母乳哺育により母親と乳児は感情面で多大な便益が得られるほか,乳児で心疾患・糖尿病・肥満リスク,母親で乳がん・子宮がんリスクが低下するなどさまざまな効果がある。
また、今回の研究により,AEDが母乳に及ぼす長期的な影響については,さらなる研究が必要だと分かった。

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