2010年12月8日水曜日

高血圧症への早期介入

米国のボストンにある病院で、正常血圧(140/90mmHg未満)の男女ティーンエージャーを対象とした研究を行った結果、正常血圧のティーンエージャーが、その後42歳までに高血圧を発症するリスクは、少女に比べて少年で3〜4倍であることが分かった。
今回の研究では、参加者2万6,980人(男性2万3,191人,女性3,789人)を対象に、青年期から壮年期までの血圧の自然経過について検討した。参加者の登録時の平均年齢は17.4歳で、42歳(平均)までの血圧値とBMIが追跡された。
その結果、追跡調査期間中に3,810例(14%)が高血圧を発症した。成人前の血圧値が正常範囲内であっても、その値が上限に近づくほど高血圧となる可能性が高まり、特に20歳代から30歳代にかけて高血圧を発症するリスクが高くなることが明らかになった。例えば、ティーンエージャー時に収縮期血圧が110mmHgであった群では、100mmHgであった群に比べて成人後の高血圧リスクが高かった。
この結果から、ティーンエージャー時の血圧値が、高血圧として定義されている値に比べてかなり低くても、将来の高血圧発症の予測因子となりうることが示唆された。
さらに、高血圧リスクには性差が認められ、17〜42歳の累積リスクは女性に比べて男性で3〜4倍であった。
また研究では、BMIと血圧との相互作用が検討された。その結果、男性では適正値と見なされるBMI(18.5〜25)も含め、BMIがどの範囲にあっても、成人後の高血圧リスクが増大していた。一方、女性では肥満のサブグループでのみ高血圧リスクが増大していた。この点については、女性ホルモンのエストロゲンは高血圧を予防する可能性が示唆されており、このことが影響したと考えられた。
さらに研究の結果、青年期に既に正常体重の上限に達し、収縮期血圧が110mmHg以上であった群では、高血圧リスクは1年当たり約1%の割合で増大する。つまり、この群の約10%は30歳になるまでに高血圧を発症することになる。高血圧、心疾患、糖尿病の予防に向けたライフスタイルの改善と介入を開始するのに早過ぎるということはない。高血圧や心疾患の予防は高齢者だけの問題ではない。血圧と体重の変化を小児科医が警告としてとらえ、できるだけ早期から予防措置を講じるべきであろう。「予防に勝る治療なし」である。

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