2014年7月5日土曜日

はしか(麻しん)

はしかの患者が国内で急増しています。国立感染症研究所のまとめでは、4月初めまでで、既に昨年1年間の患者数を上回り、さらに拡大する恐れがあります。
重症化しやすい上に、感染すると有効な治療薬がないため、感染研ではワクチン接種の徹底を呼びかけています。
「はしかとは、どのような症状が出るのですか。」
感染すると約10日間の潜伏期間を経て、発熱や鼻水、せきなど風邪のような症状が出てきます。その後、39度前後の高熱と発疹が1週間以上続き、口の粘膜にブツブツも現れます。免疫力の低下が数週間続くので、ほかの病気にもかかりやすくなります。
「重い症状に苦しむ人も多いそうですね。」
はしかは重症化しやすく、感染者の3割が合併症を起こすと言われています。合併症の半数は肺炎で、ほかに中耳炎、脳炎、心筋炎などを起こすこともあります。栄養状態が悪かったり、別の病気を治療中で免疫力が低下していたりすると、重症化しやすく、死に至ることさえある危険な病気です。

「どのように感染するのですか?」
はしかは感染力が強く、同じ部屋にいるだけで空気中に漂うウイルスを吸い込んで感染する空気感染を起こします。せきやくしゃみなどによる飛沫感染や、ウイルスが付いたものに触り、口から入って感染することもあります。高熱や発疹が出ていない初期に最も感染力が高いため、感染に気づかずに行動し、多くの人に広げてしまうのも問題なのです。
「今年は流行しているそうですね。」
感染研によると、昨年1年間の患者数232人を4月初めの時点で既に追い抜き、5月8日現在で患者数は324人に達しました。今年初めにフィリピンなどはしかの流行国に渡航した人が帰国後に発症する例が散発し、その後、海外から持ち込まれたウイルスが国内で感染を広げています。
「治療法はないのですか?」
有効な治療薬はありません。感染を予防するワクチン接種しか打てる手立てがありません。

「ワクチンはどのようなものですか?」
はしかの単独ワクチンと、はしかと風疹の混合ワクチン(MRワクチン)があります。1回の接種で95%の人が免疫を獲得し、2回接種すればほぼ全員が免疫を得ることができるため、2回接種が推奨されています。国の予防接種法に基づき、06年度から1歳児と小学校入学前1年間の幼児の2回接種制度が始まりましたが、今年の患者の19%は1~4歳が占め、その多くが予防接種を受けていなかったなど接種が徹底されていないことがわかっています。
「副作用が心配です。」
ワクチン接種後に最も多く見られるのは発熱です。発疹やじんましんが出る人も数%おり、発熱に伴うけいれんを起こす人も約0・3%見られます。まれに、脳炎・脳症が100万~150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係がはっきりしていないケースも含まれています。重いアレルギーのある人は、ワクチンに含まれる成分でアレルギー反応が起きる可能性もあるので、医師に相談してください。
「予防接種はどこでどのような場合に受けられますか?」
内科、小児科などがある医療機関で免疫があるかどうか調べる抗体価検査やワクチン接種が受けられます。妊婦が感染すると流産や早産の原因となりますが、妊娠中は受けられません。予防接種法に基づく子どもの接種は自治体の補助がありますが、その他の場合は原則、全額自己負担になります。周囲ではしかが流行しているようなら、近くの医療機関に相談してみると良いでしょう。

2014525 読売新聞より)

0 件のコメント:

コメントを投稿