2014年7月7日月曜日

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性発疹を特徴とし、夏期に流行する小児の急性ウイルス性咽頭炎で、いわゆる夏かぜの代表的疾患です。
疫学>
我が国では毎年5 月頃より増加し始め、67月にかけてピーク を形成し、8月に減少、910月にかけてほとんど見られなくなります。国内での流行は例年西から東へと推移します。患者の年齢は4歳以下 がほとんどで、1歳代がもっとも多く、ついで2340歳代の順となります。
<症状>
 24 日の潜伏期を経過し、突然の発熱に続いて咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径12mm 、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現します。小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴います。発熱については2 4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失します。発熱時に熱性けいれん伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌、拒食、哺乳障害、それによる脱水症などを呈することがありますが、ほとんどは予後良好です。
 まれに無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがあります。前者の場合には発熱以外に頭痛、嘔吐などに注意すべきですが、項部硬直は見られないことも多いです。後者に関しては、心不全徴候の出現に十分注意することが必要です。鑑別診断として、ヘルペスウイルスによる歯肉口内炎(口腔病変は歯齦・舌に顕著)、手足口病(ヘルパンギーナの場合よりも口腔内前方に水疱疹が見られ、手や足にも水疱疹がある)、アフタ性口内炎(発熱を伴わず、口腔内所見は舌および頬部粘膜に多い)などがあげられます。
<症状から疑い診断>
下記の症状や所見から当該疾患が疑われます。
  1. 突然の高熱での発症
  2. 口蓋垂付近の水疱しんや潰瘍や発赤
<治療・予防>
通常は対症療法のみで、発熱や頭痛などに対しては解熱・鎮痛剤などを用いることもあります。時には脱水に対する治療が必要なこともあります。無菌性髄膜炎や心筋炎の合併例では入院治療が必要ですが、後者の場合には特に循環器専門医による治療が望まれます。
 特異的な予防法はがありませんが、感染者との密接な接触を避けること、流行時にうがいや手指の消毒を励行することなどです。

本症では、主症状から回復した後も、ウイルスは長期にわたって便から排泄されることがあるので、急性期のみの登校登園停止による学校・幼稚園・保育園などでの厳密な流行阻止効果は期待ができません。本症の大部分は軽症疾患であり、登校登園については手足口病と同様、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきであると考えられます。

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