2010年6月10日木曜日

肺炎球菌ワクチン

三重大学大学院・呼吸器内科の研究グループは、これまで明らかにされていなかった、施設入所者に対する肺炎球菌ワクチンの有効性について試験の結果、ワクチン接種が入所者の肺炎発症および死亡率の低下をもたらし有効性が確認されたことを報告した。研究グループは、三重県内の高齢者施設(9病院および23の病院関連施設)から1,006名の被験者を登録し試験を行った。被験者は、2006年3月~2007年1月の間に登録され、ワクチン接種群(502例)とプラセボ群に無作為化され、2009年3月末まで観察が行われた。結果、肺炎発症が確認されたのは、ワクチン接種群63例(12.5%)、プラセボ群104例(20.6%)だった。肺炎球菌性肺炎と診断されたのは、ワクチン接種群14例(2.8%)、プラセボ群37例(7.3%)だった。全原因肺炎および肺炎球菌性肺炎の発生率は、ワクチン群よりもプラセボ群で有意に高かった。また肺炎球菌性肺炎による死亡も、プラセボ群が有意に高かった。全原因肺炎による死亡率とその他原因による死亡率については、ワクチン接種群とプラセボ群とで差異はなかった。日本では現在、施設入所者への肺炎球菌ワクチン接種は国策として推奨されていない。しかし、海外におけるこれまでの報告(施設肺炎リスクは地域の14倍、発生施設の接種率は5%、接種施設の緊急搬送の減少)、過去の実態調査(日本の高齢者施設の接種率は3%未満)および今回得られた知見は、日本の高齢施設入所者の死亡率および医療費低減のため、肺炎球菌ワクチン接種を国策として行うことの必要性を提起するものである。

0 件のコメント:

コメントを投稿