2010年6月18日金曜日

認知症

認知症患者が介護保険制度開始当初の予想を大きく上回る勢いで増えている。施設不足の中、長期ケアに適さない精神科が受け皿になる現状もある。今後、認知症患者を誰がどこでみるのかが課題である。精神科病院に入院し、徘徊などの症状が落ち着いても、退院のめどが立たない。「これ以上面倒を見られない」と、家族が引き取りを拒否するからだ。介護施設はどこも満杯で入れない。医療費を滞納し、まるで家族が捨てていったような場合もある。今、精神科病院で認知症の入院患者が増えている。暴力や暴言で家族や施設が困り果て”最後のとりで”として頼ってくるからだ。症状が治まれば退院できるのに行き先はない。結果的に社会的入院を続けることになる。厚生労働省によると、2008年の精神病床の認知症入院患者は1999年に比べ4割多い約5万人に増加。長期入院患者の退院促進などで空きベッドを抱える精神科病院と介護施設不足で行き場のない利用者のニーズがマッチした形だ。精神科では重い精神症状がある患者などを治療してきたが、すべての医師が認知症に詳しいわけではない。認知症病棟ではなく、一般病棟に入るケースもあり、長期入院には適さない。認知症で要介護度が重い人や合併症のある人、低所得者などへの早急な対策が必要で、精神科病院への安易な受け入れは社会的入院患者を多く抱えた過ちを繰り返してしまう恐れがある。厚労省は、08年に「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」を開始、対策の軸足を介護から医療にやや移した。しかし対策は遅々として進まない。治療の中核として全国150カ所に設置予定だった「認知症疾患医療センター」は今年2月時点で半分以下にとどまっている。認知症を診る医師は増えてきたが、全国で千人程度との見方もある。国内でアルツハイマー型認知症の薬を販売する製薬会社によると、まだ患者の5割強にしか届いていない計算になるという。認知症患者は15年には250万人になる見通し。認知症を専門医や専門機関だけで診ていくのは今後は難しいというのが関係者の見方だ。施設以外での受け皿となるグループホームが急増中だが、防火など設備面の対策も課題となっている。介護現場からは「早期発見のための医療と介護の連携や24時間対応の見守りを可能にする包括的サービス導入が必要」などの声が上がる。認知症に特化した介護サービスの提供は制度見直しの大きな柱となりそう。

0 件のコメント:

コメントを投稿