2010年10月7日木曜日

糖尿病とアルツハイマー病

糖尿病あるいはインスリン抵抗性のある患者では、アルツハイマー病につながる脳神経変性プラークの発生リスクが上昇することが、日本の久山町(福岡県)研究で明らかになった。
報告によると、空腹時インスリン値が最も高い群では、最も低い群に比べ、脳神経間でのプラーク沈着の発生リスクが6倍高かったという。
久山町研究は、1961年に始まった世界有数の疫学調査で、40歳以上の全住民が参加している。80%で剖検が行われていることが大きな特徴で、生活習慣と疾患の影響やゲノム疫学など多くの分析が行われている。
九州大学神経病理学が行った今回の分析では、1988年の健康診断でブドウ糖負荷後2時間血糖値測定、空腹時血糖値およびインスリン値測定、インスリン抵抗性の評価が行われた住民の中で、1998-2003年に剖検が行われた135体について、アルツハイマー病の病理分析を行った。アルツハイマー病による脳組織破壊は、神経変性プラーク沈着、および神経原線維のもつれ(tangle)の有無で評価した。
得られたデータを年齢、性別、血圧、コレステロール、ボディ・マス・インデックス(BMI)、喫煙、運動、脳血管疾患の有無で調整したところ、食後2時間での高血糖および空腹時インスリン高値、インスリン抵抗性の上昇が神経変性プラークの発生のリスク増大に関連していることが判明した。神経原線維のもつれの発生と糖尿病の危険因子との間には関連は認められず、空腹時血糖値と神経変性プラークのリスク増大との関連もみられなかった。
空腹時インスリン値を低値群、中間群、高値群の3群に分けて、神経変性プラークプの発生リスクとの関連をみたところ、中間群では低値群の2倍、高値群では3倍、プラークの発生リスクが増大しており、直線的な関連が認められた。インスリン抵抗性についても、高値群では低値群の5倍、神経変性プラークの発生率が高かった。アルツハイマー病の病理的リスクは、糖尿病の関連因子との直線的な関係で増大すると言える。また別の分析で、アルツハイマー病に関わる遺伝子ApoE4と高血糖、インスリン抵抗性、空腹時インスリン値、神経変性プラークプの発生との間に最も強い関連が認められたという。
今回の結果から、現段階でアルツハイマー病の予防法については明らかになっていることはないが、2型糖尿病については予防したほうが良い理由は多数ある。2型糖尿病の大半は日常的な運動と食事で予防できるものだ。それがまた、アルツハイマー病のリスクを管理することにもつながると言える。

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