2010年10月8日金曜日

心外膜脂肪と心房細動

心外膜脂肪量が、発作性・持続性心房細動のリスク因子であり、心房細動の発症と強く関連していることが、米国Loyola大学メディカルセンターの研究で明らかにされた。心外膜脂肪は炎症性の性質を有する内臓脂肪組織である。炎症と肥満が心房細動に関連することは明らかになっているが、心外膜脂肪と心房細動との関連については明らかになっていなかった。
研究では、患者273例について、CTを用いて心外膜脂肪量の測定を行った。被験者の内訳は、心房細動患者197例(発作性126例、持続性71例)と、洞調律76例(対照群)だった。
研究の結果、心外膜脂肪量は、心房細動群101.6±44.1mLで、対照群の76.1±36.3mLに比べ、有意に多かった。
発作性心房細動群の心外膜脂肪量は93.9±39.1mLで、対照群の76.1±36.3mLに比べ、有意に多かった。
持続性心房細動群の心外膜脂肪量は115.4±49.3mLで、発作性心房細動群の93.9±39.1mLに比べ、有意に多かった。
心外膜脂肪量は、心房細動発症について、年齢、高血圧、性別、左房肥大、心臓弁膜症、左室駆出分画、糖尿病、BMIとは独立したリスク因子だった。
本研究は、心臓周囲の脂肪量が、これまで明らかにされていたリスクや左房負荷とは独立して心房細動のリスクとなることを示した興味深いものである。
また、異所性脂肪が周辺臓器の局所環境を変え、心血管リスクを増強する可能性を示唆している。
これまでに、心臓周囲、特に冠動脈周囲の脂肪が、肥満とは独立して冠動脈疾患のリスクになることが知られている。 心臓周囲の脂肪は内分泌・炎症機能を有し、直接的に心筋や冠動脈に影響を与える可能性が指摘されている。
これまでの疫学研究では、心房細動の新規リスクとして、内臓型肥満や炎症反応が報告されていたが、本研究では局所脂肪量を定量測定し、心房細動のリスクとの関連を明らかにした点に新規性がある。
しかし、どのような局所機序により心臓周囲の脂肪が心房細動のリスクとなるかは不明である。 
左房負荷の指標である左房系と独立して心房細動心臓周囲の脂肪量は左房径の拡大と正相関を示していることから、脂肪細胞のから直接的炎症性サイトカインの分泌が左房リモデリングを進行させている可能性があるが、今後、自律神経を含めた機序の検討が待たれる。

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