2010年10月1日金曜日

認知症

読書やクロスワードパズルなどの脳を刺激する活動について、アルツハイマー病発症後の観点に立つと賛否両論であることが新しい研究でわかった。今回の研究では、このような頭の体操を好んで行う人は加齢による思考力や記憶力の低下が緩やかであった一方、いったん認知症の徴候が現れると、急速な知能の低下がみられたという。
これまでの研究では、認知力を鍛える活動が高齢者の認知症の発症を防ぐのに有用であるといわれていた。このことについて検討すべく、米ラッシュ大学メディカルセンター(シカゴ)は、約1,200人の高齢者を12年近く追跡。各被験者が行っている脳を刺激する活動については5段階の「認知活動」尺度を用いて評価した。登録時には全被験者とも認知症は認められず、研究終了時は614人が認知力正常、395人に軽度認知障害、148人にアルツハイマー病が認められた。
この研究の結果、健常人が認知活動(ラジオを聴く、テレビを見る、本を読む、ゲームをする、美術館に行くなど)を多く行うことによって、数年間にわたり認知力低下のみられる比率が減少することが判明。認知活動尺度が1ポイント上がると、6年間の知能低下率が52%減少した。しかし、認知症を発症した人の場合は逆の結果がみられた。知能を刺激する活動を好む人は、疾患が現れた後に急速な知能低下がみられ、認知活動尺度が1ポイント上がるごとに低下率が42%加速されたと、研究グループは報告している。
この相違は、認知症患者の脳にみられるプラーク(老人斑)および神経原線維のもつれ(tangle)と呼ばれる神経変性病変の蓄積によって説明できるらしい。これまでの研究で、脳を刺激してもこのような病変の蓄積を防ぐことはできないが、病変があっても正常な認知力をいくらか長く保てることがわかっている。このため、初めて認知症と診断された時点では、知的な活動を続けてきた人ほど、実際はプラークや神経原線維のもつれが多く重症であり、その時点から急速に認知力が低下するのだそうだ。

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