2010年10月10日日曜日

心機能と脳容量

心機能を示す心係数が標準レベルかどうかにかかわらず、心機能低下と、脳容量の減少や情報処理速度の低下といった脳の加速度的なエイジングとが関連していることが明らかにされた。米国ボストン大学神経学部が、約1,500例を対象に行った調査で明らかにした。
心血管疾患を有する成人では、心機能不全が神経解剖学的および神経心理学的な経年変化と関連しているとされる。理論上、全身性の低灌流が脳灌流を途絶させ、無症状性の脳損傷を引き起こしているとされるためで、研究では、心機能が、脳MRIで認められる以前の変化を捉える指標となり得るのではないか、また虚血やアルツハイマー病の神経心理学的マーカーの代替となるのではないかと仮定し、本調査を行った。

おもな結果は 
・被験者の平均年齢は61±9歳、54%は女性だった。 
・心係数は、総脳容量と情報処理速度の間に、それぞれ正の相関関係がみられた。 
・一方で、心係数は、側脳室容量との間には、負の相関関係がみられた。 
・臨床的に心血管疾患が認められた人を除いた後も、心係数と総脳容量には有意な関連が認められた。
・事後比較の結果、心係数低値群と心係数中間値群の脳容量は、心係数高値群に比べ、有意に小さかった。

本研究より、心機能と脳容積の低下に正の相関関係があることが明らかになった。
これまで、慢性心不全患者や冠動脈バイパス術を受けた冠動脈疾患患者において、無症候性脳梗塞や深部白質病変が進行していることが知られていた。これらの無症候性脳障害が、心疾患患者の抑うつ状態や認知機能低下の背景となると考えられている。
本研究の新規性は、これらの臨床的に明らかな心疾患が発症する前の症状のない地域住民においても、心機能と脳容量に有意の関連を認めた点である。 
心機能で3群に分けたときに、最高3分位(心機能良好群)だけが、他の2群に比較して脳容積が高かったが、中間3分位群と最低3分位群では有意差がない。 このことは、心機能と脳容積に直線関連ではなく、正常範囲内においても心機能のわずかな低下が脳容積の低下と関連することを示している。
この脳・心臓器連関の機序はよくわからない。 何らかの加齢変化や合わせ持つ心血管リスクに加え、より直接的機序として、ごくわずかの心機能低下による脳血流の長期にわたる減少により、脳萎縮が進行する可能性がある。 

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