2010年10月22日金曜日

乳児期の母親の愛情

米国のデューク大学の研究で、乳児期に母親から十分な愛情を受けた人は、成人後のストレス処理能力が高いことが分かった。
幼少期の経験が成人後の健康に及ぼす影響に関心が高まっているが、多くの研究は本人の記憶に頼っており、被験者を幼少期から成人期まで追跡した研究は少ない。今回の研究では、米ロードアイランド州の出生コホートにおける482例の分析を行った。
研究では、生後8カ月の定期的な発達検査において、心理学者が母親と乳児の交流の質を客観的に評価した。各セッションの終わりには、母親が小児の発達テストにどのように対処するか、また小児の成績にどのように反応するかについて質問票に記入した。母親の小児に対する愛情と注意のレベルは、「低い」から「非常に高い」までの範囲で分類した。
その後の追跡調査では、不安、敵意などの具体的な要素と全般的な苦痛レベルを示す有効な症状チェックリストを用いて、平均34歳時点で被験者の精神的な健康度を評価した。
生後8カ月の評価では、10例に1例(46例)の親子の相互反応において、母親の小児に対する愛情レベルが低いと分類された。大半(85%,409例)の母親の愛情レベルは正常と分類された。残りの6%(27例)の母親は、愛情レベルが非常に高いと判定された。
チェックリストの特定の要素を分析したところ、生後8カ月の時点で母親の愛情レベルが最も高いと評価された者は、不安、敵意、全般的な苦痛のレベルが最も低いことが分かった。
母親の愛情レベルが低い~正常に分類された者では、高いレベルに分類された者と比べて、不安スコアに7ポイント超の差が認められた。両群を比較すると、敵意スコアは3ポイント超、全般的な苦痛スコアには5ポイント超の差があった。
このパターンは、チェックリストの全要素にわたって観察され、母親の愛情が豊かであるほど成人期の苦痛レベルは低かった。
今回の研究結果から、人生のごく初期の経験が成人の健康に影響を与える可能性があるとする主張が裏付けられた。母親の高いレベルの愛情により、安心ときずなの形成が促進される可能性がある。その結果、苦痛レベルが低下するだけでなく、有効な社会的スキル、ストレス対応スキルなど生活全般にわたる処理能力を発達させることができ、成人後に安定した人生が可能になるだろう。

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