2010年10月12日火曜日

双極性障害(躁うつ病)

今年9月、日本イーライリリー株式会社は、双極性障害の一般市民における認知調査の結果を発表した。調査は10歳代から70歳代の一般市民に行われ、有効回答1294のうち1270サンプルを解析している。
まず、双極性障害について知っているかという質問に対し、対象者の72.9%が「聞いたことがない」と回答した。それに対し、うつ病は87.8%が「病気あるいは治療法まで知っている」と回答しており認知度の差が大きいことがわかる。
疾患の特徴については、双極性障害を「自殺の可能性が高い」「再発しやすい」と回答したのは、それぞれ19.7%、8.1%に留まり、疾患に対する正しい情報が浸透していない事がわかる。
さらに、「双極性障害の患者さんが隣に引っ越しても良い」「結婚して家族の一員なっても良い」については、それぞれ59%、54.7%が否定的な回答を示しており、市民が患者に対して社会的距離を置く傾向にあることがわかった。
疾患に対する誤解と社会的距離の拡大を引き起こす大きな要因は、情報の不足と考えられる。さらに中途半端な情報は、誤解と社会的距離の更なる拡大を示す。市民に対し、早急に適切かつ十分な啓発が必要であると考えられる。また、精神科医に対しても双極性障害治療の難易度に対応できるトレーニングが必要である。
双極性障害の生涯有病率は、0.6%であり稀有な疾患とはいえない。一方、この疾患の再発率は90%以上といわれ、生涯にわたる薬物療法等の治療が必要である。さらに、25~50%の患者が自殺を試みたとの報告もあり、そのリスクはうつ病を超えるといわれる。しかし、現在、日本で使用できる薬剤は、躁病治療薬である炭酸リチウム(リーマス)、気分安定薬のバルプロ酸ナトリウム(デパケンほか)とカルバマゼピン(テグレトール)だけであり、その選択肢は狭い。有望な新薬の登場が今後待ち望まれている。

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