2010年9月24日金曜日

喫煙と結腸直腸がん

コネティカット大学保健センター総合がんセンターの研究で、喫煙は結腸直腸の扁平腺腫(前がん性ポリープ)と強く関連しており、それが喫煙者における結腸直腸がんの早期発症につながっている可能性があることがわかった。一般に扁平腺腫は、結腸直腸がんの検診時に発見される典型的な隆起性のポリープよりも発見しにくく、病理学的に悪性度が高い。
結腸直腸ポリープは、結腸または直腸の内壁に形成される腫瘍である。大半の結腸直腸がんは、腺腫と呼ばれる結腸直腸の腫瘍性ポリープから移行すると推測されている。扁平な非隆起性の腺腫は、隆起性の腺腫よりも悪性度が高いと考えられる。このため結腸直腸ポリープの切除は結腸直腸がんの予防に重要で、推奨されている。複数の研究から、ポリープ切除は結腸直腸がん発症の減少につながることが示されている。
扁平病変の半数超は、高解像度結腸内視鏡で発見されるが、その危険因子はほとんど解明されていない。いくつかのスクリーニング研究から、喫煙は結腸直腸がんの重要な危険因子であることが示されている。今回の研究の目的は、結腸内視鏡によるスクリーニングを受けた平均的リスク集団において、喫煙が扁平腺腫の危険因子であるか否かを調べることであった。
結腸内視鏡検査は、ポリープががん化する前に発見し切除できるため、結腸直腸がんの主要なスクリーニング法として推奨されている。現在、驚くほど高解像度の新世代内視鏡が開発されている。高解像度化により結腸が鮮明に描出され、より多くの情報が得られる。つまり解像度が高ければ、内視鏡医が小ポリープ、早期がん、扁平病変を発見する精度が高まる。
今回の研究は、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校医療センターで、結腸内視鏡による結腸直腸がんスクリーニング検査を受けた患者を対象とした研究。
人口統計学的データ、既知の結腸直腸がんの危険因子、投薬情報、結腸直腸がんの家族歴と食事、運動、飲酒、糖尿病、胆嚢切除術の既往が記録された。
患者は、現在または過去の喫煙、1日当たりの本数、喫煙年数、禁煙年数、過去の喫煙パターンの変化について質問を受けた。これらの数値を用いて、喫煙曝露を算出。患者600例(平均年齢56歳,男性252例,女性348例)を、(1)非喫煙者群(313例)(2)多量喫煙者群(115例)(3)少量喫煙者群(172例)―に分類した。
全患者に結腸内視鏡検査が施行され、組1人の内視鏡医が、高解像度の広角結腸内視鏡を使用してすべての検査を行った。全ポリープが写真で記録され、組織学および形態学的分類(扁平または隆起性)のために採取された。サンプルからランダムに選ばれた腺腫について、2人の経験豊富な内視鏡医が形態の決定に当たった。
全部で428個のサンプル(非喫煙者群313個,多量喫煙者群115個)が分析され、127例の患者にさまざまなサイズの扁平腺腫が1個以上認められた。扁平腺腫と関連していたのは、(1)多量の喫煙(2)年齢(3)男性―であった。さらに進行扁平腺腫と関連していたのは、(1)多量の喫煙(2)BMI(3)男性(4)赤身肉の消費―であった。多変量解析を行ったところ、結腸直腸の進行性扁平腫瘍の形成を唯一予測したのは多量の喫煙であった。
この知見から、喫煙は結腸直腸の扁平腺腫の重要な危険因子であることが示唆された。喫煙はあらゆる扁平腺腫と関連しているだけでなく、直径6mm超の扁平腺腫のみを有する患者の危険因子でもあった。これらの患者には、隆起性の腺腫は存在しなかった。このことは、喫煙者では非喫煙者よりも若年で、しかも進行した結腸直腸がんが多く発見されることの理由を説明している。
このような腺腫を発見するには、特殊な高解像度結腸内視鏡が必要となるため、今回の知見は重要。大半の腺腫は結腸の右側に発見されたことから、喫煙者の場合には、色素内視鏡などの高度な撮像装置を用いて、右側に注意することが発見に役立つと見られる。色素内視鏡は内視鏡技術の1種で、内視鏡検査時に大腸内壁に特殊な色素液または染色液をスプレーし、色覚をより向上させたものである。
さらに、今回のデータは、医師が喫煙者に対して、そのリスクや結腸直腸がんスクリーニングについてカウンセリングを行ううえでも役立つだろう。

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