2010年7月9日金曜日

経口免疫療法

食物アレルギーの原因となる食物を食べることで、アレルギーを治す経口免疫療法(経口減感作療法)が注目を集めている。治療につながる仕組みには不明な点も多いが、原因食物を食べないことしか対処法がなかった食物アレルギーを食べて治す方法として期待は高い。経口免疫療法は、最初に食物負荷試験と呼ばれるテストを行う。微量の原因食物を摂取し、食べてもアレルギーが起きない限界量を調べ、それを下回る量から徐々に摂取量を増やしていく。食べてアレルギーを治すという考え方は以前からあった。しかし長年食物アレルギーの治療は、原因食物を食べない除去食療法中心という考えが支配的。国内では08年、神奈川県立こども医療センターが、卵アレルギー患者に経口免疫療法を行った成功例を日本アレルギー学会で発表し、注目が集まった。前後して海外でも成功例が多く報告されている。同センターのアレルギー科は食べる量、回数は、アレルギー治療として行っていた減感作注射を参考にしている。現在、経口免疫療法は、国立病院機構相模原病院など各地の病院で実施されている。いずれも臨床研究として取り組んでいる段階で、摂取量を増やすペースなど手法は各病院によって違う。アナフィラキシー発症の危険もあるため、医師の監視下で行うのが大原則。成果の一方で課題も多い。一度飲めるようになりながら、アナフィラキシーを起こしたり、耐性が元に戻ってしまうケースもある。そもそも、食べることがどのように免疫系に作用してアレルギー克服につながるのか、はっきりとはわかっていない。一般的に、乳児期に食物アレルギーだった子どもでも、小学校入学時には9割ほどが自然に耐性を獲得する。相模原病院臨床研究センターは「経口免疫療法が最も適しているのは、学童以上で重度のアナフィラキシータイプのアレルギーが残る子ども。未就学児の場合は、食物負荷試験で食べられる量を決めながら、耐性獲得を待つ対応でいいのではないか」と話す。同センターは昨年度から厚生労働省研究班として、重症例に対する経口免疫療法の治療効果の解析を始めている。患者の選択や応用できる食品の範囲など、研究しなければならない課題は多いが、重症の患者を誤食の恐怖から解放できるようになることの意義は大きい。

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