2010年7月20日火曜日

カウンセリングの目的

頭がモヤモヤっとした状況の場合、多くの人が自分の過去の経験や価値観に基づいて「落ち込んでいるのかな?」などと原因についての仮説をあれこれ立てるものです。こうした「自分の過去の経験や価値観」はいつも無意識に自分の心にあります。そして、物事を見るときに、フィルターのような役割を果たすのです。カウンセリングでは、この「自分の過去の経験や価値観」の傾向について知ってもらい、自分がどのように現実を捉える傾向にあるのか検討します。たとえば、過去にたくさん人から傷つけられて辛い目にあった方は、これから先、人と接するときにも「またひどい目に遭うのではないか」と身構えてしまうでしょう。これは、人間が身を守るために身に付けた防衛策なのですが、時に現実を歪めて受け取ってしまう元になることもあるのです。すると、「私はどこにいっても、他人からひどい目に遭わされてしまう」というルールが心の中に出来上がるのです。そうなると、「偶然食事に誘われなかった」という出来事も、「私はみなに嫌われている」と捉えることになるでしょう。または、「初対面の人ととても仲良くなった」という出来事ですら、「いや、まてよ。この人も私を裏切るのかもしれない」と捉えることになるかもしれません。こう捉えた方が、自分の心の中にあるルールと出来事が一致するので、少し安全なかんじがしてしまうのです。もちろん本人は「私は今度こそ、人とうまくやりたい」と思っているのですが、心の奥底では気づかないうちに、「どうせうまくいきっこない、私は他人にひどい目に遭わされてしまうんだ」と何度も自分に言い聞かせているのです。カウンセリングでは、辛い状態を引き起こしているメカニズムについて、上のような説明をご本人と共に探って検討していきます。過去にどんな印象的な体験があって、それがどんな風な体験として自分の中で意味づけられていて、それが今の自分の価値観にどのような影響を与えていて、それで今、現実をみつめるときにどのように捉える傾向があるのか。その結果、どんなことが起こっているのか。そんな自分が今つらい原因を丁寧に丁寧に探って、紐解いていきます。その作業の中で、「なんとなくいつも人間関係が苦手でつらい」という悩みが、「私は小さい頃からひどい目に遭ってきて、そのせいで被害的な捉え方をするようになった。今もその傾向は残っていて、新しい人間関係においても"またひどい目に遭うのではないか"と構えてしまう。そのため、人間関係を築くことに臆病になって人との交流を避けるようになった。その結果、誰からも必要とされていないような気がして落ち込んでいる。」と分析できれば、心が少しだけ整理できるでしょう。もちろん、分析しただけでは、悩みは解決しません。このような分析はカウンセリングの第一歩です。しかし「なんとなく」つらいという漠然とした状況では、人は不安を感じたり混乱したりします。多少でも説明がつくと、少しだけ安心します。そして対処するための手がかりを得ることができるのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿